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地域おこし協力隊の卒業後、起業するために大事なこと

2018/07/11


 こんにちは。対馬の事務屋です。

 一年ぶりにいなかマガジンのトップページを拝見しましたところ、ページの右側によく読まれている記事コーナーができていて、なぜかシーグラスの記事が上位にランクインしているじゃないですか。2年も前の記事が?集計ミスじゃないかと思いつつ、他の自分の記事を読み返してみたのです。

 奇しくも、今年と同じくトイレが凍結した2年前の記事ですが『とある役所の意見聴取で「いなかの問題は何だと思いますか?」と質問されて「問題があるのは都会の方だと思います」と答えたはなし』なんて、面白いこと書いてたんですね~。自分で書いたとは思えないくらい、要所要所で良いことを言いつつ、面白い写真を差し込んだりしててバランスが良いよね~。こういう記事がランクインしてもらいたいものです。

 良いことを書いたって、読まれなかったら書いてないのと同じですからね。そう考えると、シーグラス以降の記事がランクに入ってこないのは由々しき事態。たいへん遺憾な事であります。

 

 ともあれ、この4年間、記事を書くときに考えていたのは「どうすれば都会の人たちがいなかに引っ越してくるようになるだろう」とか、「『移住』という選択肢が、もっとカジュアルになってもらいたい」ということでした。

 今、移住に際して最もカジュアルな選択肢と言えば、やはり「地域おこし協力隊」ですよねえ。ちょっと前までは「何それ?」と言われていたのに、いつの間にやらそこそこ有名になったこの制度ですが、世間での知名度も上がり、隊員数もずいぶんと増えたようです。

 

 移住だけが目的ならそれでいいのですが、関係者・予備軍・現役隊員にとって悩ましいのは、いかに地域に残り、活動し続けるかという点ではないでしょうか。

 自治体の関係者や地元の人は、(よほど変な隊員じゃなければ)任期終了後も引き続き残ってほしいと思うでしょうし、現役隊員も(よほど変な地域じゃなければ)残りたいと思い、地域おこし協力隊予備軍も、ある程度は定住に繋がる地域で活動したいと思っているのではないかと。

 

 地域に残ろうと思った場合、一番ネックになるのは「仕事」のことでしょう。地域おこし協力隊として働いているとき、観光協会や道の駅のようなところに派遣されている人なら、そのまま同じ組織に再雇用されて働き続けるというの最有力進路ですが、それはちょっとキダリセヨって感じですよね。

 雇用している側の立場で考えると、地域おこし協力隊という制度を使って雇用している場合、人件費は年間200万円、さらに活動費として200万円が国から交付されるわけです。任期終了後はこの人件費と活動費が交付されなくなってしまうので、再雇用すると200万円以上の負担増になりますよね。もちろん、その隊員がそれ以上に稼いでくれるなら問題無いのですが、そうじゃない場合は厳しいことになります。

 

 それどころか、同じ人を再雇用せずに新しい人を隊員を採用すれば、また3年間は200万円+200万円が交付されますから、けっこうな誘惑ですよこれは。とは言え、地域おこし協力隊も超売り手市場になってしまったようなので、新しい隊員が来てくれる保障なんて無いのですが。

 そうじゃなくても、200万円以上稼げる見込みがあるなら、そもそも地域おこし協力隊という制度を使わずに雇用すればいいのであって、この制度を使って働き手を雇用すること自体が、ちょっと持続可能性のあやしい事業なのではないか、などという穿った見方をしてしまったり。

 もちろん、全部が全部そうなってしまう訳ではないのでしょうが、このようなことに陥るのは誰でも思いつくことなので、地域おこし協力隊制度を利用した団体向けの派遣というのは、慎重にならざるを得ないところでしょう。

 

 すると、地域おこし協力隊が地域に残ろうと思ったら、何かしらの事業を立ち上げるのが理想的ですよね。農林漁業の分野で自営する人もいるでしょうし、会社(や法人)を立ち上げてエイエイオーというパターンです。

 でも、普通の人には起業の経験がありませんし、それは自治体で地域おこし協力隊を担当するお役人様だって同じことです。このため、自治体の関係者や現役隊員向けには総務省(の関係団体)が、現役の隊員向けには都道府県等が様々な研修を実施しているようです。

 

 そこで、弊社の看板デザイナー由起子ちゃん(看板というのは看板娘的な意味であって、看板に絵を描くという意味じゃないです)は、研修の講師としてちょくちょく招聘されてるんですよ。年に1回くらいのペースで、いろんなところから呼んでもらえておりまして。

 

看板デザイナー由起子ちゃん

たまに看板も描かせていただいていおります

 

 というわけで、長くなりましたがここまでが今回の前フリ。今回の記事の主題は「なんにもできない由起子ちゃんから何を教わるのか」です。

 弊社の由起子ちゃんは、元地域おこし協力隊で、画家で、今は起業して大活躍しているので、現役の地域おこし協力隊員にとって良い見本のような感じなのでしょう。かっこよく言えばキャリアパス?全国放送のバラエティー番組にも取り上げてもらった有名人ですし。

 

 とりわけ、この地域おこし業界において「絵が描ける人」はとても重要。絵が描ける人がいるのといないのでは、「できること」に格段の違いが出てくるのですが、商売にできるような絵を描ける人はそれほどいないし、都合よくいなかに引っ越してきてくれるとは限らないですものねえ。

 今や地域おこし協力隊を募集すれども集まらない地域が多いようですし、絵が描ける人を募集する自治体でも、どのようなキャリアパスを示せばよいのか考えあぐねている担当者が少なくないようにお見受けしております。

 

 ところで、うちの由起子ちゃん、絵は描けますけれども他には何もできません。どんなに絵が上手でも、それだけで起業しようと思ったら難しいことですよ。

 会社を作るだけなら、手続きを代行してくれる会社にお願いすれば簡単ですし、法務局で教えてもらいながら、ゆっくり手続きを進めることもできるでしょう。でも、「起業=法人設立」ではありません。

 会社を設立したら、税務署とかいろいろな役所でもって手続きを進めなければいけませんし、そのために会社の体制を作って、事業を続ける間はずーーーっと手続きが続きます。すげえ面倒ですし、そもそも何をすればいいのかがよく分かりません。

 しかも、仕事が無かったら事業は続きません。どこかから仕事をもらってきたり、会社として自主的に事業を創り続けなければならないのです。何もせずに都合よく仕事をもらい続けられると思ったら大間違いですよ。

 

 それなのに、なんにもできない由起子ちゃんが、地域おこし協力隊を卒業して4年もの間仕事を続けていられるのは何故なのか。講師として、ぜひとも招聘したい。なかなか良い事例なんじゃないかしらと思われるのも無理はありません。その秘密を知りたいでしょう?

 実は、わたくしも知らなかったのです。由起子ちゃんが講師として何を教えているのか。よもや絵の描き方を教えるわけじゃなかろうし、会社の作り方なんて知らないだろうし、仕事を取ってくるような営業スキームも分かってないはず。もしかして、消しゴムハンコの作り方でも教えてるんじゃなかろうか。

 本人に聞けば答えは分かるのですが、勝手に考えてみました。うふふ。

 

総務省 地域おこし協力隊ステップアップ研修にて

よもやこの人が先生とは思うまい(総務省 地域おこし協力隊ステップアップ研修にて)

 

由起子ちゃんに学ぶ、地域おこし協力隊任期後に起業するコツ その1「仲間を作る」

 

 これが一番大事。要するに、「仕事を取ってくる人」と「諸々の手続きができる人」がいればいいんですよね。これを1人で全部やれる人なら問題ないのですが、めちゃくちゃ絵がうまくて、手続きもできて、仕事も取ってこれるような完璧な人が、年収200万円でいなかに引っ越してきてくれると思います?

 そんな完璧な人なら、地域おこし協力隊なんて経由しないで、自力でデザイン事務所を立ち上げますよねえ。絵描きに限らず、どの分野の人であっても、自力で起業できるくらいなら地域おこし協力隊になんて応募しないのではないかしら。だって、どんなに頑張っても年収200万円程度ですよ?

 

 制度発足当初なら、すげえ優秀なのに応募してくる人が少なからずいたのですが、今や日本中が人手不足。普通の会社に就職すれば、もとい、アルバイトでも年収200万円ってそれほど難しくないですからねえ。応募してくる人の大半は、それほど優秀な人材じゃないと思っておかなければいけませんよ。残念ですが。

 それでも、地元に戻って活動したいとか、いなかの方で暮らしたいという人にとって、地域おこし協力隊が魅力的な制度であることは間違いないですし、迎え入れる自治体としてもお得な制度であることには違いないわけで。

 それならば、何か一芸に秀でた人が何人かいるのなら、それぞれの人が自分の得意分野を活かせるように仲間を集めて、その結果として起業できるのではなかろうか。もちろんそれは地域おこし協力隊に限らず、一般的なベンチャーでも同じことですが。

 ということで、コツその1はなによりもまず、仲間を作ろうぜ!

 

由起子ちゃんが登場する全国バラエティーのDAIGOを観て喜ぶ吉野元

由起子ちゃんが登場する全国バラエティーのDAIGOを観て喜ぶ吉野元(仕事を取ってきてくれる代表兼夫)

 

 

由起子ちゃんに学ぶ、地域おこし協力隊任期後に起業するコツ その2「腕を磨く」

 

 弊社の由起子ちゃんは、本当に絵は上手。とりわけ、写実的な絵がめっぽう上手いのです。

 

ツシマヤマネコのイラスト

紙芝居の絵なので若干デフォルメされてますけれども

 

 イラストも描けます。対馬に住んでいるという強みを活かして、対馬の良いものを詰め込んだ「ふるさと納税返礼品に貼るステッカー」などというものまで作らせてもらっていたり。対馬市から発送される全ての返礼品にこのステッカーが貼ってあるかと思うと胸アツですよねえ。

 

ふるさと納税返礼品に貼るステッカー

何回見てもほっこりするわ~

 

 この手の「写実系」と「かわいいイラスト」は以前から高評価だったんですけど、昨年になって突然新たな引き出しが開いたようで。いや、開いたんじゃなくて自分で頑張って開けたのでしょうけれども。

 

林業のポップなイラスト

急にポップ!

 

 おそらく、2年前までの由起子ちゃんしか知らない人が見たら、誰が描いたか分からないのではないか。それくらい、何かが突き抜けたような新たな画風ですよねえ。

 大きな会社の中でデザイナーとかイラストレーターとして働くならともかく、こういう自己研鑽を続けられない人だと、ベンチャーで仕事を続けるのは厳しいでしょう。

 

 

由起子ちゃんに学ぶ、地域おこし協力隊任期後に起業するコツ その3「特技+1」

 

 これはまったくの受け売りなんですが、ポケモンを創った男としておなじみの田尻智さんが「クリエイターには、得意分野が2つ以上あると良い」と、インタビューで語っていたのです。田尻さんの場合は「幼少のころに昆虫博士だった」ということと、中高生以降は「アーケードゲームのマニア」という2つの事柄で際立っていたのだと。この2つがうまく組み合わさった結果として、ポケットモンスターという名作が生まれたのではないか、と自己分析されていたのでした。

 由起子ちゃんの場合、絵が上手なことと合わせて、動物が好きなようで。とりわけ猫が好き。だから猫の画はひときわ上手で、それがお土産として商品になるんだから立派なもんですよねえ。

 

ヤマネコのイラスト

何回見ても声が出るくらいかわええヤマネコたち(ご購入はコチラ

 

 

 おかしい。この際だからコテンパンに悪口を書き連ねようと思っていたのに、これでは身内の褒めあいみたいで気持ち悪いですねえ。

 念のためにもう一度書いておきますが、由起子ちゃんは「絵が上手」なこと以外に特筆すべき能力は無いと思うのです。「天は二物を与えず」とはよく言ったもので、本当に絵は上手ですが、それ以外に天はなにも与えなかったのだろうなと。たぶん、縄跳びとかできないですし、本当に1ケタの暗算もできないのです。計算ができないなら電卓を使えばいい、と思うアナタは甘いですよ。電卓の使い方が分からないのが由起子ちゃんクオリティ。

 

 でもまあ、電卓も使えないような人でも起業して食っていけるんだから、みんなも頑張れよ!という意味で、最高の講師なのではないでしょうか。なんでもできるスーパー地域おこし協力隊OBみたいな人が講師で登場しても、参加者としては「そりゃーアンタはできるだろうよ」って思いますものねえ。

 その点、由起子ちゃんが見本なら安心。上手いこと仲間を作って、とにかく自分の特技を磨いて、もう一つ何かを見つけよう。そうすれば食うに困らない程度には暮らしていけるはずだと。

 というわけで、そんな由起子ちゃんがお手伝いさせていただいた対馬の野鳥の本が出版されました。

 

由起子ちゃんがお手伝いさせていただいた対馬の野鳥の本

ステキな写真とイラストがたくさん載ってるそうですよ

 

 実はまた実物を拝見していないのですが、鳥の写真は、対馬随一の自然写真家川口誠さんによるものですから美しいことは間違いないでしょう。島内各書店のほか、天下のAmazonにも配本されているとのことですので、謹んでご案内申し上げます。

 

対馬の植物

この名著が手に入るネットショップは弊社だけ!(コチラ

 

 先日発売された、國分英俊先生と愛子さんの共著「対馬の植物」も名作ですので、併せてご案内差し上げます。まえがきに「屋外に出て、植物の名前がわかれば豊かな気持ちになるでしょう。」という一言が添えられていて、対馬に引っ越してきて本当に良かったと思いました。この場を借りてお礼を申し上げます。

 

 それでは皆さん、ごきげんよう。さようなら。

 

 

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