自然と隣り合わせ

2012/09/27

顔の写真
執筆者 本澤侑季
所 属馬路村農協

9月も後半に入り、朝晩の風はひんやりと冷たく、

栗やどんぐりも少しずつ色づいてきました。馬路村もすっかり秋支度です。

 

今朝は7時40分~8時10分まで、村内の交通安全指導に参加してきました。

時間になると役場の倉庫へぞろぞろと人が集まり、

交通安全の旗を借りてめいめいの場所へ向かいます。

同じ場所で一緒に安全指導をしていたおんちゃんとおばちゃんは、

鮎の漁の話でもちきりでした。今月いっぱいで鮎漁が終了になるようで、

今日は鮎を捕りに行くのかとか、どこの場所で捕るのかとか、

どこどこの誰が大きい鮎を捕まえたとか、とても真剣に話していました。

鮎漁が終わることを「川がしまる」といい、「しまる前に捕っちょかないかん」と、

少々焦っている様子でした。ちなみに、鮎漁が解禁になることは「川があく」と言い、

山でシカやイノシシを捕れるようになることを「山があく」と言います。

 

 

鮎の話でも大盛り上がりでしたが、それよりもやっぱり、

今馬路村中で1番の話題となっている出来事のことをずっと話していました。

 

 

「道がつえちゅう。」

9月15日の早朝、村から高知市内へ下ろうとしたところ、村内でそんな声を聞き、

耳を疑いました。

 

馬路村では連日豪雨が続いていたため、

雨で地が弛んだことによって山が土砂崩れを起こしてしまったようです。

崩れた土砂は道に流れ出し、樹木や大きな岩がゴロゴロとはばかって、

ほとんどの人が利用する道をふさいでしまいました。

 

土砂崩れ

 

 

道は県道12号安田東洋線、馬路村と隣り合う安田町の瀬切という地区で、

馬路村への主要道でもあります。

郵便も宅急便も、物資も、高校生が学校へ通うバスも、

ほとんどがこの道を通ってきていたため、村にとっては大ニュースで、

この1週間はどこへ行ってもみんながこの土砂崩れの話をしていました。

 

代わる道として、隣り合う北川村を経由する反対側の道があったため、

陸の孤島とはなりませんでしたが、馬路地区や安田町に住む人にとっては

外に出るまでに普段の倍近く時間がかかってしまうため、

「これは参った」とみんな口をそろえて言います。

 

小さな村とはいえど、食べるものはあるし、毎日新聞も来るし、

便は少ないけど毎日バスも来る。コンビニや娯楽施設はないけれど、

生活するのに何不自由なく過ごせていたため、

つい自然の怖さや近さを忘れそうになっていましたが、道が1本閉ざされるだけで、

いつも変わらずあったものがこんなにも影響を受けるということを、身をもって実感しました。

 

「山が怒った」

土砂崩れを目の当たりにして、そんな感覚も覚えました。

今まで自然の良い面ばかりしか見ていませんでしたが、

こんなにも山が自分の身に近く迫っているのかと、

人間には到底敵わぬ見えない大きな力をひしひしと感じました。

日ごろ自分たちが自然に対して行っていたことは正しかったのだろうかと、

ふと考えさせられもしました。

 

 

それでも、自然は大きな恵みも与えてくれます。

山道を通りながら少し怖さも感じるけれど、

目の前に広がる美しい川の流れや星空、

気持ちのよい風、そしておいしい農作物も育ててくれます。

 

雨や地の恵みを受けて、ゆずも成長中です。

ゆずも成長中

 

これからどんどん大きくなり、1カ月後には黄色く色づいてくると聞きました。

 

 

そうこう考えていると『折り合い』という言葉がストンと腑に落ちます。

自然の力が強すぎると人間は暮らせないし、人間が踏み入りすぎると自然は生きられない。

お互いにいいバランスを保てて初めて、関係が成立するのだと実感しました。

また、会う人会う人が会話を交わし、

「気をつけよ」と互いを気遣い合うネットワークの強さのようなものは、

厳しさも含めて自然とともに暮らしてきたからこそ生まれたのかもしれません。

 

今朝の交通安全指導の時の話では、去年は反対側の道が崩れて、

北川地区に住む人たちが不便をしたようです。

それでも崩れてしまったものはどうしようもないので、じっくり待ったのでしょう。

 

今回の土砂崩れには驚き、困りましたが、いろいろ教えてもらった土砂崩れでした。

回復するまでにはまだ時間がかかりそうですが、それまでじっくり待とうと思います。

 

 

 

 

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