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「はたらきかた」のマッチング いなかマッチ

鬼の棲むまちの道の駅で加工品開発や通販事業を担う2番手さん

●受入事業者
株式会社森の三角ぼうし 代表取締役 松本周作さん

愛媛県南西部の鬼北町は、鬼ケ城山系の北側に位置することから、日本で唯一、「鬼」の名を関した自治体です。“鬼の棲むまち”のキャッチフレーズの通り、鬼北町の道の駅「森の三角ぼうし」 入り口には、全長5メートルもの巨大な鬼・鬼王丸(おにおうまる)の姿が。
フィギュアや映画の世界で活躍する造形作家の竹谷隆之氏と、フィギュア制作で世界に名だたる海洋堂とのコラボレーションで生み出された鬼王丸のモニュメントは、他にはない圧倒的な存在感を放っています。その威力は、近隣の親御さんが「言うこと聞かんのやったら、三角ぼうしの鬼さん来るで」と言うと、小さな子どもがピタリと泣き止む必殺フレーズになっているほど。

鬼王丸

また、道の駅館内では、鬼王丸の恐ろしい形相の写真に「ゲームは夜八時までって決めたやん! 三角ぼうし行くか?」、「時間割は夜やる言うたやろ? 三角ぼうし行くか?」等のユニークなコピーを添えたポスターやクリアファイルがひときわ目をひきます。このポスターたち、なんと代表取締役の松本さん自身がデザインおよびコピーを手がけたのだとか。
この度、㈱森の三角ぼうしでは、加工品開発や通販事業拡大にあたって社長や店長の2番手となるような若手を育てていきたいとあって、松本さんにお話をお伺いしました。

株式会社森の三角ぼうし 代表取締役 松本周作さん

食品加工施設を活用して、自由な発想で商品開発を

―地元の素材を使った加工品開発ということですが、どういった商品をイメージされていますか?

「地元の人たちが以前、まんじゅうを作るのに使っていた食品加工の設備があるので、そこを使って開発や試作をしてもらおうと思います。応募者の方に自由な発想を持ってもらいたいので、これといって限定したイメージは今のところ、決めていませんが。この辺りでは、誠屋菓子舗さんというお店の『カニ最中』が有名、ほんとに美味しい。地域に根づいた味です。もう80歳を超えたおじいさんがやってて、私も小さいときからそこへ行って、アメをもらったり、まんじゅうをもらったりしていました。この辺で数少なくなったお菓子屋さんの最中、職人さんの最中なんです。

誠屋菓子舗さん

で、そのおじいさん、昔から知り合いやけど、いくら『道の駅にも置かせて欲しい』って話しても『お前がなんぼ頼みに来ても、わしは年もとったし、そんなにたくさんよう作らんけん』って言って、自分の店以外では販売してないの。年とったから、って。だからうちで〈かに最中〉じゃなくて〈おに最中〉を作って、おんちゃんの餡を使わせてもらえたらな、と妄想しています(笑)。

あと、道の駅だから駅弁という考えもある。今、一人分だけを作るのも面倒くさいし、火を使うのも危ないし、ってことで高齢者食の弁当が見直されてるよね? 道の駅は現在、弁当を業者から仕入れているので、地元のものを使って、地元の人向けに、独自の弁当をうちで作るという妄想も描いたりもしています。

でも、『実はですね、地元の特産品と全然関係ないけど私、水飴を作りたいんですよ~』とかって、来てもらっても構いません。自由な発想を求めてるんです。鬼北町の魅力も、自分は生まれも育ちもこっちなので、灯台下暗し。来てもらう人に、フレッシュな視点で見て感じてもらえたらな、と」

―鬼北町の特産品としては、キジがありますね。

「鬼北町の人口は約1万1千人やけど、キジは多い時は15,000羽いて、みんなが毎日食うても食いきれんぐらいだった。うちも、調理したキジを出してるけど、キジはほんとに美味しいよ! もう鍋とかフルコース食べると美味しいねぇー、鍋最高やね、日本人に生まれてきて良かった、と思う。ほんっとに美味しい。実際、キジ肉ってグラムで言うと、松阪牛ぐらいの値段するんです。

キジ商品

でもね、うちのコンセプトは、近隣の道の駅とは違って、八百屋さんのイメージなんよ。道の駅にも百貨店寄りとスーパー寄りの道の駅があって、例えばこの近くだったら『道の駅四万十とおわ』とか『道の駅よって西土佐』は、観光客のお客さんが多い。おみやげとか客単価の高いものが中心の品揃え。一方でうちは毎日来る人もいるくらい、地元の人が頻繁に来れるような店作りにしてる。産直市もレストランも客単価を低くしてて、地元客が多くて、リピート率が高い道の駅。それが強み。なので、これまでの色を守るなら、特産品の中でも価格帯の高いキジ肉よりも、栗とかゆずを使うほうがいいのかもしれない。

でも、裏を返せば、うちは観光客向けの高めの商品が弱いということ。地元は年々、人口が減ってるので、事業を継続するためには、現状維持じゃだめで、ちょっと高級志向の観光客をターゲットとした商品を作って、ヨソから外貨を稼ぐことも考えないといけないんです」

一緒に考えて、四国では他にない道の駅を目指したい

―これから3年後の道の駅はどう変わってくると考えていますか?

「今は地元の人が集まる道の駅としてはある意味完成している。やけど、それではただの八百屋さんになってしまう。道の駅は町が元気になる八百屋さんやないといけないですね。 地元の人が集るような道の駅にはなったけれど、地産地消が八百屋さんの強みなのに地産ができなくなってきている。

ヨソから来た新しいスタッフに『この街ってこんな面白いものがあるやないですか!これビジネスになるやないですか!』と外の視点でいいもの発掘してもらって、新たな素材を探して新しいものを生み出していきたい。そんな発想が商品開発に繋がればいいかなと思っています。今その人が十分な能力がある必要はないですが、そんなことをやってみたいという意志がある人に来てもらいたいと思っています」

―土台の部分からともに考えることになりますね。

「道の駅というものは平成5年からスタートして、もう利用する人の固定観念ができあがりつつある。“この道の駅、道の駅らしくないね”、とか、“道の駅らしいね”、とか言われるけど、道の駅らしいって何だろう?そう考えると、道の駅には、まず、トイレがあって、産直があって、お土産売り場があって、地元の特産品が並んでて、地元のじいちゃん、ばあちゃんがそこら辺に商品を持って来る、そういうイメージ。

でも、今や全国に1050もの道の駅がある。そうすると、新しい道の駅がいろいろできてきてるし、うちも開業から20年目なので変革をめざして、もっと特徴を出さないといけない。全国の道の駅には産直売り場がないところもあるし、四国に一軒、レストランがないところもあるし、岐阜の五木には、たった2人でやりよる道の駅がある。コンビニってレイアウトが全部ピシャーっとして、どこの店も同じになるように設計されてるけど、道の駅は全部が違っていいはず。イメージが固まってきてるけど、1000以上ある道の駅のなかで、オンリーワンをめざす…少なくとも、四国では他にない道の駅をめざしたいね。その中身の構想はここでは言わんけどね(笑)」

森の三角ぼうし

日常業務は現場に出てお客さんの声をきく

―日常の業務はどういった感じになりそうでしょうか。

「商品開発のための時間は全体の30~40%確保して、あとは接客などの通常業務にあたってもらうことになるかなと思います。商品を生み出すために、一番大事なのは、机上で考えるより“お客さんの声”なんです。なので、イベント等への出張販売にもついて来てもらいたいと考えています。

出張販売は、レギュラーでいうと、宇和島周辺に火曜・金曜に行っています。春と秋には、スーパーで4日間の歳事があって、基本は県内だけど、時々高松や大阪、東京に行くこともあるね。東京だったら新橋のアンテナショップが多くて、あとは百貨店の地下食品売り場とか催し物会場の歳事とかへ出張します。

出張販売は“お客さんの声”が聞こえるしマーケティングに一番いい。そこは肝だと思いますね。馬路村の東谷さん(※馬路村農協組合長)が、〈ごっくん馬路村〉がまだ売れない時代、イベントに持って行っては売れずに持ち帰り、持って行っては持ち帰り…ごっくん馬路村をヒットさせた裏には、持って行っても1、2本しか売れずに帰ってきていた時期があって、それが商品の改良につながってる。東谷さんは自ら接客して、売れない理由を自分で分析して、商品改良をしてきてるんですよね」

地域になじみ自分の色も大切に、チャレンジし続けられる人

―どんな人財に来て欲しいですか?

「コミュニケーション能力がある人…だけど、落研に入ってるとか、そこまでのスキルは必要なくて(笑)、最低限のコミュニケーションが取れれば大丈夫。商品開発って、マーケティングを一所懸命行なっていた時よりも、そこの縁石で足をつまづいて飛んだ時、ふっと閃いた、とか、そういうこともあるので。コミュニケーションさえとって、そこに気付きが入ってきたらいいのかなと思います。あんまりデータ化、データ化、とかし過ぎなくてもね。

最低限のコミュニケーションって、お客さんやスタッフ同士と、普通に会話して、相槌打って、挨拶して、それからちょっと話を詰める段階になった時に、酒は飲めなくてもいいけど、酒でも飲みながら話をしたりとか、極端にいうとそういうことですね。

コミュニケーション力がある人って、『何してるんですか?それ』って、隣の人が何をしているか興味を持てる、そういう感性があったらいいと思う。『あのおっちゃん何やってるんだろう』、『あのおばちゃん、いつもと様子が違うな』とか、ちょっとアンテナが張れる感性。気になる人…気にする人?(笑)ですね。

あとは、地方で暮らすために必要なのは、その地域になじみながらも、自分の色を大切に、チャレンジし続けられる人が求められていると思います。固定した視点に風穴を開けられるような人が来てくれたらうれしいですね。田舎の人は最初は動かなくても“やろうよ、やろうよ”って言い続けたら動くようになるんやと思うんですよね。地方には不足しがちで求められているのは、外から入ってくる、システマチックで、ロジカルに、物事を考える仕組みだったりします。

田舎のいいところは、今日はお祭りじゃーっていうときに親戚がみんなで集まってわいわいできる。そういう地域のコミュニケーションを、残したいよね。お隣の西土佐(※高知県四万十市の西土佐地域)はコミュニケーションがすごく活発なところなのでうらやましい。うちはコミュニケーションが少なくなったもんね。西土佐よりは都会だからさ、この辺(笑)。人口が少なくなると、コミュニケーションの機会も少なくなるから、気軽に集まって飲もうみたいな感じじゃなくなってきてる。だから、自分は仕事でもプライベートのランニングやバイクとかでも、コミュニケーションやつながりを意識しています」

頼りになるスタッフと商品開発

実際に現在どのような流れで商品が作られているのか見させていただきました。2月3日は節分の日。サンタがクリスマスに忙しいように、節分には巨大な鬼・鬼王丸(おにおうまる)の元に人が集ってきます。

子ども達のまめまき

この時期に合わせて、レストランスタッフの岡村さんのアイディアで出来たのが“恵方巻ロール”。恵方巻の中身はできるだけ地元の食材を使って、苺、キュウイ、オレンジ、バナナなど、それぞれ恵方巻の中身の色合いを意識したフルーツがゴロゴロ入っています。

恵方巻ロール

この商品は、岡村さんがある日ふと思いついて、わずか一日で開発され、店頭に並べられたという驚きの速さでできた商品でした。

野菜などのポップも農家さんと連携して、直に形にしているそうです。自分の作った商品や、産品を大切に販売してくれるので、地元農家さんからも「あの道の駅は最初から話を聞いてくれるけんええ」と太鼓判を押されている頼りになるスタッフがそろっています。

かぼちゃ

八百屋さんのようになんでもある「森の三角ぼうし」は、地元農家さんがこだわりの野菜やフルーツを毎日持ち込んでくれます。1月、2月は苺も盛ん。この時期たくさん苺を持ってきてくれた農家の佐竹さんにお話を聞いてみました。

「愛媛特産の”寒じめあまおとめ”ってあるがよ。あれは今が旬で普通の苺が糖度12度くらいやけど、それは糖度が15度以上くらいある、最高19度まであげちょった。洗わずにそのまま食べるのが一番美味しい。でも作るのが難しいけん、全体的には生産は減りようね。でも、これはリピーターついて、道の駅出しても直ぐ売れるんよ」

佐竹さん出荷

寒じめあまおとめ

食べさせて頂くと苺とは思えないような「ボリボリ」という歯ごたえがあって、他ではない食感と甘さがありました。一つひとつが個性豊かな未開発の素材が眠っていて、ただ量がある八百屋さんとは違う道の駅です。

鬼北町は自然があふれ、文化遺産もいろいろ

鬼北町のことをもっと知りたい、という私たちのお願いに松本社長が鬼北町名所巡りツアーを開催してくださいました! 鬼北町は四万十川最大の支流である広見川に沿って広がり、自然溢れる町ですが、文化遺産もいろいろなのだとか。

広見川

まず連れて行っていただいたのは、鬼北町役場。登録有形文化財に指定されている貴重な建物は、日本に近代建築をもたらした一人であるアントニン・レーモンドによる設計。カラフルなステンドグラスと、カーブを描いたラインが特徴的です。1952(昭和33)年に建築され、耐震性の問題から取り壊しも検討されましたが、今年2016年に耐震補強を施し、再生されたといいます。

鬼北町役場

ここで松本さん、ズボンのポケットからおもむろに取り出したのは、自撮り棒(笑)。記念撮影をしながらのツアーとなりました。

記念撮影

興野々橋
次に訪れたのは『興野々橋』。大正12年に、当時まだ珍しかった作られた鉄筋コンクリートで作られた橋です。現在は国道が開通したことからメインの交通路としての役割は譲り、地域の人に愛される場所となっています。

善光寺薬師堂
最後は重要文化財の『善光寺薬師堂』。こちらの仏堂は室町後期に作られたと見られる、国の重要文化財(!)。堂内には木造薬師如来坐像が鎮座しています。

鬼北町は、森の三角ぼうしから2キロ圏内に大型スーパーや書店、ファミリーレストラン、コンビニなども集まっており、日常生活に不便はありません。車で5分ほどの場所(お隣の松野町)のぽっぽ温泉も広々しておりオススメです。カニ最中もぜひ! 1ヶ月の研修中に住むことになるかもしれない住宅も見学させていただきましたが、広々としてきれいなお家でしたよ。

3年間で目指すところ

いなかマッチは、民間版の「地域おこし協力隊」と捉えて頂ければと思います。「地域おこし協力隊」の多くが市町村行政の臨時・契約職員となり、地域の課題を解決するべく様々なところに派遣され、3年間仕事をしていきます。いなかマッチは、株式会社いなかパイプが雇用する形で、地域の課題を解決しているような「いなかビジネス事業者」のところで3年間仕事をしていくことになります。
この募集は、株式会社森の三角ぼうしが受け入れ事業者で、3年間の間に、道の駅での商品開発や通販事業の展開を行い、3年後には、株式会社森の三角ぼうしの正社員となって事業展開していく人財になってほしいと考えています。

1年目は、道の駅の通常業務を習得し、自分で自分の給料分くらいは稼ぎ出せるくらい貢献できているようになること。加工品開発経験者やネットビジネス経験者であれば、社長と相談しながら、商品販売企画をできるようになることを目指します。
2年目は、1年目の課題を活かしながら、商品開発・事業展開を進めます。
3年目には、これまでチャレンジしてきた取り組みによって売上アップや販路拡大に貢献できるようになっており、それら新規事業によって自らの給料分が稼ぎだせる程に事業展開できていることを目指します。
この3年間の期間は、株式会社森の三角ぼうしと新しく採用する人財との取り組みが、うまく展開していくことができるように、株式会社いなかパイプがサポートして、ファシリテート&マネジメントしていきます。
3年後、愛媛・鬼北町の道の駅に、新しい動きをつくっていけるようなチャレンジャーのご応募をお待ちしています!

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