家に帰る日

2017/09/21

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執筆者 鈴木陽子
所 属

 7日間、漁村に滞在しながら漁業をお手伝いしたり浜の暮らしを体験することができる漁村留学プログラム「イマ、ココ プロジェクト。」。
 今回ご紹介するのは、とある参加者たちの7日間の最後の日。
 
 この浜は、東日本大震災の影響で家が流されてしまった漁師が多いため、参加者はホームステイではなく地域の会館に宿泊しながら7日間を過ごします。
 会館で最後の荷造りが住んだ4人は、お世話になった浜の人たちに手紙を渡しに出かけました。

 

似顔絵などを書き添えた手紙

 

 一人ひとり、その漁師さんが好きなキャラクターや似顔絵などを書き添えた手紙を持って、まずは震災後にできた高台に新しい家を建て、つい4~5日前に引っ越したばかりの「ともくん」のところへ。

 

福貴浦の最若手漁師・ともくん
福貴浦の最若手漁師・ともくん。

 

 あいにく、ともくんは入れ違いで出かけてしまい会えませんでしたが、ともくんのお父さんとおばあちゃんに会えました!
 お手紙は軽トラの窓越しにともくんのお父さんに渡して……

 

軽トラの窓越しにともくん

 

 おばあちゃんと最後のおしゃべり。おばあちゃんは、住み始めたばかりの新しいおうちのことを話してくれたんですが…

「仮設(仮設住宅)の方がよかったぁ。この家、全然覚えらんなくて落ち着かないんだもの」

「トイレの場所何度も間違ってとも(ともくん)に怒られるし、この家、暖房つけなくてもあったまるんだと。なんだか落ちつかねぇー。」

 

おばあちゃんと最後のおしゃべり

 

 このお年になると、生活環境がガラッと変わるのはなかなか大変なようです。しかも応急的に建てられた仮設住宅から、最新のシステムが備わったこだわりのおうちへのお引越。と戸惑いは大きいようです。
 でも慣れればきっと、仮設住宅より暮らしやすくなるんじゃないかな。早くそうなるといいなと、お話を聞いていて思いました。
 
 高台の話といえばもう一つ。この福貴浦(ふっきうら)という浜は、高台を一箇所に広く作る場所が確保できなかったため、3箇所に分かれてしまったんです。要は、集落が三つに分断されてしまったということ。
 それを危惧する声は、高台が3箇所に別れると決まった当初からずっとありました。

「震災前はこの辺(海辺から10mくらいしか離れていない、本当に海の近く)に家が並んでたでしょ。夕方になると誰からともなく家から出てきて、海を眺めたりくだらない話したりしてさ。なんだか今思うとあったかかったよね。でも高台が分かれたら、そういうわけに行かないもんな。寂しくなるんだろうなぁ。」

「高台は山の上だっちゃ?若い人たちはいいけど、年取った人たちにはあの登り下りはキツいよなぁ。今までみたいに昼間みんなで集まってお茶っこって訳に行かなくなるだろうなぁ。」

新しい家や建物が建って、一見日常を取り戻したように見えてもまた新たな問題を抱えている地域は、福貴浦だけでなくほかの浜にも、中心市街地にもたくさんあります。
 できてしまった物は元には戻らないので、どうしたら現状よりみんなが幸せに暮らせるようになるかを考えた方がいい。でもせめて、次なる災害が起きた時には今回の教訓が活かされるといいなと思います。阪神淡路大震災の教訓が、東日本大震災の時に活かされたように。もちろん災害なんて起きないのが一番ですけどね。
 
 さて、お次は高台を下りて「バビちゃん(子どもの頃からのあだ名だそう)」のお宅へ。バビちゃんとバビちゃんのお母さんそれぞれに手紙を渡します。

 

嬉しそうに目を細めるバビちゃん
嬉しそうに目を細めるバビちゃん。

 

こう言ってくれる漁師さんたち

 

「第二のふるさとだと思ってまた戻って来いよ。」

こう言ってくれる漁師さんたちがたくさんいるから、イマココ参加者の多くはお盆、クリスマス、ゴールデンウィーク…本当に二度三度と浜へ足を運びます。
 
 さぁ、今度はさっきとは別の高台へ登って一弘さんのお宅へ。
 一弘さん宅も、去年の年末に新居へ引っ越したばかり。一弘さんはずっと、新しい家が建ってイマココ参加者を泊める日を楽しみにしていました。

「会館に泊まってもらってるとなかなか話をする時間も取れないから、家に泊められるようになったら来てくれた人ともっと色々な話をしたいんだ」

そんな一弘さんだから、手紙をもらったら感激して男泣き!

 

手紙をもらったら感激して男泣き

 

……と見せかけて、、ただの泣きまねでした。全くっ。

 

高台の石森さんのところ

 

 最後は福貴浦のお隣の鹿立浜(すだちはま)の高台の石森さんのところへ。
 鹿立浜は福貴浦より一年ほど早く高台が完成したので、石森さんのおうちももうすぐ築一年。随所に石森さんのこだわりがちりばめられた、自慢の家です。

「次来る時はおれに連絡よこせ?うちに泊めてやっから。いいな?ぜっっってぇおれのとこだぞ?わかった?」

寂しがり屋の石森さん。また来てくれるのを、本当に心から楽しみにしています。
 そんな石森さんに手紙を渡すと、石森さんも目を細めてよろこ……いえ、目をつぶった瞬間だったみたいです(笑)でも本当に目を細めて喜んでたんですよ?いい瞬間を切り取れなくて、石森さんごめんなさい…

 

感慨もひとしお

 

 漁師さんたちから見たら、今回のような大学生の参加者は自分の娘や息子でもおかしくない年齢。そんな参加者からお別れの手紙なんてもらっちゃったら、感慨もひとしおです。
 参加者達は、

「“また戻っておいで”って言ってくれたのがすごく嬉しかった!また絶対来る!!」

と嬉しそうに帰っていきました。今回も、素敵な出会いが生まれた一週間だったようです。
 最後に、福貴浦会館の黒板に参加者達が残していったメッセージです。受入をしてくれた石森さん、一弘さん、バビちゃんだけでなく、ウニをくれたともくん、なまこをくれたあきらくんなどなど仲良くなった一人ひとりに宛てたメッセージ。
 そして「漁師さんは すごくかっこいいです。」という言葉。

 

黒板消しで消されちゃう前に

 

 福貴浦、鹿立浜の皆さん! 黒板消しで消されちゃう前に、メッセージ読みに来てくださいねー!

 

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