下川町森林組合
代表理事組合長 山下 邦廣
人財をキープする受け入れ窓口
取組紹介
人材の登録制度「人材エントリー」で人材を確保
森林組合では、トドマツ・カラマツなどが多い森林の管理事業をはじめとして、木炭小径木、集成材、林業体験、トドマツ精油など活動を展開し、森林を余すところなく活用するゼロエミッションシステムが構築され、年商約10億円を上回る地域産業となっています。
1991年に集成材加工施設ができたころから、新たな事業展開には人材が欠かせないということで、人材募集を地元や北海道内に限るのではなく、Iターンを含め広く募集するようになり、移住者が来始めました。1996年には、森林・林業体験ツアーを実施し、関東圏から32名の参加があり、その内、2、3名が移住するという結果も生まれ、5年間で100名余る参加者がありました。
2000年から、ホームページを活用した「人材エントリー」
の登録制度が始まり、北海道で森林に関わる仕事がしたい人が登録しています。雇用条件などを示した求人票をWeb上に常に公開しており、それを見てエントリーしたい人が登録するしくみになっており、常に、20人くらいが求人待ちの状態になっています。森林組合で求人を出すときには、この登録者の中から声をかけ、履歴書を送ってもらって面接するという流れになっています。そして、年に1回登録継続確認は行っているということなので、この登録制度によって、常に森林組合で働きたいという人材のストックができている仕組みになっています。
このように森林組合では、積極的にU・Iターン人材を活用しており、2011年4月現在で、総職員・従業員数64人の内、Uターン9人、Iターン29人、地元新卒者5人、合計43人となっており、59.4%がU・Iターン者であるという状況になっています。
「環境未来都市しもかわ」町全体の取り組み
森林組合の取り組み以外でも、町全体が森林を活用した先駆的な様々な取り組みを行っています。
公共温泉「五味温泉」、幼児センター、育苗施設、役場周辺施設、高齢者複合施設など、全公共施設の熱エネルギーの約42%が木質バイオマスとなっていること。パートナー企業と組んだカーボンオフセット事業を実施していること。3歳児から高校卒業まで、全学年に対して森林環境教育プログラムを授業に組み込んで実施し、それをNPOがコーディネートしていること。高齢化率52.6%の衰退集落に、超高齢化対応・エネルギー自給・集落対策の集住化モデルエリアを開発し、高齢者から若者まで世帯が入居し新しいコミュニティがつくられていること。NPOが森林・林業体験ツアー等のプログラム受入を継続的に行っていること。地域間交流施設「もりのなかヨックル」という宿泊施設が設置されNPOが運営し5年間で54.1%増と利用率が高まっていること。など、町全体で森林を活用した事業展開が行われています。
ココがスゴイ!
先輩移住者が後輩移住者を指導する人材育成の仕組み
人材確保に苦労する地方の一次産業に携わる事業者が多い中、前述したとおり「人材エントリー」によって窓口で人材をストックして人材確保を容易にしており、そこから採用された人材は、すでに受け入れられ森林組合の戦力として働いている先輩移住者が指導する流れができており、新しい人材の受入れや人材育成について特段の苦労はないという。
20年以上前から、Uターン・Iターンというような外部人材を受け入れ、地域の人材として活用してきた積み重ねが現れています。現在、移住促進で力を入れて取り組んでいる地域は、よそ者をどう受け入れ、地域産業の担い手として育てていけるか、地域の力が試されているが、このような先進的に取り組んできた地域の背中を見ながら、長期的な視点に立った気長な取り組み方が必要なのではないでしょうか。
町全体で各組織・団体が役割分担して環境未来都市を実現
「環境未来都市しもかわ」というしっかりとした「考え方」「方向性」を地域の中で共有し、戦略的に取り組みが町全体で展開されています。そして、それぞれの取り組みを町行政だけで担うのではなく、森林組合をはじめ、NPO、観光協会、事業協同組合、商工会、農協、開発振興公社など地域の組織が主体となって必要な取り組みを動かしています。
このように地域の組織がうまく連携することができれば、相乗効果を生み、観光客の誘客、移住定住の促進、産業振興、雇用の拡大などの実現を可能にするのではないかと思います。まず、地域の中で地域づくりに対する想いを共有するところから始め、「うちの地域は○○を目指そう!」と「考え方」「方向性」が定まれば、下川で言えば「森林」というような地域にあるモノを活用し、地域内の組織で役割分担し、事業展開するというような地域戦略を立ててみてはどうでしょうか。
困りごと
取り組みの見せ方・伝え方が悪く、情報発信力が弱い
先進地域として取り組みはすばらしいと評価されているが、その取り組みの見せ方が悪いために、外に向けてうまく伝えきれていないことが課題です。今後は、移住定住促進に関わるような取り組みも含め、情報発信をしていかなければいけないと感じでいます。
身の丈にあった人口規模を目指した取り組みを
1万人、2万人というような急激な人口増加を求めているのではなく、4000人~4500人くらいの人口規模が下川にとって最適だと思うので、そこを目指した身の丈にあった住宅施策や、エネルギーの100%自給を目指すという中で電気が安く買えるようにするとか、この地域はほとんど災害のない地域なので、そういったリスクがなく安心して暮らせるというような、ここに住んでるからこそ享受できる取り組みを行い、住んでいる人がここに住んでよかったと思い、ここで死にたいと思える地域にしていきたいと思います。