大雪の中での雪下ろし

 

 皆様、いかがお過ごしでしょうか?私は雪国の十日町に住んでいますが、12月に入ってから大雪に見舞われております。(※この原稿は12月に書かれた原稿を、1月現在に公開しているものです) 今年は初雪が遅く、長期予報では暖冬小雪だと言われていたのですが、とんでもない!12月のうちからかなりの大雪です。どれくらい大雪なのかといいますと、例年だと12月の年内に屋根の雪下ろしは1回するぐらいで済むはずが、今年は既に3回も雪下ろしをしています。(集落の方でこまめに雪下ろしをしている方は4回下ろしています。) 新年に入ってさらに1回雪下ろしをしました。

 去年は十日町は比較的小雪だったので(その分かどうかはわかりませんが、普段雪があまり降らないところで雪が降り、十日町からも除雪車が市外に出動したという話も聞いています。) 一冬で4回しか雪下ろしをしなかったのですが、すでに12月で去年の一冬分に迫ろうかという勢いで雪を降ろしていることになります。しかも、今年から私が事務局長をしている十日町市地域おこし実行委員会では、雪下ろしをしなければならない建物が増えたので、12月の中盤~後半にかけては雪下ろし三昧でした。

 

 雪下ろしをしなければならない建物としては以下があります。

 

・池谷分校

十日町 池谷分校

 

・池谷分校の体育館

十日町 池谷分校の体育館

 

・元牛小屋だった小さな倉庫

十日町 元牛小屋だった小さな倉庫

 

・農作業小屋(新)

十日町 農作業小屋

 

・共同車庫(新)

十日町 共同車庫

 

・農業後継者育成のための住宅「めぶき」(新)

十日町 めぶき

 

 (新)と書いている建物が新たに雪下ろしをしなければならなくなった建物です。こう考えると倍(面積的には1.5倍ぐらいか)近くの面積の雪下ろしが必要になった事になります。これらの建物を今年は共同車庫以外は十日町市地域おこし実行委員会の代表の山本さんと基本的には2人で行っています。(時々ボランティアでお手伝いに来てくださる方もいらっしゃいますのでその時はありがたくお力を貸していただいていますが。)共同車庫は一緒に車庫を使っている屋号隠居さんの号令で召集されて雪を下ろしています。個人的にはこれとは別に自宅の雪下ろしもしなければならず、7つの建物の雪下ろしをする必要があります。

 

十日町 自宅

 

 そして、通常1回で済んでいた雪下ろしが3回になったことで、4.5倍も雪下ろしに時間がとられてしまっているという事になります。(共同車庫と「めぶき」はまだ1~2回しか雪下ろしをしてないのですが、雪は貯めるとその分時間がかかってしまうため、時間で考えると3回下ろしたのと変わらないという事で考えます。) その雪下ろしも、他の人の家などの雪下ろしだと、仕事として料金ももらえるのが雪国の常識なのですが、自前の施設の雪下ろしでは一切お金にはならない仕事が増えたことになります。

 これだけ雪下ろしをしていると大分コツがつかめてきて最初の1年目は「なんて重労働なんだ」と思いながら自宅の雪下ろしだけでも「ヒーヒー」言っていたのが、6回目の冬を迎えた今だと、かなり慣れたものになってきました。

 

 効率よく雪下ろしをするためには色々重要なポイントがあります。

 

【1】ますはいい道具を使う事です。

 

現代ではスノーダンプという道具を使って雪下ろしをします。スノーダンプにはいろいろなメーカーのものがありますが、イチオシは「クマ武」です。

 

十日町 クマ武のスノーダンプ

 

 クマ武は十日町の会社が作ったスノーダンプで、軽くて雪の上を滑らせたときの取り回しもしやすく、地域の方々もみなさんこれを使っている方が多いです。その代り値段は高価で1万円を超えます。他のメーカーのスノーダンプは1万円以下で販売されています。

 

【2】続いて適切なタイミングで雪下ろしをする事です。

 

 屋根の雪はあまり積もらせすぎないうちに適宜降ろす方が回数は増えますが圧倒的に楽です。都度こまめにやってためない方が楽というのは、全てのことに言えると思います。草刈りや、草取りなどの農作業もそうですが、夏休みの宿題や部屋の片づけなど農村に住んでなくてもあらゆる事に共通して言えることではないでしょうか?屋根の雪は積もらせすぎると、雪庇と言って、屋根から雪がはみ出してせり出してしまいます。

 

十日町 雪庇

 

 これは非常に危険で、うっかり屋根の外に出た雪だけの部分に足をのせた時に雪が落ちてしまって自分も一緒に落ちるという可能性もあります。また、積もらせすぎると何回にも分けて雪を降ろさなければならず、(よく2段堀り、3段堀りと言ったりします。)屋根の面積は同じなのですが、結局一度に何回分も雪下ろしをする事になり、1回の雪下ろしにかかる時間が長くなってしまいますので余計に疲れてしまいます。1時間の作業を日を変えて3回するのと、3時間の作業を一気にやるのとでは普通は後者の方が疲れますし、通常だと、同じ作業を長時間やる方が疲労もたまって効率が落ちるので上記の例だと3時間以上かかってしまいます。また、たまった雪は下の方は固くなっており、降ろすのがより大変になります。ですので、理想的には雪が自分の腰の高さぐらいまでたまったら都度下ろすというのが効率的です。

 

【3】最後にいかに力ではなく技術を使って雪下ろしをするかという事です。

 

 上手な技術を身につけると意外と力を入れなくても大きな雪の塊をドサッと降ろすことができるようになります。 これは身体で覚えることが必要ですが、コツもありますので、少し記載したいと思います。

 

①雪をスノーダンプに乗せてスムーズに滑らせるために少し傾斜をつけて地面の雪を平らにする。

 

十日町 平らにする

 

 デコボコしたところで無理に雪を運ぼうとすると時に雪を重力に反して押し上げなければならなくなり、そこで無駄な力を入れなければならなくなります。その無駄な力は1回1回は大したことないのですが、1時間~2時間を超える作業をする中で蓄積されてくると疲労度の差は全然違ってきます。

 雪下ろしをしている最中に最初は平らにした地面の雪が途中からデコボコしてくる事もあります。その時は横着せずに地面の雪を平らにする作業を改めてやった方が結果的に楽になるのですが、急いでいる人はそこを力技でやってしまう方が散見されますので、徹底した方がよいと思います。

 

②雪はくっつく性質があるので、切れ込みを入れて隣の雪から切り離す

 

十日町 雪に切れ込みを入れる

 

こうすることで、雪を四角い塊にして一気に下ろすことが可能になります。

 

十日町 雪の塊を載せる

 

切れ込みを入れる手間が面倒だと、無理に力を入れて雪を降ろそうとするとこれまた、①のように長時間の作業の中では疲労度にかなりの差が出てきます。

 

と、ここまで雪下ろしに関する事を色々と書いてみましたが、雪国に住んでいると普段雪が降らない所に比べると明らかに雪に対する対策がしっかりとしていて安全だなと思うようになりました。この冬も名古屋で大雪が降ってニュースの映像を見たら車が滑ってかなり危険そうでした。普段から備えがなされている十日町ではありえないような光景でした。

 

 また、雪下ろしは力を抜いて作業ができるようになれば有酸素運動としてかなり身体によさそうです。自分の家や自前の施設の雪下ろしだと収入はありませんが、都会ではお金を払ってジムに通って運動している人もいますので、エクササイズだと思えばいい運動不足解消になります。こういった雪下ろしを地域にずっと住んでいる方は70代~80代になっても屋根に上って身体を動かして行っています。そして、ご自身で動いて作業している方は高齢になっても頭も身体もしっかりしています。こういう生活が自然だし、予防医療になって高齢者の医療費の削減などにもつながると思います。

 さらに、雪国ではその雪のおかげで山菜のアクが抜けて美味しいとか、この雪解け水のおかげで魚沼産のコシヒカリが美味しいとか、雪が多いので猿やイノシシなどの獣害がほとんどないなどというメリットがあることも事実です。大雪は確かに大変ではありますが、よい面を見ようと思えばいくらでもあると思います。よく言われるようにそこにある事実をどう捉えるかは本人次第であると思います。雪国のよい面を見て自然と共生していくことができればと思います。

 

 

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