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島根県・雲南市役所
移住支援コーディネーター 酒井 聖文

酒井 聖文

自治体が移住支援コーディネーターを設置する

取組紹介

移住後のサポートと情報発信のための「移住支援コーディネーター」

 雲南市では、UIターン施策として①定住推進員制度、②空き家活用、③地域との協働による定住推進、という3つの柱をおいて、様々施策が行われています。これまで3名の定住推進員が専属スタッフとして設置されており、空き家のコーディネートや定住相談の対応を行い、2005年~2013年11月までの間で、231世帯、596人がサポートを受け移住してきました。しかし、定住推進員は、空き家のコーディネートというようなハード面のサポートが多く、移住者の移住後のサポートをすることや、全国の田舎暮らしに関心がある方への情報発信というソフト面が十分でないことから、それらを取り組む役割を担って2012年5月から「移住支援コーディネーター」が設置されました。
 コーディネーターは、単年度契約で委託され、週3日・月12日程度仕事に従事することになっています。コーディネーターの酒井さんは、Iターンで3年前に雲南にやってきた移住者で、年齢も20代であるため、20代~30代くらいの若い世代の相談対応を中心に行います。市としても、子育て世代や地域住民と一緒になって雲南で何かしたい!という若者に積極的に来てほしいと考えることから、その役割を酒井さんが担います。また、Iターン同士のネットワーク化を図ることで、地域の中で自発的な動きを促したり、孤立してしまわないようにサポートを行います。

幸雲南塾 ~地域プロデューサー育成講座~

 雲南市は、次世代を担う人材の育成を目的に、雲南の地域資源を活用した起業プランや地域活性化プランの実現を目指す若者を掘り起こし、プラン実現に向けた企画・実践をサポートする塾を2011年からスタートしました。
 塾は、半年間のプログラムで月1回土曜日を使い、全6回で開催され、地域課題の解決や地域資源の活用を議論し、アクションしながら、起業や地域活性化のマイプランを作り上げ、最終報告会で成果として発表します。
 特徴としては、雲南市以外の参加を認め、地元出身の参加者と混ざるように県内外へ積極的に参加者募集を行っていること。講師として、世代の近い先輩起業家や県内の起業家をコーディネートしているということ。ねらいを、行政として、産業施策でも、地域づくり施策でもないニュートラルなところに置き、多様なジャンルの若者が集まるようにし、塾のプロセスの中で若者のネットワーク化を図るということ。などがあげられます。
 これまで3年間実施され、のべ36名の修了生が生まれており、OBOGのネットワークが生まれています。

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ココがスゴイ!

移住させて終わりではないサポート体制

 定住推進員が3名配置されていることに加えて、移住支援コーディネーターがさらに設置されており、移住者を積極的に受け入れるという窓口ではなく、移住した移住者のサポートやネットワーク化に力を入れているところがスゴイ!多くの自治体では、サポートが必要だと思っていても、なかなか手を回せないところではないでしょうか。 しかし、移住者が、若ければ若いほど、価値観などの世代間ギャップがある、社会経験が少ない、経済的に自立したばかり、メンタル的には十分自律できていない、などということがあるため、その後のケアは必要です。そのケアを受け入れた地域コミュニティの中で担うことができれば、若者の力は十分活かすことができるはずですが、それができない場合は、若者の力が活かされぬまま「最近の若者はダメだ」「あの子は能力がない」という声があがり、若者も受け入れた側もお互い不幸な結果となります。そんな移住者の移住後のサポート役として、コーディネーターが設置されることは地域にとってとても価値があることだと言えます。

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若者と地域の活動を支援するネットワークを行政がサポート

 前述した「幸雲南塾」に参加したOBOGやUターン・Iターンした若者、地域の事業者がつながり、若者と地域の活動を支援する団体「おっちラボ」(「おっちら」とは出雲弁で「ゆっくりと」という意味)が、2013年4月に立ち上がり、2014年3月にNPO法人化されます。ここには、移住支援コーディネーターである酒井さんも加わっており、若者ネットワークの核ができつつあります。おっちラボでは、人材育成、人材誘致、キャリア教育など移住促進にもつながるような様々事業を実施していく予定です。このような動きを、行政側も、地域の新しい協働の担い手として捉えており、一緒に事業を実施していくことで、お互いサポートし合う仕組みをつくろうとしています。このような、官民一体となった取り組みが、若者や若者のネットワークを育てることにつながるのではないでしょうか。

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困りごと

NPOとして自主財源を確保していかなければいけない

「おっちラボ」では行政と連携した取り組みを行っていきますが、行政事業ばかりに頼ることなく、民間事業者として自立的な運営をしていかなければいけないと考えています。そのために、事業開発をしていかないといけませんが、「幸雲南塾」を運営側で関わった経験を活かし、そのノウハウを他地域へ移転することができると考えています。そうした取り組みを行いながら、外貨を獲得し、自主財源を稼いでいきたいと考えています。

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本ページは、平成25年度 地域をフィールドとした産業人材受入のための環境整備のあり方に関する調査事業(実施:四国経済産業局)において調査した時点のデータを活用して作成したものです。