柳川暮らしが楽しすぎて困ります ~味噌づくりの巻~

2016/02/05

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執筆者 阿部昭彦
所 属柳川市地域おこし協力隊

 

 福岡県の最南部、佐賀県と熊本県に挟まれ、有明海に面した柳川市からこんにちは。柳川市地域おこし協力隊員の阿部と申します。

 柳川の「隠れた主役」たちにスポットをあてて紹介するこのブログ、今回は味噌づくりをご紹介させていただきます。この「みつはしみそ」は柳川産の米と大豆を使って、よけいな添加物なしの手作り味噌なのですが、東京にいる私の知人の間ではリピート率が非常に高い人気の味噌です。

 

みつはしみそ 商品 福岡 柳川 味噌

 

 味噌は全国どこでも作られていますね。ここ柳川は、有明海に面した広大な農地が広がり、そこで米、麦、大豆といった土地利用型の農業が盛んに行われています。あまり知られていないのですが、福岡県で1位の大豆生産地なんですよ。

 

大豆生産地 福岡 柳川 味噌

 

 それでは、簡単に味噌の作り方を。蒸し上げた米に種麹をふり、米麹を作ります。米をほぐしながらムラのないように手で丁寧に種麹を混ぜていきます。これを保温機に入れて、温度管理をして2晩待ちます。途中で一度、均一になるように手でほぐして混ぜる作業をします。

 

 種麹をふる 福岡 柳川 味噌

 

 続いて、1晩水に浸けておいた大豆をゆで、それをすりつぶします。作業場は美味しい煮豆の香りでいっぱいです。一口つまみ食いをさせてもらうと、大豆だけで十分に美味しい!これをわざわざ手間と時間をかけて味噌にするわけですから、美味しくないはずがありませんね。

 

すりつぶす 福岡 柳川 味噌

 

 すりつぶした大豆と2晩寝かせてできた米麹、それに塩を適量入れてかくはん機で混ぜます。このときに大豆の煮汁を入れるのですが、この量はベテランのお母さんの勘で決まります。手で確認しながら、ちょうどよい固さになるように煮汁の量を調整します。

 

かくはんする 福岡 柳川 味噌

 

手で固さを調整 福岡 柳川 味噌

 

 こうして出来上がった「赤ちゃん味噌」を樽に詰めていきます。このときに注意するのは、間に空気が入らないようにしっかり抜いて詰めていくこと。そうしないと、そこからカビが生えたりしてして味噌がダメになってしまうのだそうです。しっかりと詰めたらふたをして、重しを乗せて涼しいところで熟成させて完成。麹の香りが好きな方は、あまり寝かさないで若い味噌を召し上がる方も少なくないみたいです。

 

・・・と、ここまで味噌づくりの話でした。以上、終わり!ではありません。

 

加工場 福岡 柳川 味噌

 

 今回、味噌づくりの話をうかがう中でいろいろと不自然なことに出会いました。特に、気になったのは、地元の大豆を自由に使うことができないシステムのことです。ご存知のように、大豆は減反の代替作物として栽培されていることがほとんどです。大豆の栽培には補助金が支給されるのと引き換えに、必ず農協に出荷しなくてはいけません。地元の大豆を使って味噌などの加工品を作る場合は、こうして出荷された大豆を買い戻す必要があります。栽培に対して補助金を受けながら、同時に、その大豆を自由に使うということはできないわけです。

 

味噌づくり 福岡 柳川 味噌

 

  また、国産大豆は高いため、もともと加工品に使うと割に合わないという問題もあります。大豆加工品の代表の一つ、納豆のパックをよく見てみると、原料の大豆が外国産であることが非常に多いのが現状です。海外で栽培された大豆が長い時間と運送費をかけて日本に運ばれてきて、それでいて国内で作られた大豆よりも安いのはなぜなのでしょうか?このあたりに日本の農業の大きな課題があるように私は思います。

 

味噌作り 福岡 柳川 味噌

 

 安倍政権は地方創生を大きな政策として掲げていますが、私自身はかなり違和感を感じています。なぜなら、本当に地方が力をつけるためには、その地域が経済的にしっかりと自立する必要があり、その点では、国からの補助金・交付金というのは不要どころか、かえって邪魔になると考えているからです。国の進める地方創生では、結局、補助金や交付金に頼った地域活性化プランしか作れず、本当の意味での地域の活力にはならないと思います。

 

大豆 福岡 柳川 味噌

 

  日本の農業問題の深層には、補助金に頼る農家の姿勢と、それを推進している農協のあり方があるように思います。一大利権コングロマリットと化している農協には昨今、多くの批判が向けられていますが、こうした逆風の中でこそ、本来の農協の姿を取り戻せるのではないでしょうか。地域の農業と向き合い、地域の農家の収入向上、経営改善のために「自立した農協」を再生するのです。国や県からの交付金・補助金を農家に分配するための農協ではなく、あえて国や県から自立した農業を展開するための支援を積極的に行う農協です。

 

みそづくり 福岡 柳川 味噌

 

 地域おこし協力隊として柳川市に来て、これまで1年半を過ごしましたが、農家の方々から聞こえてくる声の中には、現在の農協の姿勢に対しての不満が多く含まれていました。特に多いのが、農家が新しいことを始めようとすると、農協がそれに対して制限して自由に活動できないという話です。実は、今回お話ししている味噌づくりも、当初は農協との間にいろいろな問題が発生して、簡単にはできなかったとのことでした。

 

みつはしみそ 福岡 柳川 味噌

 

 TPPの大筋合意を受け、これから日本の農業も新たな局面を迎えます。その中で価格競争をしかけても、なかなか勝ち目はないのではないでしょうか。それよりも消費者の方々が「高くても安心で美味しいもの」として、その地域の農産物を選ぶことができるような関係づくりが優先されるべきで、その先頭に立って農家をまとめるのが新しい農協のあり方ではないか、私にはそう思えて仕方ないのですが、みなさんはどのようにお考えですか?

 

 

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