和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたことを受け、国内はもとより、海外でも“SAKE”としてますます人気の高まる日本酒。司牡丹酒造株式会社は、高知県・佐川町で400年も昔に起源を持ち、長い間日本酒を作り続けてきました。さらに、日本酒にとって最高の名誉となる全国新酒鑑評会の最高位・金賞受賞回数が通算25回という品質を誇り、全国にファンを増やし続けています。
そんな司牡丹酒造がインターンシッププログラムをスタート。歴史ある蔵における日本酒作りの貴重な現場を余すところなく体験できます。
司牡丹酒造の歴史は、慶長5年(西暦1600年)、関ヶ原の合戦の頃まで遡ります。合戦後に土佐の佐川一万石(現在の佐川町)を預かった深尾和泉守重良は、酒を作る”御酒屋”を伴い同地へ。以来、佐川町には伝統的な酒造りの手法が根付き、日本一の水質と名高い「仁淀川」水系の水や気候も相まって、酒造が盛んになります。そして大正7年、佐川地域の酒造家が集まり、興したのが現在の司牡丹なのです。
酒蔵自体も、古いものでは江戸時代に建てられたものが残っており、ここで日々、酒が作られています。
なお、日本酒の品質は、杜氏(とうじ/酒蔵の最高責任者)および蔵人(くらびと/酒蔵の醸造職人)の酒造りへの思いと細やかな品質管理体制に支えられています。今回は、司牡丹で2004年より杜氏を務める浅野さんより、司牡丹についてお話を伺いました。
「お酒を作る時期は、冬がいちばんいいんです。そのため、インターンの受入期間は10月から3月まで。冬に作るのを”寒造り”っていうんですけど、ずーっとそれにこだわってやってます。本来の日本酒づくりの姿に僕はしたいと思っていて。冬は、お酒づくりの条件がすべて揃ってるんですね。
まず、お米。その年の新米を使ってお酒を作るのがもともとの形。お米がとれてからの時間が長くなると、どんどん古米になっていき、状態が変わってしまうんです。また、寒いと空中にいる微生物も少ないし、繁殖もしにくいですよね
仕事の流れとしては、10月から機械や道具の準備を始めて、そこから順次、仕込みに入ります。絞りの工程が始まるのがだいたい11月くらい。そこからフル稼働となる感じですね。3月には仕込みは終わって、絞りは続いている状態。絞りながら、片付けをしていって、終了となります」
この半年間で、9000リットル入りのタンクに110本ほどの酒を仕込むというから驚きです!
続いて、日本酒の製造工程を教えていただきました。
■米の洗い
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■浸水
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■蒸し
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■麹(こうじ)作り
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■酒母作り
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■醪(もろみ)作り
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■絞り
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■火入れ
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■貯蔵
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■瓶詰め
このなかで、どの工程においてもベースとなるのが徹底的な掃除と機械や道具の洗浄です。
酒は発酵食品のひとつ。菌をコントロールすることが味の決め手になります。酒蔵というと、大きな木の樽が並び、その中の酒を木の板でかき混ぜる光景が浮かんできますが、現在の司牡丹ではほとんどの工程が機械化されていました。
「作業はなるべく機械化しているけれど、作りは手づくりです。日本酒を作るのは、無菌室ではなく、開放発酵という環境。外の不要な菌が入る可能性も高い環境ですが、いちばん汚いのって…人間なんです(笑)。人間の手がたくさん触れるほど、雑菌が入る危険性が高くなる。だから蔵人には必ず作業前に手を洗ったり、作業着等に着替えたりしてもらいます。
どうしても必要なところ以外では、なるべく人が触れないために、機械化を進めています。そうすることによって、今のお酒ってものすごくキレイになってるんです。もし雑菌が入って、”オフフレーバー”というお酒本来のもの以外の匂いが付くと、それだけですぐ分かるくらい。専門家がお酒をきくと、すぐに、そういう香りがするね、どこかが汚染されてるね、と分かってしまいます。ワインにも、ブショネというコルクに生えてしまうカビの匂いがありますが、日本酒でも麹カビ以外のカビの匂いは”オフフレーバー”となる。それはNGなんです。
機械化が進んだことで、日本酒は昔と較べて品質がものすごく上がっています。オフフレーバーをなるべく付けないで、お酒が本来持っている、いい香りや味をそのまま残していくっていうことが重視されるようになってきているんです。
それをするには、できるだけ清潔に、きれいな環境で作らないといけない。かといって無菌室で作ると、それはもうお酒じゃないんで。そこまでやっちゃうと逆に、今度はおもしろくないんですよ。ある程度は外の微生物が入ったりとか、目には見えない菌の”蔵グセ”っていうものがあるので。そこは活かしながらも、人間が持ち込む雑菌はナシにしたいねってことなんです」
また、蔵には「蔵内親和」という言葉が掲げられていました。
「”和醸良酒”とも言いますが、酒造りには”和”が大事ということです。杜氏と、あるいは蔵人同士で、コミュニケーションが取れること、チームワークが大切ですね」
「あとは、お酒に愛がある人を歓迎します。これは手前味噌ですけど、日本酒の評価の基準である全国新酒鑑評会への入賞が、最近では常連になってきています。鑑評会には二種類のお酒を出していて、去年・今年と続けて二種類とも金賞を受賞しました。
実はお酒って、アルコールを添加して作るものがほとんど。お米だけで作る純米酒で鑑評会に出してもなかなか通らないんです。鑑評会で金賞になるのは、ほとんどがアルコールを加えて軽くしたお酒。うちも出品した二種のうち、一方はアルコール酒で、もう一方が純米酒。
今年の出品数は854点で、金賞を受賞したのは227点。そのなかでも、純米酒は全国で16社しか金賞をもらってないんです。さらに、2年連続純米酒で金賞を取っているところは司牡丹を含めて5社ほど。そうした評価から見て、客観的にも全国屈指の優良醸造家といえると思います(笑)。そういうお酒を作ってるんだ、って誇りを持ってやってもらえたらいいな、と思います」
大学卒業以来、一貫して酒造に携わってきた浅野さん自身ももちろん、お酒愛に溢れる人。各工程のほんの少しの違いが、味に決定的な違いをもたらすので、入社から28年経つ今も毎日が探究心を持って仕事に臨んでいるそうです。酒への熱い思いを胸に、探究をともに楽しみたい”酒愛”のある人。ぜひ司牡丹で生の現場を体感してください。
司牡丹の近くにはサンプラザという大型スーパーがあり、日常の買い物には不自由しません(なかには本屋さんも入っていますよ)。また冒頭に記したように城下町の面影を残す佐川町では、旧商家や寺院、資料館、坂本龍馬脱藩の道など幕末の歴史に触れられるスポットがたくさん。歴史好きの人には堪えられないことでしょう。アウトドア好きの人は、虚空蔵山や白水の滝、長谷渓谷、不動ガ岩屋洞窟遺跡などへどうぞ。
食に関しては、うなぎの老舗「大正軒」や、古民家で絶品の手打ちうどんを味わえる「とがの藤家」、そして地元の牛乳・「地乳」が佐川町のイチオシ。休日は、高知市内までJRで約1時間10分、特急なら約30分。車でも1時間ほどなので、気軽に遊びに行けますよ。