あるミニシアター系映画館の閉館から思う、地方での文化の意義

 こんにちは。NPO地域おこしの福島です。皆さんは、繰り返し繰り返し観ても飽きないぐらい大好きな映画ってありますか? 

 最近では、私は「人生フルーツ」という老夫婦の日常を追ったドキュメンタリー映画にはまっています。映画館で同じ映画を何度も見ることはあまりしないのですが、2回も映画館で観てしまいました。

 いい映画は見るごとに新しい発見がありますよね。そんな映画との出会いをつくってくれるのが、映画館ではないでしょうか?

 

 人口約5万人の街には珍しく、十日町市には「十日町シネマパラダイス」という映画館がありました。スクリーンが一つしかない、いわゆるミニシアター系の映画館ですが、ミニシアター系映画だけでなくシネコンでやるような大作映画や子ども向けのアニメ映画など幅広い映画を上映していました。

 しかし残念ながら、2018年3月11日に惜しまれながら閉館してしまいました。

 今回は十日町市の映画文化を守り続けてくれた「十日町シネマパラダイス」を、記録に残しておきたいなと思い、ご紹介したいと思います。

 

 十日町シネマパラダイス

 

十日町市の映画文化を守った「十日町シネマパラダイス」

 

 「十日町シネマパラダイス」は、2004年の中越地震で市内の映画館が被災し閉館したことを受け、「中越地震で被災して沈んでしまった町を元気づけたい」と地元企業役員の方が2007年に開館しました。

 人口5万人規模の自治体に映画館があることは珍しく、開館当初から様々なところから視察や問合せがあったそうです。

 

 規模は小さいですが、こだわりのある設備でたいへん居心地がよい映画館でした。特に、海外から取り寄せたという座席! 初めて座った時は、「なんだこのふかふかさは!!」と驚いたものです。

 お客さんの中には気持ち良すぎて、つい映画を見ながら寝てしまう…という人もいたそうです。さもありなん、と思えるくらいの心地よさでした。

 

 十日町シネマパラダイス

 

 私が初めて「十日町シネマパラダイス」で観た映画は、確か「アナと雪の女王」。お子さんもちらほら来ていて、ちまたで話題の発声上映でなくても、「Let it go」を歌っていてとてもほほえましかったです。

 といっても足しげく通った…というほどではないのですが、車で1時間以上かかる場所までいかないと大型シネコンがないような田舎ですので、市内に映画館があるという安心感は大きかったです。

 

 上映する映画のバリエーションも豊かで、まさしく「映画好きのための映画館」といった場所でした。

 しかし、経営状況は常に厳しかったそうで、そして映画館を立ち上げた方が体調を崩されたのが決め手となり、2018年年明けに閉館が発表されました。

 閉館日となる3月11日には、映画館の名前の由来ともなった「ニューシネマ・パラダイス」が無料上映され、大勢の「シネパラ」ファンが集まりました。

 

「十日町シネマパラダイス」最後の日

 

 十日町シネマパラダイス最後の日

 

 無料上映は午前と午後の2回行われ、私は10時半からの上映に行ってきました。10時少し前に到着したところ、駐車場はほぼ満車。席も半分近く埋まっていました。

 

 十日町シネマパラダイス最後の日

 

 ロビーの一角に、寄せ書きコーナーが。上映後に私も書かせていただきました。

 ロビーにおいてあった自由ノートも寄せ書きコーナーの脇に置いてありましたが、閉館の報道があった以降、閉館を惜しむ声がたくさん書き込まれていました。

 

 「十日町シネマパラダイス」閉館を受けて、残していきたいものには、利用したり購入したりとちゃんと投資をしていかないといけないんだな、とつくづく思いました。

 当たり前のものは一つとしてないから、なくなってしまった時に後悔しないようにしないといけないですね。

 

 十日町シネマパラダイス最後の日

 

 無料上映した「ニューシネマ・パライダイス」、私は初めての鑑賞でしたが、一つの映画館の最後を飾るのにこれ以上ふさわしい映画はないと感じました。(名作中の名作なので、多少作品内容に触れた表現になるのはお許しください…)

 

 映画の中で多くの時間を割かれて描かれているのが、映画を見て楽しむ人々の姿。第二次世界大戦後のシチリア島の小さな村が舞台ということで、人々の娯楽は映画しかなく、教会が映画館をかねていたため、映画館がコミュニティの中核にもなっていました。

 同じ場所に集まり同じ映画を見て、笑い泣き楽しむ人々。人々が映画を愛した時代…。 しかし、物語の終盤では他の娯楽の影響で映画館は潰れてしまい、建物も取り壊されてしまいます。

 

 奇しくも「十日町シネマパラダイス」も同じ閉館という結果になってしまいましたが、あのすばらしいシートや上映機器などの設備はきちんと保管されているそうです。そして、存続を願う有志の会も立ち上がりました。

 様々な障害があり、すぐにどうこうできる訳ではないですが、十日町市の文化振興のために頑張っていってもらいたいな、と思います。私もメンバーの末席に入れていただいたので、できることがあれば一生懸命お手伝いしたいと思っています。

 

地方だからこそ、文化を守っていきたい

 

 一般論として、地方ではなかなか文化の価値が評価されにくい現状があります。

 「大地の芸術祭」という世界的にも有名なアートイベントが開催される十日町市でさえ、「文化では稼いでいけない。経済発展の方が先だ」という意見の方は少なくありません。確かに町が存続していく上で経済は大事なことだと思うのですが、では文化のないまちに人は魅力を感じられるのでしょうか?

 

 十日町市には地域おこし協力隊をはじめ多くの移住者が活躍していますが、十日町市が、バイパス沿いにどこにでもあるようなチェーン店やパチンコ店が立ち並ぶだけのまちだったら、今みたいにたくさんの移住者がやってきたでしょうか?

 私はきっと違ったと思います。

 「十日町シネマパラダイス」が閉館してしまい、十日町市の映画文化が一つの終わりを迎えた今、文化を守っていくあり方について振返っていけたらいいなと思います。

 

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