伝統行事にみる愛媛

2015/07/10

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執筆者 今村香織
所 属Nowvillage

 

 愛媛のひとり地域調査隊こと今村です。愛媛に暮らしはじめて1年、これまで以上に四季の変化を肌で感じるようになりました。理由は色々ありますが、ひとつは伝統行事や風物詩が日々の暮らしに節目を与えてくれているからでしょう。今回は愛媛のちょっと変わった伝統行事や習わしをご紹介します。

 

八坂寺の火渡り

 

 愛媛・松山市にある八十八番札所「八坂寺」。ここでは毎年4月29日に「火渡り修業」が行われています。火渡り修業というのは、熱した炭の上を裸足で歩くことで、修験道や仏教の修行の一環として行われているものです。

 

 いやさか不動尊

 

修業の場となるのは、雄大な山を背景に睨みをきかせた不動明王(いやさか不動尊)がいる八坂寺の境内。中央には、ヒノキの葉が長方形にこんもりと積み上げられています。棺桶のようにも見えるそれは「炉(ろ)」と呼ばれるもので、護摩木を焚くものだそう。

 

山伏

 

本堂で祈祷を終えた山伏が、ホラ貝を吹きながら火渡りの会場へ進んでいきます。会場の周囲には五色の「結界」が張り巡らされており、山伏は「山伏問答」をした後、一箇所を切って順番に中へ入っていきます。列の後ろには、こんもりとした形のお輿も。針山のように見えますが、よく見るとお守り(魔除け)の札が刺さっています。なんとも不思議なかたち。

 

魔除けの札

 

 祈祷では、弓や剣などをつかった儀式が行われます。弓矢を四方に放ったり、剣を持って舞いを披露したり。儀式がひと通り終わると、いよいよ点火。もくもくと白い煙が立ち上がります。煙で周囲が見えなくなるほどでしたが、八坂寺のご住職が御護摩の願主の願いを祈祷していきます。

 この日は風が強かったので、火も高く立ち昇ったり、右や左に大きく揺れ、まるで生きている龍のよう。燃えさかる炎の中に、願い事が書かれた護摩木を投げ入れていきます。

 

御護摩

 

 一番前で見学していた私も熱くて顔が真っ赤に。火の力って、やっぱりすごい…。火渡りは、これを鎮火させた後に行われました。先ずは山伏がこの上を裸足で歩いていきます(!)。ここは一般の人も参加できるので、火渡りをする人の長い列ができます。

 始めて見た火渡り修業でしたが、終始目が釘付けだったのは、山伏の装束!白だけでなく淡い黄色や橙色など何種類かありました。位によって違うのかもしれませんが、パターンも組み合わせも色んなバリエーション(?)があるようです。

 

 山伏の装束

 

ちなみに腰に巻いてるのは、鹿など動物の毛皮。山に修業に入った時に、すぐ地面に腰かけられるように巻いているそう。(これは山伏にお聞きしました)

 

 山伏の毛皮

 

八坂寺は、修験道の開祖・役行者小角が開基と言われているお寺だけあって、大迫力の火渡り修業を見ることができます。今年は渡れませんでしたが、来年こそは挑戦してみたいと思います。(第47番札所 熊野山 妙見院 八坂寺/愛媛県松山市浄瑠璃町八坂773)

 

 

北条鹿島の櫂練り

 

 5月3日、松山市北条地域で行われたのが「北条鹿島まつり」です。会場は北条から船で3分の島(鹿島)と周辺の海上。(お祭りの様子は、北条の岸から見ることができます。)見どころは、船の上で舞う「櫂(かい)練り踊り」。太鼓の音を響かせながら、ふたりの小学生が船首に立ち、長い棒で先導をとるように舞い踊ります。

 

北条鹿島まつり

 

ちなみに、笹に付けられているのは日の丸の小旗。曇り空の下、さらさらと風になびいてなんとも風情がありました。

 

櫂練り踊り

 

 船の後方で舞うふたりは、よく見ると酒樽のようなものの上に立っています。瀬戸内海なので波がほとんど無いとはいえ、走る船の上でバランスを保ちながら踊るのは難しいだろうなぁと感心しながら見入りました。

 この船の後ろには、神輿と担ぎ手を乗せた2艘の船が、ゆらゆらと船体を左右に揺らせながらついていきます。

 

神輿と担ぎ手

 

そもそも鹿島は、島全体が河野水軍の海城だったので、このお祭りも河野水軍の戦勝祈願や凱旋の祝勝奉賛が鹿島神社の神事として伝わったそう。由緒あるお祭りであることが、伝わってきます。

 

河野水軍

 

北条鹿島祭りは秋(10月中旬)にも行われ、櫂練り踊りのほかにだんじりや、神輿を突き落すというまさかの「神輿落とし」が行われます。神輿を突き落とすなんて…、衝撃的なお祭り、要チェックです。(松山市北条鹿島)

 北条鹿島

 

 

茅の輪くぐり

 

 毎年6月晦日に行われ、正しくは「夏越大祓(なつごしのおおはらえ)」と呼ばれる茅の輪くぐり。これは今も全国にあるお祓いの行事で、さほど珍しいものではありませんが、人形(ひとがた)の習わしが珍しかったのでご紹介します。

 この茅の輪くぐりは、「日本を楽しむ年中行事(かんき出版)」によると『新年から半年間溜まった罪やけがれを清めるもので、夏以降の息災を祈願する、大事な節目の行事』だそう。

 前の日、町会長さんが持ってきてくれたのがこちら。

 

人形

 

 「人形(ひとがた)」と呼ばれるお札のようなもので、名前と年齢を書いたら息を大きく三度吹きかけ、体の悪いところを撫で、茅の輪をくぐる前の晩、枕の下に入れて眠るのだそう。そうすることで、穢れがこれに移り、身代わりになってくれるというもの。人形にはこんな和歌が書かれています。

 

「水無月の 夏越の大祓いする人は 千歳の命延ぶといふなり」

「ひな形に 願ふ旨をばなぜつけて 水無月はつる禊をぞする」

 

夏を乗り切ることが大変だった時代、このお祓いがいかに重要であったかが伝わってきます。これを唱えながら茅の輪をくぐると尚良いとか。

 

 茅の輪

 

 茅の輪くぐりの作法はこう。茅の輪の前でまず一礼、輪をくぐり左方向に廻って正面に戻る、また輪をくぐり次は右方面に廻って正面に戻る、そしてまた左方向に廻って正面に戻る、その後、神前に進み参拝。これ、∞(8字)を描いているのですね。

 先人たちの想いや地域ならではの風習や文化を知ることができる伝統行事。この夏も、愛媛の行事やお祭りを積極的に調査したいと思います。

 

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