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いなか仕掛人

小豆島町地域おこし協力隊
真鍋 邦大

真鍋邦大

中学生と大学生が出会い気づきあう寺子屋

取組紹介

都会の若者が島の子どもに勉強を教える「ティーチングツアー」

 ティーチングツアーは、「小豆島の人に逢い、暮らしに触れ、産業を知ると共に、中学生の勉強のお手伝いをしよう!」という呼びかけのもと、教育や地域活性に関心のある志しの高い都会に暮らす若者が、月に1度(夏休みは毎週)、日帰りもしくは1泊2日で島を訪れ、寺子屋教室を開催し、島の中学生に勉強を教えるという学習支援ツアーです。
 島には大手の塾や予備校はなく、高校以上の高等教育機関もないため、卒業後は殆どの若者が島を出ます。2013年3月には239名の高校生が島の高校を卒業し、島に残ったのは僅か15名。そのため島には20代、30代の人口が極めて少ない状況です。この状況から、中高生が具体的な大人像をイメージすることができません。
 また、小豆島は近年移住者が増えてきていますが、子育て環境の良さを求めて移住した方は、自然に近い暮らしには満足しているものの、子どもが年齢を重ねるごとに教育環境に不安を抱くと仰られます。
 そこで始まったのがこのツアーです。都会に暮らす志ある若者が島を訪れ、中学・高校生に直接的な学習指導を行いながら、普段簡単には触れ合うことのできない都会の若者と交流することで、感性を刺激し、やる気が喚起されることを期待します。
 さらに期待しているのは、夢を諦めない大人になることです。例えば、「看護師や医者になりたい」という夢を持っていても、「島じゃ塾に通えないから私にはなれない」と島を理由に諦めていた子どもが、ティーチングツアーで訪れた医学部の学生に出会い学ぶ機会を得ることで、身近な存在となり、「私にもできるかも」と思い、がんばれるようになることが起こせるのではないか。実際、島に訪れている若者は、偏差値の高い大学や学部に通っている大学生が多くいます。そんな大学生が、中・高生にとって、「夢を実現させた身近な大人」という存在に映るのではないか。そこから将来、「島に戻りたいけれど、仕事がないから戻れない」と小さい頃から刷り込まれどこか諦めていた思考を「島に戻れるかもしれない」と思う思考に変えることができるのではないか、と考えこのツアーは行われています。
 2012年度から始まったティーチングツアーは2年間で21回開催され、延べ106名の学生や若手社会人が関西を中心に、遠くは青森県から小豆島を訪れています。

小豆島町地域おこし協力隊

 

ココがスゴイ!

地方と都市部に暮らす者がお互い持っているものを分かち合う仕組み

 都市部から地方へ、地方から都市部へ、「教える」と「教えられる」、「与える」と「与えられる」というような一方通行のサービスやモノの提供ではなく、お互いが持っているものが交換され、その結果、島の子どもたちと若者が双方に学び合い、気づくきっかけを提供し、人材育成がされるツアーになっています。
 子どもたちは、島にはいないような若い世代で、かつ、志を持って夢に向かって動いている若者から勉強を教えてもらうということを通して刺激を受けています。島外から来る若者は、純粋な子どもたちから普段にはない刺激を受けることに加えて、ガイドブックにあるような観光地・景勝地を訪れるのではなく、島を支える食品産業の担い手を訪問し、島で暮らす人たちと食卓を囲むことで、普通の観光ツアーでは味わえない本来の島の暮らしを体感することができ、価値観の見直しに繋がっています。
 目に見える現象としては、子どもたちと若者が、その後もソーシャルメディアを通じて交流を続けるなど新しい関係性が生まれていたり、中学生3年生向けの寺子屋教室に、昨年の経験者、つまり現在の高校1年生が自主的に参加するなど、学習に対する意欲の高まりが見えてきたりしています。
 このように、ティーチングツアーというきっかけによって、人の行き来だけに留まらない、相互の価値観の交流が行われ、次世代育成につながる仕組みになっていると捉えられます。

移住にまでつながる波及効果

 講師として参加した学生の中から卒業論文のテーマとして小豆島を取り上げたり、実際に島に移住してくる若者も、2012年度に1名、2013年度1名と現れています。島の中学生の学力向上、教育環境の改善を第一義の目的として始めた事業ですが、教えに来る若者たちに島の人たちと触れ合える時間を多く設けたことによって、都会にはない島の暮らしの豊かさを実感し、純粋な島の子どもたちとの交流は若者にとっても新鮮で、生き方や働き方を改めて考えるきっかけとなっています。町行政からの評価も高く、町単独予算として、次年度も事業継続されるような取り組みになっています。

小豆島町地域おこし協力隊

 

困りごと

島に訪れ子どもたちに勉強を教える大学生の確保

 毎月の参加する大学生を安定的に確保していくことが最大の課題です。その課題を解決すべく、事業開始当初から離島教育や地域活性をテーマとする大学の研究室との連携を模索しています。今後の展開としては、勉強分野のみならず、スポーツや音楽など、あらゆる分野で島の中学生と島外の若者が交流の機会を持てるように取り組んでいく予定です。

観光客ピーク時の宿泊場所の確保

 宿泊を伴う参加者の滞在施設の確保も時に問題となり、観光客がピークを迎える夏から秋にかけては宿泊先の確保が難航することがあります。町の遊休施設を活用することも検討中です。

小豆島町地域おこし協力隊

本ページは、平成25年度 地域をフィールドとした産業人材受入のための環境整備のあり方に関する調査事業(実施:四国経済産業局)において調査した時点のデータを活用して作成したものです。