林業で生計を立てたい人必読! 東日本大震災から生まれた「釜石大槌バークレイズ林業スクール」

2018/04/16

 国が「林業の成長産業化」と言い始め、4年くらい前から「林業って実は儲かるんじゃない?!」「いやいや難しいでしょう」と林業をめぐる議論は盛り上がっていること、ご存じでしょうか。
 それに伴って、「自伐型」と呼ばれる小規模で初期投資が少なく始められる林業のスタイルが注目されたり、林業分野で活動する地域おこし協力隊の導入が進んだり、と地方での新しいライフスタイルのひとつとして注目する人たちも増えてきています。

 

林業のスタイル

 

「地域に魅力的な職場を増やしたい!」 釜石地方森林組合の挑戦

 
 かれこれ2年前「林業ってぶっちゃけどうなの?! ~~まずは5日間現場で学んでみませんか」というマガジンを掲載しましたが、今回はその続編。
 わたしが担当している林業の人材育成事業「釜石大槌バークレイズ林業スクール」の宣伝をしつつ、このスクールを巣立って、岩手の林業界で活躍している人たちをご紹介したいと思います。

 

林業スクール

 

 ちなみに、私自身は東日本大震災のあと、岩手県の沿岸部にある釜石市に移住し、市の復興支援員(通称「釜援隊」)として釜石地方森林組合でいくつかの事業を担当していて、そのひとつがこの人材育成事業です。
 震災後、地域の主要産業が被災し雇用の場の確保が難しい状況の中で、釜石地方森林組合の参事・高橋幸男さんは「林業を若い人たちにとってもっとおもしろい仕事にして、若者の魅力的な職場にしたい」という思いを持っていました。
 人口流出に歯止めをかけると同時に、UターンやIターンにつながれば、との考えでした。その思いが、被災地支援に取り組む英国に本社を置く世界的な金融機関バークレイズグループに伝わり、釜石地方森林組合は運営資金の支援を受けながら人材育成事業に取り組むことになりました。

 

釜石地方森林組合参事の高橋幸男さん
釜石地方森林組合参事の高橋幸男さん=写真右

 
 高橋さんは、

「林業に興味がある一般の方が林業の仕事の導入部分を知ることで、釜石大槌や岩手県内の森林組合や林業会社に就労する、または林業関係の企業や団体を起こすことにつながってほしいとの思いで創設しました」

と振り返ります。

 

アツすぎる講師!内田健一先生の頭と身体を使った授業

 
 年間通じての講師には、岐阜県立森林文化アカデミーでの指導経験もある内田健一先生をお招きし、毎回北海道から通っていただいています。

 

内田健一先生
内田健一先生=右

 

カリキュラムは、
 
<第1回>
座学=林業概要(「世界と日本の林業」、「釜石地方森林組合の取り組み」
ワークショップ=チームビルディングとコミュニケーション

<第2回>
座学&実習=林業現場の作業の安全、刃物・チェーンソーの扱いと目立て

<第3回>
実習&分析=山林の測量

<第4回>
座学&実習=山林の調査・選木

<第5回>
座学=「林業先進地欧州の林業」
振り返り、発表会

 
 内田先生の講義は、座学と実習を織り交ぜた、頭と身体をフルに使ったものです。
 たとえば、「林業現場の作業の安全、刃物・チェーンソーの扱いと目立て」の回では、朝から2時間ほど、山での歩き方や林業労災発生のメカニズム、鉈や鎌などの刃物の構造を座学で学んだ後で、実際に刃物を使って下刈りや枝払いに挑戦します。
 その後、チェーンソーの構造や高性能林業機械(重機)について再び室内で学習してから、実際にチェーンソーを分解して構造を確認したり、自分で丸太を切ってみたりします。

 

チェーンソーの構造

 

 現代の林業は、ハーベスター、プロセッサといった高性能林業機械を使用することが多いですが、これらの機械の根本は木を伐るための刃物だということ。そのため、鉈や鎌といった基本的な刃物やチェーンソーの構造や研ぎ方を知ることで、機械の不具合に直面しても、その原因がどこにあるのか、自分で考え対応することが可能になります。

「刃物をきちんと使えない人間は高性能林業機械も使いこなせない」

これは内田先生、高橋さんに共通する信念。林業へのアツい思いを持った2人がタッグを組んで受講生の指導に当たっています。
 <通年コース><短期集中コース>に加えて、その都度受講者を募集する「オープンセミナー」には広葉樹の専門家や経営コンサルタント、お隣の遠野市で馬搬に取り組む方などをお招きし、毎回盛況です。

 

馬搬に取り組む方

 

スクール終了後、団体を立ち上げる受講生も

 
 初年度の2015年度は月1回釜石に通う<通年コース>を実施。翌年度からは遠方からも通いやすいよう4泊5日の<短期集中コース>も設けました。どちらも定員は10名です。
 <通年コース>は岩手県内を中心に宮城県から通う方も。<短期集中コース>は合宿形式なので、大阪や岐阜、北海道、東京など全国各地から受講者が釜石にやってきます。
 <短期集中コース>を設けたことで、「卒業後は岩手に戻って林業の仕事がしたい」という首都圏の大学に通う岩手県出身の学生も受講してくれるようになりました。
 
 3年間運営する中で、受講後に林業に就く人や林業関係の団体を立ち上げる人も出てきました。その一人が埼玉県出身の三木真冴(しんご)さんです。
 三木さんは震災後、図書館が被災した地域に本を届ける移動図書館の活動を行うNGOのスタッフとして釜石を拠点に大槌町や陸前高田市などで働いていました。

 

埼玉県出身の三木真冴(しんご)

 

 以前は木製遊具を輸入し幼稚園などに設置する会社に勤めていた三木さん。木にはなじみがありました。NGOでの被災地支援活動の後、何をするかと考えたときに、選択肢の一つに浮かんだのが林業だったと言います。
 第2期の<通年コース>を受講後、「東北・広域森林マネジメント機構」というNPO法人を立ち上げ、東北での自伐型林業の普及促進のため、自治体と連携した研修や講習会の運営などを行っています。
 
 三木さんが印象に残ったのはスクールの中でバークレイズグループ社員の経営コンサルタントが木材産業の川上(立木の伐採)から川下(最終加工)までそれぞれの収益を分析した講義だったと言います。
 要約すると「川上の森林組合や林業会社が儲けるのは相当難しい」という内容でしたが、三木さんはどうすれば収益を上げられるかを冷静に考え、「やりようによっては林業には可能性がある」と確信し、団体の立ち上げに参画しました。
 
 ほかにも、岩手県内陸部で働きながら受講し、その後にUターンして林業を始めた男性や岐阜県から受講後、岩手県内の林業団体に就職した男性など、スクールの成果が少しずつ形になってきています。
 第4期の受講生からはどんな人材を輩出できるのか、事務局のわたしも今から楽しみです。

 

この記事を見て興味を持ってくれたみなさん!

 
 <通年コース>は3月30日まで、<短期集中コース>は4月2日~7月6日まで申込受付中です。
 <通年コース>は全額バークレイズグループの支援金を充当するため、参加費は無料、<短期集中コース>は受講料3万1500円+交通費・滞在費です。
 <短期集中コース>では受講生同士が仲良くなって連絡を取り合ったり、<通年コース>では受講生同士がいっしょに間伐作業を始めたり、といった予想外のコミュニティも生まれています。

 岩手県、釜石市にこれまでつながりのなかった方もぜひ「釜石大槌バークレイズ林業スクール」をきっかけに釜石にお越しください!

 

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