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いなか仕掛人

株式会社西粟倉・森の学校
暮らし創造部 坂田 憲治

坂田憲治

地域の「考え方」に合わせて受け入れる

取組紹介

「西粟倉・森の学校」の施設運営

 地域商社「株式会社 西粟倉・森の学校」は、地域が主体的に森林等の地域資源の活用と、地域のお客様づくりに取り組むために、西粟倉村民76名、西粟倉村、(株)トビムシが株主となり、2009年10月に設立されました。
 廃校になった木造校舎の影石小学校を拠点に、木材加工施設「ニシアワー製造所」を通じて、西粟倉村の森から生まれる家具や木工品などの展示販売や、モデルルームなどを設置したり、木工教室や各種イベント・ツアーなどの実施、カフェスペースの運営など、西粟倉村の森と人々の生活とをつなぐための事業を行い、年商2億円ぐらいの事業規模となっています。

百年の森林事業

 約50年前に植えられた木を、村ぐるみであと50年管理し、100年の森林に育てようと『百年の森構想』というビジョンが2008年に掲げられ、林業の分野での様々な取り組みを行い全国から注目されています。
 村が森林所有者から合意をとりつけ、間伐などの森の管理業務をまとめて行えるようにしたこと。「共有の森ファンド」というファンドを立ち上げ、1口5万という小口投資に限定した投資家という支援者を増やし、森林管理にかかる費用を捻出したこと。森から出た材を地元で加工できる施設「ニシアワー製造所」をつくり環境を整え、生産から販売まで林業の六次産業化を地元で行えるようにしたこと。など、様々な取り組みによって衰退する林業の再生を実現させてきました。

村の人事部

 2007年に厚生労働省のパッケージ事業を活用し、雇用対策協議会(通称:村の人事部)を立ち上げ、林業に関わる外部人材の獲得を行っています。様々な行政事業を活用しながら、4年間で33家族56人のIターン者を受け入れ(内6家族12人転出)が行われています。
 西粟倉村雇用対策協議会はなくなりましたが、現在では人事部の機能を森の学校が引継ぎ、その当時担当だった職員も森の学校スタッフとして今も働かれています。そして、総務省事業である「地域おこし協力隊」の人材育成と事務管理を役場から委託されて森の学校が実施しています。

株式会社西粟倉・森の学校

 

ココがスゴイ!

「起業家的人材を受け入れる」という「考え方」を持った移住者の受け入れ

 西粟倉では、むやみやたらに移住者を募集する移住促進事業は行われていません。ただ単に人口だけ増えたらよいという考え方ではなく、必要なところに必要な人材を募集し、入れていくというスタンスで、人材の受入れが行われています。
 求人募集をする場合でも、「西粟倉で働きたい人募集」というような大枠で求人募集するのではなく、個々の職種でどのような人材がほしいのかを明確にして、求人・採用を行っています。なので、応募があっても、いい人がいなければ妥協して採用するということはしません。
 また、「単に田舎暮らしが目的で、少し仕事があれば・・・」とか「老後の年金生活、スローライフを~」というような人材は受入れていません。「この仕事がしたい!働きたい!」というしっかりとした考えや、働く意欲を持った人、自分で仕事をつくっていくような起業家的人材を地域として必要としているので、その「考え方」をしっかりと持ち、そういう人材の募集・採用を実施していました。
 このことは当たり前といえば、当たり前のことかもしれませんが、地域産業の成長に合わせて、仕事を増やしながら、必要な人材を必要な数だけ募集し、そこにあった人材を採用し、村で暮らしてもらうようにする。結果として、移住者で人口が増えることにつながる。という、これが健全な移住促進事業ではないかと改めて考えさせられました。

来てほしいと思う若者は直接口説く

 都市に出て行っての説明会等も実施されていますが、「いいな」と思う人に直接声をかけ、口説くという方法で優秀な若者を獲得しています。
 そのような若者がどこにいるのかというと、例えば、牧も講師を務めている林業塾のOBや西粟倉で実施した田舎で働き隊の参加者の中から、「いいなと思う人」を直接口説いてみることもあります。現在も定住している移住者で、地域の林業の中核を担っているような人は、このように口説いて移住した人が多いようです。
 林業、農業、漁業など分野を絞り込んで人材を探したい場合は、そのような分野に興味関心を持った人が集まりそうな場所に出かけて行ったり、そういう場を自らでもつくったりして、ネットワークをつくっておいて、いざ受け入れ環境が整ったときに、そのつながった人たちに声をかけて移住してもらうという方法は、人材を獲得する上で有効な戦略だと思います。

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困りごと

がんばっている人を村民全体が応援するようになってほしい

 Iターン者や移住者が関わる会社など、一生懸命がんばっている人を応援してくれる村民は増えていますが、村民全体がそうなると村はもっとよくなると思っています。冷ややかな目ではなく、温かい目で見て、応援できるように村民全体がなってほしい。応援の仕方は、お金をくれというわけではなく、例えば、村外へ出たときに、村民が村の商品をPRする営業マンになるというような。村のことを誇りを持ってPRできるような村民になってほしいと思います。そして、2000人くらいに人口が増え、それぐらいの人が生活していける雇用が村にある状態が理想です。

ワーカーを見つけるチャンネルが少ない

 起業家的な人材を見つけるようなチャンネルは現在Webメディアなどであるが、田舎に来て、木材の加工場などで単純労働を黙々とやるという泥臭い仕事でもちゃんとやってくれるようなタイプの人材も必要になってきています。しかし、そういうワーカーとしての人材をどこで見つけられるのか、そのチャンネルや募集方法に工夫していく必要があると感じています。

株式会社西粟倉・森の学校

本ページは、平成25年度 地域をフィールドとした産業人材受入のための環境整備のあり方に関する調査事業(実施:四国経済産業局)において調査した時点のデータを活用して作成したものです。