美山ふるさと株式会社

高御堂厚さん

美山ふるさと株式会社・美山町自然文化村
常務取締役・館長  高御堂 厚

 美山町に暮らし始めて24年目を迎えます。豊かな自然と日本の伝統文化が息づくまちとして年間90万人の観光客を迎えるまちに暮らしています。最近では、京都駅から車で1時間30分かけて台湾や香港から多くの方々が訪れます。

 私は、自然教育や環境教育のフィールドとして美山町に住むことを決めました。関西では、屈指のブナの原生林やかやぶきの里が代表する日本の農山村の文化がここにあるからです。希少生物が普段の生活圏に普通に生息し自然の素晴らしさはお墨付きです。昨年京都丹波高原国定公園に指定されました。

 何よりも住んでいて心地良いいのは、地域のみなさんとの温かなつながりです。見守られているというか心配してくれているというか少し頼りにしてくれているというか。そんな人とのつながりが田舎に住むことの素晴らしさでしょう。

 そこに住むということは偶然であり、何かの縁であり、必然でしょう。私にとって貴方との出会いもきっとそうであるのであれば、すばらし出会いを期待しています。

 私は、愛知県生まれの56才。24年前に京都府美山町に移り住みました。移住する2年前に夫婦で渡米し「アメリカの環境教育の現場が見たい!」という思いだけで約1年半、ナショナルパークや環境学習センターを渡り歩き、あた、拠点としていた環境学習センターでのプログラムに参加させていただきました。
 被害者と加害者が同じであるという環境問題の視点が環境教育を支えています。自然の仕組みを理解し、自然の中での自分の位置を自覚し、自然の中で生かされている生き方を行動に移す。これが環境教育の基本的な流れです。

ネイチャーガイドハイキング

 アメリカやカナダでは様々なプログラムが考えられ刺激的な毎日でした。帰国後、この環境教育を日本で実践したいと思い美山町に移住しました。
 そこは、日本の農村文化が息づくまちでした。見えないものを大切にする心、農業に勤しみ自然と向き合う生活。人とのつながりの中で生まれる勇気や希望。
 住み始めて少し立つと、アメリカでの環境教育の手法に加え、日本の伝統的な暮らしぶりこそが環境教育を支えるものであると気づいてしまいました。そこからは、江戸時代の文化に関心を持ち暮らしぶりや考え方に関心を持ち始めたのです。
 美山町には、そんな暮らしのヒントが散りばめられているのです。

かやぶきの里そば畑

 美山町には電車が通っていません。バスは走っていますが1日に数本です。自動車免許は必ず必要です。
 1月から2月は根雪になり50センチ~1メートル積ります。除雪しますので生活道路は安心して走れます。でも4輪駆動の車でないと心配です。

 東西約36km南北約18kmの広い地域に信号は5つ、コンビニは1つ(らしきもの)です。しかし、車があればJR京都駅まで約90分、市外のコンビニまで30分、病院まで30分ぐらいで行けます。買い物は、通販もありますし、生協さんの車が玄関まで週1回注文した商品を届けてくれます。

 不便さは感じていません。無人販売所にいけば新鮮な野菜が100円で手に入ります。田舎暮らしは、不便さを便利さに変える暮らしであるとも言えるかもしれません。
 市内には、テレビやインターネットのケーブルが張り巡らされており、都会と変わりないネット環境が得られます。スマホの入りにくい地域も一部あります。

河鹿荘

 さて、私達の会社は、第3セクター(行政が支援し民間が運営する形態)の企業であることから地域の文化の情報発信、地域の経済的な活性化への貢献、雇用促進などがその役割です。
 観光施設ですので、宿泊施設、レストラン、キャンプ場、グランド、果樹園などがあり敷地は約6ヘクタールあります。宿泊業の他旅行業や旅客運送業の資格をもっています。
 施設だけではなく、京都大学の芦生研究林内でのネイチャーガイドハイキングや雪まつり、スノーシューハイキング、修学旅行の体験プログラムの受入、様々なツアーやイベントを年間通じて行っています。
 年商は約2億円、牛乳加工やジェラート販売、特産品販売など会社全体の年商は約7億円です。

美山道の駅

 私達の仕事は、フロントの接客、予約の受付、精算、施設の管理、レストランの厨房(調理)、サービス係、客室のりんねん係、施設のメンテナンス係など様々です。

「なんだ、ホテルの仕事か」と思ってしまえばそれまでですが、ここからが大切なところです。
 田舎で住む、そこは自然豊かで人の人情も厚い、でも特別な仕事があるわけではない。でも、そこには、可能性が大きく広がっているのです。

かやぶき別館室内

 例えば料理にしてみても鹿や猪、平飼の赤玉の玉子、新鮮な野菜、清流に泳ぐ天然の鮎。都会では、なかなか手に入らないすばらしい食材があって、これをどのように調理師食べていただくかを考えるだけでも楽しくなります。

「そうそう、あそこのおばあちゃんはイタドリの油炒めが上手だっけ」

「愛子さんの白和えは絶品。」

「鹿肉は高タンパク高鉄分低脂肪のヘルシーな食材。」

「田植え時期になれば、ホウノキの大きな葉っぱに豆ご飯を包んで田植えのお昼時間に畦に座って食べる。」

「納豆は、わらに包んだ自然の納豆のなんておいしいものか。」

「鮎はやっぱり塩焼きがおいしいけど昇くんの釣り上げた鮎は特に美味しいね。」

「ご飯はどうかな?4升炊きの羽釜に美山のお米を入れて薪で炊いてごらん。それはそれは美味しいご飯。きっと美山の水であることが美味しさを引き立てるのかな?」

「春になればお茶摘み、野草摘み、秋には栗拾い柿ぼり仕事はいくらでもある。」

「こんな美味しいものをどんな場所で食べたらおいしいかな?かやぶき民家の囲炉裏かな」

「清流に足をつけながらスイカを食べるのもいいな。おばあちゃんの家の縁側なんてどうだろう?」

地域のみなさんと

というように食材を選び、料理に仕上げる、料理には物語がある。その料理をどんな場所でどんなふうに食べるのか?心にも身体にもいいもの。食べるは「良い人」と書くのだからいいことがいっぱい詰まっているんだろう?地域の方々から学び、つながりを作り、いろいろと考え形にする。

「食べ物をテーマとしたツアーや体験もできそうだ!誰にたべてもらおう?子どもたち?海外の人?お年寄り?」

そんなことを考え実行するスタッフを募集しています?仕事は自分で楽しくするもの、できるもの。仕事は自分で極めるもの。そうすれば田舎での暮らしは百倍も千倍もたのしくなるよ。

 最近では、台湾や香港からの観光客が急増し仕事でも簡単な英語ができると助かります。ああだこうだといいながらみんなを巻き込んで新しい仕事に取り組んでくれる方、人が好きな方、元気な方を求めています。

伝統食インタープリター