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脱線した30男の幸せとは

2018/02/22


「幸福な家庭はすべて互いに似かよったものであり、不幸な家庭はどこもその不幸のおもむきが異なっているものである」

 これはトルストイの「アンナ・カレリーナ」の冒頭で家庭に限らず、一般的な幸せや不幸せを語るときによく引用されています。
 過去にはそういう時代もあったかもしれませんが、いまでは本当にそうだろうかと考えてしまいます。幸福な過程もその幸せのおもむきも異なってきているのではないでしょうか。
 こうなったらみんなハッピーみたいなものはもうあまりなくて、幸せも人それぞれ、お互い理解できるものでもないのかもしれません。
 
 僕は2年前まで同じ歳の平均年収より少し多くもらえる輸入商社に勤めて安定的な収入を得、一人暮らしにはちょっと広い部屋とアマゾンで衝動買いした最新の家電や本に囲まれ、たまに合コンに誘われてはホイホイついていく生活をしていました。
 それなりに楽しかったし、それも幸せのひとつだったかもしれませんが、なぜか急にその生活に違和感というか居心地が悪くなりました。
 その原因は祖母の死です。それまでにも祖父が亡くなったことがありましたがあまりにも急でまったく実感がわきませんでした。祖母の場合は少し時間があり、病状がみるみる悪化していくのが見ていて苦しかったです。祖母は最後までガンだと知ることなく、ガンで死にました。
 
 人はかならず死ぬ。そんな当たり前のことを忘れていたというか、向き合って考えることなく生きてきました。自分もいつか死ぬとなり、なぜか田舎に住もうとほぼ直感で思いました。大阪生まれ大阪育ちながらも母親が高知、父親が鳥取の田舎DNAがそうさせたのかもしれません。
 それから半年後、実際に対馬へ移住することになりました。現在は家族の調子が悪くなったこともあり大阪にすぐ帰れる距離の徳島県の阿南市新野町に住んでいます。
 
 なぜそれなりに給料をもらえて、休みもほぼ希望通りにとれて、家からも近くて、そんな会社を辞めるのかと周りはポカンとしていました。
 地域おこし協力隊として阿南市新野町に来たとき地域住民も同じ疑問を持っていました、大阪で仕事もあって便利なのになぜ田舎にきたのかと。

 

徳島県阿南市新野町上空
徳島県阿南市新野町上空(ドローンで撮影)

 

例えばこんな幸せな日

 
 2018年1月15日、第22番札所白水山平等寺でどんど焼きがありました。。たくさんのしめ飾りやお守り、お札が一年の役目を終えて炎に包まれています。

 

どんど焼き

 

 それを見守るのはほとんどが地域住民でしたが一人目立って背の高い外国人が同じ炎を見つめていました。菅笠に白衣で明らかにお遍路さん。
 お遍路さんのハイシーズンは春か秋、夏は暑すぎて歩くにはしんどいし、冬もまた寒すぎて歩くにしんどい。なのでこの時期には珍しいお客さんです。
 
 彼は片言の日本語がしゃべれるようでいつの間にか地域の人と談笑しているので驚きました。でも地域の人がどうしても伝えられないことがあるようで片言の英語がしゃべれる僕が呼ばれました。

 

お遍路さんのピーターさん

 

 彼は23歳でカナダから来たお遍路さんのピーターさん、普段はパークレンジャー(自然保護官)をしているそうです。なんと日本へは初めてで熊野古道いってからお遍路するというツワモノでした。日本文化が大好きで尺八も練習しているというとっても貴重な人物。
 より日本を好きになってもらおうと、ちょうど新野町人形浄瑠璃のドンである岡花座の西村さんがいたのでちょっと人形を見せてとお願いしたところOKが出たのでお宅にお邪魔することにしました。

 

新野町人形浄瑠璃

 

 わざわざ大きな人形を引っ張りだしてきていただきました。ナイスリアクションのピーター。西村さんたちも片言英語まじりで会話し、なんかいい雰囲気です。コーヒーやお茶菓子などもいただき、大変恐縮しながらも美味しくいただき談笑させてもらいました。

 

尺八演奏

 

 お遍路は長い道のりなのでなるべく荷物を減らすもので、さらに外国から来ているとなおさらです。まさか尺八を持っていたとは思いませんでした。お礼の尺八演奏がひらかれました。童謡「ふるさと」を吹いています。
 彼が去り際にとても嬉しいことを言ってくれました。

「今日が日本に来て一番楽しかったです!!」

西村さんたちも笑顔でお見送りしてくれました。
 
 その後、なぜかノリで一緒に夕飯食べに行って、そのまま温泉行って、なんかめちゃ仲良くなりました。メールアドレスも交換し、たまに連絡もとってます。
 急に来た外国人お遍路さんと何を話そうか困るかなと思っていたのですが、お話のテーマは大きくひとつ「田舎」これだけで十分でした。
 例えば外国人でなく日本人であっても気が合う人に多いのは趣味嗜好が似ている人です。田舎だと、ここでは鹿とか猪が出るんだろうけど、うちではこんなでっかいクマが出るんだぜーってだけでおもしろいです。
 日本とカナダにおける田舎スタイルについて話し合うだけで時間は矢のようにさっていきます。こんな気の置かなくてすむ友人がこれからも増えたら嬉しいです。
 
 これは都会ではなかなかありえない連続技であったのではないでしょうか。
 外国人お遍路さんの人柄、地元住民の優しさ、地域の理解などうまく絡まないとこうはなりません。田舎スペシャルなのです。とても幸せな1日でした。

 

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