「革人」池田崇物語・その4 ~革細工の修業~

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執筆者 池田崇
所 属革人

2018/08/15

何でも全力で

 

 実はこの時、リゾートホテル内の鉄板焼きレストランでアルバイトをしていた。

 バイクで事故って大阪へ帰り、沖縄へ戻って来たら無職になってしまったから、ある方の紹介で入ったのがこのリゾートホテル内でのアルバイト。とりあえず今を食うための仕事なので、何でもよかった。

 

革人看板づくり

 

 週5日、15時から23時まで働き、部屋に帰ってきてから朝方まで革細工作りに没頭した。休みの日には革教室に行ったり、機械や道具を調べたり、他の革屋さんへ偵察に行ったりもした。

 何事もとにかく一生懸命にやることが大事と思っているから、このレストランの仕事も全力でやった。どうすればよりお客様に楽しい時間を過ごしてもらえるかの工夫。

 そのひとつが、お客様が座るテーブルの鉄板を常にピカピカに磨いておくこと。お客様が鉄板付のテーブルに着くと、オーダーを取り料理を運ぶシステムなのだが、おいしい物やいい雰囲気を味わおうと高いお金を払って座るテーブルの鉄板が汚れていては絶対にアカンと考え、常に鉄板はピカピカの状態でお客様を迎え入れようと思った。

 専用のタワシで力を込めてごしごしと擦る。隅々まで顔が映るくらいにピカピカに仕上げてから、お客様を迎える。いつも汗だくになりながら鉄板を磨きまくった。

 

 同じレストラン内には、多数の大学生もアルバイトをしていた。野球部の子が多かった。

 彼らにも鉄板をピカピカに磨くように指示をした。そんな権限はないのに(笑)。

 いつしかみんなから『鉄板王子』と呼ばれるようになった。早稲田実業の斎藤佑樹がハンカチ王子と呼ばれていたから、それにあやかった形で。

 鉄板を磨くメリットはもうひとつあった。バイクで骨折した鎖骨と衰えた筋肉を鍛えるには、鉄板磨きは最高のリハビリになった。それを『鉄板エクササイズ』と呼んだ(笑)。

 ちょうどビリーズ・ブートキャンプが流行っていたから、またそれにあやかった形で。

 

革ぞうりづくり

 

 お客様に喜んでもらう事にも手は抜かなかった。

 運んできた野菜を鉄板の上で福笑いのように顔の形に並べて笑いを取るパフォーマンスや、なるべくお客様と会話をし、楽しんでもらえるように工夫をした。

 自分が沖縄に来て受けたカルチャーショックや沖縄あるあるなどの話をした。あと、キレイで人が少ない穴場ビーチや、地元のうまい沖縄そば屋を紹介したり、ガイドブックには載ってなさそうなディープな情報を話すと、お客様はめちゃめちゃ喜んでくれる。

 お客様が喜んでくれると、俺も嬉しかった。これこそがサービス業の原点やなと思った。

 

革細工道具

 

革細工の修業

 

 それから何度も革教室へ通い材料や道具を買い、一日中革の事を考え、何か良いアイデアはないかと探し続け、毎日寝る間も惜しんで製作に励んだ。

 地元の友達やこっちで知り合った人達に、作った革の作品を配りまわった。ときには仲良くなったお客様にも。基本的にタダで渡した。

 材料費や道具、作る手間など全部自腹でコストはかかるが、いっぱい作って腕を磨きたかったし、自分が作った物がどう評価されるのかが知りたかった。

 商品を渡す際に、必ず約束をしてもらう。使ってみてどうか、感想を言ってもらう事。+良かったら良いと、悪かったらどこがどう悪いかを言ってもらう約束。また、気付いたことも正直に言ってもらう。

 革などの材料と労力を掛けてでも、タダで配る目的は3つ。

 

1.  作品に対する評価を知る

2.  大量に作って腕を磨く

3.  名前を売る

 

 いろんな人にいろんな物をを作って渡して感想を聞いた。それを参考にまた色々作って。ブレスレットや小銭入れなど延べ300個ぐらい作って配りまくった。

 常になんか良いネタはないか?と、寝ても覚めても革細工の事を考えていた。

 他の人の真似をしたくない、沖縄の素材を使って俺にしかできない商品を生み出したい。誰かの真似をしてるようでは、商売を安定させることは出来ない。

 そこで思いついたのが、沖縄三味線『三線』に使われているニシキヘビの皮を使って小物を作るという発想。

 財布・小銭入れ・ブレスレットなどカッコイイ作品が作れ始め、手応えを感じたので出店するための物件を探し始めた。

 

「革人オープン」へ つづく

 

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