まさかのおケイコ

2012/07/26

お気に入りの探偵小説に、シャイラ・J・ローガンの「リディア&ビルシリーズ」がある。
中国人のリディアと白人のビルという、ふたりの探偵がコンビを組んで
事件を解決するというストーリーだが、1作ごとに主役が交代する。
そのため主観と客観が入れ替わり、互いの視点からそれぞれの属する社会が描かれていく。
これがおもしろくて、それに微妙なふたりの関係も気になるところ。

 

ビルは、リディアによると

「背が高く、こわもてがする。腕っぷしの強いのが必要な時は、迷うことなく連絡する」。

なのに、部屋にはグランドピアノがあり、玄人はだしの腕前で弾きこなすのだ。

 

 

先日、「ピアノやらない」と誘われて、つい思わず「やる」と言ってしまって、レッスンに通うことになって、にわかに“ビルのピアノ”が気になりだした。 
 


………わたしは呼吸を整えた。それから、一日じゅう頭のなかで鳴り響いていたシューベルトの変ロ長調を弾き始めた。この曲を全曲通して弾くようになってから、ほんの一週間かそこらと、まだ間がない。今夜はひたすらそれを弾き、音を結びつけ、まとめ上げたかった。自分にできること、新たな可能性になったこと、できると思っていたが不可能なことを実際に耳にして、わたしは初めてその曲を理解し始める。………


………間もなく、曲を十分理解し、時計職人のように小さな部分を調整し、磨き上げることができるだろう。その時、音楽がわたしにもたらしたもの、わたしが音楽にもたらしたものが、指から紡ぎだされてくる。………

 

 

いや、さすがに幼稚園の頃に習ったオルガンは赤いバイエル止まり。

ト音記号ならまだしも、ヘ音記号となると、ド・レ・ミと1音づつなぞらないと

楽譜も読めないわが身には、単純な音の繰り返しにもつっかえてしまう始末。

ビルのようになどはるか望むべくもないけれど、10年後くらいには好きな1曲を、

素敵に弾けるようになれたら、いいなあ。

 

こんなふうに思うのは、「大好きな1曲だけを、じっくり20年くらいかけて、

気持ちよく弾けるようになる自分プロジェクトを実行中」という、

松浦弥太郎氏の本の中の一節が心に残っていたせいでもある。なにより田舎暮らしが、

ゆったりとした願望を持たせてくれるのだろう。

東京にいた頃はスルーしていた気持ちの、後押しをしてくれる。

 

だから、ゆっくりのんびり、あきらめずにヤにならずに、

音を育てていけたらいい、と思っている。

 

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