NPO法人てごねっと石見
三浦 大紀
ビジネスプランコンテストで人財誘致・発掘
取組紹介
人財を誘致・発掘するための「Go-Con -江津市ビジネスプランコンテスト-」
「帰って来れる島根をつくる」ということを目指し、ビジネスプランのコンテストという手法を使い、挑戦意欲のある若者・UIターン希望者を発掘・誘致することにつなげているのが江津市の取り組みです。
江津市では、定住対策の一つとして「空き家バンク」の取り組みが行われていましたが、リーマンショック以降、住むところとして「空き家」は紹介できても、雇用減少により働くところとしての「仕事」がなかなか紹介できないという課題がありました。そこで、働く場を創り出すことのできる人材を誘致したらいいのではないかということで、2010年から毎年1回、江津市の事業としてビジネスプランコンテストが行われるようになり、これまで4回開催されています。
過疎地域の課題解決につながるようなソーシャルビジネスやコミュニティビジネスにつながる事業を募集し、2010年は25名、2011年は23名、2012年は13名、2013年は11名の応募がありました。初回のコンテスト終了後、受賞者を継続的に支援していく仕組みが必要ではないかということで、地元の経営者や商店街マネージャー、地元小中学校の校長や、県立大学のキャリア課、産業人材育成コーディネーターといった教育者、さらに行政の産業振興や定住担当の職員が関わり、中間支援機関である「NPO法人 てごねっと石見」という組織がつくられるに至っています。以降、2011年からは、てごねっと石見が市から委託を受ける形で、事業実施されるようになっています。
子どもたちのキャリア教育から商店街支援まで
てごねっと石見は、地域の中の中間支援機関として、創業支援をするビジネスプランコンテストだけでなく様々な取り組みを行っています。人材育成を行っていくためには子どものころからということで小学生向けのロボット教室を実施したり、中学・高校生向けにキャリア教育の講演会をひらいたりインターンシップ受け入れ、企業のコンサルティングやビジネスマッチングの支援を行ったり、事務所がある商店街を使ったイベントを実施したり、商店街の青年部と空き店舗を借り「52bar」を週末実施したりして、商店街の中で取り組みを行っていく中で、1年半の間に13店舗も空き店舗が埋まり、若者が事業を始めたりするというような、相乗効果が生まれています。今まで地域の中になかった、中間的な役割をてごねっと石見が担うことによって地域が事業展開を始めています。
ココがスゴイ!
挑戦意欲のある若者・UIターンを地域全体でサポート
ビジネスプランコンテストは、人材誘致・発掘の入り口としての取り組みであり、あくまでも地域に「働く場」をつくることをねらいにした創業支援の取り組みであるので、そこが見失われることなく、コンテスト後のサポート環境をどう整えていくかをしっかり考えられ、地域全体が連携をして支援する仕組みができています。具体的には、てごねっと石見を媒介としながら、信用金庫が融資や事業計画の指導をし、商工会議所や商工会が経営支援を行い、青年会議所は地元経営者の紹介やビジネスマッチングを行い、江津市行政も支援制度や支援機関を紹介したり、移住支援を行うなど、地域の中の支援機関が挑戦する若者をサポートします。
さらに、年間を通した取り組みとして、隔月で異業種交流会「う・まいんど」の開催、毎月誰でも参加できるビジネスを生み出す「BU活」、コンテスト前募集起業・創業の基本と応用を学ぶ「ごうつ塾」など開催し、ビジネスプランコンテスト受賞者のその後のサポートや、これから応募しようとする人のサポートなどを丁寧に行っています。
民間と行政がつくった第3セクターとしてのNPO
行政施策の中で生まれたビジネスプランコンテストから展開し、行政と民間が連携して地域全体で挑戦意欲のある若者を応援したり、地域課題解決に向けた取り組みを実施する主体のNPOとして「てごねっと石見」が立ち上げられています。このことは一見、行政主導のように見えますが、行政がきっかけをつくったものの、行政主導ではなく、理事会のメンバー構成から見ても地域の中の多様な主体が関わっており、名前だけ名を連ねているわけではなく、地域の中で志を持った方がしっかり関わり、民間側も行政と同じだけの温度感を持った組織運営が行われています。
てごねっと石見の各事業に関わるスタッフとしても、三浦さんをはじめビジネスプランコンテストに入賞した人材がてごねっと石見のスタッフの中心をになっており実務を行っています。しかし、てごねっと石見の存在を大切に思い関わり続けるという意志を持ちながらも、そこに依存することなく、それぞれが自立する意志を持って関わっています。このことは、実際は行政事業を担うことが多いNPOとなるものの、そこに依存し続けることなく、民間としての健全な運営ができるNPOとなるための大切なポイントではないかと思います。
困りごと
賞をとれなかった方へのフォローを考えたい
ビジネスプランコンテストについて、最近、応募者減少の傾向が見えてきています。(3回目以降、収支計画書などの提出を必須としたことも影響していると考えられます。ただし、プランの実現可能性は飛躍的にあがりました。)そこへのてこ入れとして、挑戦する意欲はあったものの、賞をとれなかった方へのフォローをすることで、そういう人が創業するきっかけをつくっていけたらいいのではないかと考えています。また、ビジネスプランコンテストの実施主体を今後、地域の支援専門機関へ委ねていくことも検討しており、そうすることで、応募者の層が広がることも期待しています。
てごねっと石見のスタッフ人材が入れ替わる
現在、てごねっと石見の実働的運営をになっているスタッフが独立していくことにより、次年度入れ替わりがおこります。組織へ関わらなくなるということではなく、雇用形態が変わるということなのですが、このようなことはてごねっと石見の組織形態として今後も起こっていくことなので、ノウハウを個人に依存させるのではなく、組織に蓄積させていけるような運営体制をしっかりとつくってくことが必要です。