究極の蕎麦を求めて対馬に行こう!

2015/12/23

 

 ご無沙汰しております。対馬の川口です。今回は、先月末に行われた「民泊体験モニターツアー 対馬を暮らす旅(秋)」の様子について、ご報告したいと思います。

 

 さて、みなさん、ソバの産地、といえばどこを思い浮かべますか?まぁやはり信州、出雲、北海道、、、そのあたりですかねぇ。忘れてはならないのが、対馬のソバ「対州そば」です。

 本州では新ソバと言えば9月から10月に出回りますが、ここ対馬では、新そばは12月の食材です。そして、対州そばの最大の特徴は、伝来当時の原種に近いそば、ソバ本来の味がするソバ、ということなんです。新ソバの時期が他の産地と比べて遅いのも、収穫期を早めるように品種改良を重ねていない、ということの現れかもしれません。

 

ソバ伝来ルート

 

 対馬といえば、九州と朝鮮半島の間に飛び石的に浮かぶ国境の島。古代からさまざまな文化や技術を大陸から日本へと橋渡ししてきた島です。そばの栽培もその一つ。

 そばの原産地は中国の雲南省からヒマラヤ周辺と言われています。縄文時代後期に中国大陸から朝鮮半島を経由して対馬に伝わったそば。全国的に多収量でより早く栽培できるように品種改良が進み、ソバの実はより大粒になってきました。対馬では、伝来当時の原種に近いソバの種を門外不出で現在でも作り続け、「対州そば」として、その味を保ち続けています。本土のソバより小粒ですが、その分ソバ本来の風味が強いと、愛好者から高評価を受けています。つなぎを一切使わず、100%天然のそば粉を用いるのが対馬流。独特の歯ざわりとのどごしの良さ、自然のままの香りと味を楽しむことができます。

 そこで、このそばの味を、多くの人に味わってもらいたい!と企画したこのツアー。そばを栽培している農家さんのお家に宿泊し、農家さんからそばの打ち方をおしえてもらって、自分で打って食べる。その味はお店で食べるソバとはまた一味違うことでしょう。

 

ソバ打ち

 

先生は、民泊「山里の宿 田舎屋さいとう」の奥様。ご自身でソバの栽培から加工、販売までを手掛ける、正真正銘の達人です。

 

ソバをのばす

 

 参加者の皆さんも挑戦。達人がやっているのを見ると、いとも簡単そうに見えるのに、なかなかどうして、自分でやると思うようにいかないもんなんですよね。。。どんどん端っこが切れていくわ、綿棒にくっついて穴が開くわ、まぁまぁ思うようにいきません。

 ソバの状態を見極め、加水する量や温度を調節すること、伸ばしている間にどんどん乾燥するので、とにかく手早く伸ばすこと、絶妙のタイミングと量で打ち粉をまぶすこと、、、ソバ何グラムに対して云々、と数字では表現できない技があるんですね。

 

対州そば

 

きれいに伸ばし終わったら、きちんと折りたたんで、切りそろえていきます。うどんか?と思うぐらい太めに切るのが対馬流。そのほうが、歯ごたえがしっかりと楽しめます。

 

そば茹で

 

 いよいよ大釜で茹で上げます。茹で終わったソバは、表面のぬめりをとり、弾力をつけるために冷水で洗います。でも、ソバ打ち体験の醍醐味は、釜揚げそば。水洗いする前に、釜から揚げたソバをアツアツのまま、ちょっとつまみ食いしてみましょう。ゆで汁に溶け出したソバの風味が、一層強く感じられますよ。余裕があったら、釜揚げソバにゆで汁(蕎麦湯)を注いで、塩か醤油を垂らしていただく。これがまた絶品です。お試しあれ。

 

いりやきそば

 

 さてさて、ついに完成「いりやきそば」。肝も丸ごと使い、骨がついたままぶつ切りした地鶏で出汁をとり、こんにゃくやネギ、ゴボウなどのお好みの具材を入れて少し甘めの醤油味で味付けします。一切つなぎなしの十割ソバ。表面が少しぼそぼそしていますが、それがまた、この濃厚なだしを絡めとって、見事なハーモニーを奏でます。

 さて、ソバの紹介ばかりしてしまいましたが、今回のツアーの目的は、民泊体験ということでした。順を追ってツアーの内容をご紹介させてください。

 

お出迎え

 

福岡からジェットフォイル(高速船)で対馬に降り立ったツアー参加を魅力大漁!の大漁旗でお出迎え。どんな方たちが参加してくださるのか、ドキドキのご対面です。

 

歴史探訪-万松院

 

 一行はまず、対馬ってどんなところ?という概略を知るため、厳原の城下町の歴史探訪に向かいました。対馬を語るうえで、朝鮮国との外交の歴史は欠かすことができない要素です。豊臣秀吉の朝鮮出兵で完全に断絶した日朝の国交を回復させるまでのドラマは、涙なしには語れません。朝鮮半島を経由した大陸との文化や技術の交流は、今の日本を形作ってきました。対馬なくして、今の日本は無いんです。

 そんなことをしみじみ感じるコースでした。写真は、日本三大墓地の一つであり国指定史跡の万松院(ばんしょういん)。国交回復に心血を注いだ宗義智(そうよしとし)公の生涯に思いを馳せます。

 さて、歴史探訪が終わると、いよいよそれぞれの民泊へと別れてゆきます。

「船旅疲れたでしょう~。まずは食べんね~。」

ということで、かんぱーい!!

 

民泊食事_橘果樹園

 

民泊だけあって、食事は家主さんと一緒に作り一緒に食べます。それぞれのご家庭で、生業を活かした料理が提供されます。

 

鴨鍋

 

猟師さんの斎藤さんちは、メインが鴨鍋。もちろん、ご主人がGETした鴨です。

 

豆酘雑煮

 

最南端、豆酘(つつ)の集落は、対馬の中でも独特の食文化を持っています。豆酘の橘さんのお宅では、名物「豆酘雑煮」が出ました。

 

民泊食事

 

何十種類という野菜を栽培し、直売所に出荷しているという内山さんちは、自家製野菜のフルコース。品数、数え切れません。。。

 

と、こんな感じで一日目が終了。皆さん、ぐっすりお休みになりました。

 

 二日目は体験プログラムの日です。午前中はソバ農家の斎藤さんちの加工場で、みんなでソバ打ち体験。午後からはそれぞれの民泊さんに分かれて、いろんな体験をしました。

 

かんころ餅づくり

 

干し芋をモチ米と混ぜ込んで搗く「かんころもち」。あんこを中に詰めて丸めます。次の日に地区であるお祭りに持っていくんだそうです。

 

せんづくり

 

こちらは対馬が誇る芋の保存食「せん」を作っているところ。サツマイモを小さく砕いて発酵させ、水にさらしたり丸めて乾燥させたりを繰り返して、サツマイモのでんぷん質だけを取り出すという伝統技術です。その名の由来も「千の手間がかかるから」という「せん」づくり。地域の自然や人々の生活と深く結びついている伝統的な食材で、技術の消滅が危惧されているもの、として「味の箱舟」にも指定されています。

 

魚釣り

 

男性陣は、魚釣りへ。日本有数の好漁場である対馬は、沿岸での釣りも楽しめます。漁港の船着き場で、ちょっと糸を垂らすと、まぁまぁ釣れるわ釣れるわ。魚釣り初心者でも、十分楽しめます。釣った魚は今晩のおかずに。たくさん釣れたので、発泡スチロールに入れてお土産にしました。

 

豆酘みかん狩り

 

もう一つの初冬の味覚と言えば、みかんです。対馬では、最南端の豆酘(つつ)地区でのみミカンの栽培がなされています。豆酘みかんは、ほとんど島外には出回らない、貴重なミカンです。お土産にみかんをたっくさん戴いてきました。

 

龍良山トレッキング

 

そして最後は、原生林トレッキング。対馬には「天道信仰」と呼ばれる山自体をご神体とし、人の出入りや生物の採取を禁じてきた原始的な宗教がありました。その信仰によって守られてきた貴重な照葉樹林を散策しました。

 

 一日中たっぷりと体験プログラムをこなし、お待ちかねの晩御飯。前夜同様それぞれの民泊さんがその時々の旬の食材を使い、工夫を凝らした料理が出されました。アラ鍋やイノシシ鍋、こんにゃく芋からつくったというお手製こんにゃくや手作り田舎豆腐…etc. 本当においしいものは、民泊でしか味わえない!私は常々そう感じています。

 そんなこんなであっという間の3日目、とうとう最終日です。それぞれの民泊に分かれていた一行が再び集まり、体験の共有などをしながら3日間の振り返りをしました。

 

「感動の3日間でした。」

「お家の方の暖かさをすごく感じました。感謝感激です」

「伝統の技が今も生活の中に残っているのを見ることができて、自分の暮らしも見つめなおしました」

「こういう自然と共にある暮らし方もあるんだな、と価値観が変わりました」

 

などなど、嬉しい言葉をたくさんいただきました。

 民泊って、短い時間でものすごく距離が近くなるし、本当に親戚みたいな感覚になるし、その土地に生きる人々の暮らしの本質に入っていく体験ができます。そんな体験には、価値観を変えるほどの衝撃を与えられる力があると思っています。今度は子供たちを受け入れてみたいなー、と次なる野望に胸を膨らませたのでした。

 

お見送り

3日間、こちらこそ楽しい思い出をありがとうございました。また来てください~

 

【お知らせ】

 

対馬のグリーンツーリズム(農林漁家民宿に宿泊しての暮らし体験)に興味がある方は、一般社団法人MITまでご連絡ください。民泊の斡旋、体験プログラムのご相談など、旅のトータルコーディネートをさせていただきます。

 

一般社団法人MIT

URL:http://mit.or.jp/

電話:0920-85-1755

メール:m-kawaguchi@mit.or.jp(グリーンツーリズム担当:川口)

 

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