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いなか仕掛人

株式会社いろどり
インターンシップ事業担当 粟飯原 啓吾

粟飯原 啓吾

行政との連携で町全体が取り組むインターンシップ

取組紹介

葉っぱビジネスから人材育成へ

 株式会社いろどりは、上勝町が出資をする第3セクターで、1987年から始まった彩事業によって、年商2億6000万円という規模の地域企業として成長しています。全国からの注目を浴びることで、視察対応や研修依頼が増え、人材育成に関わる取り組みが行われてきました。
 これまで「緑のふるさと協力隊」や「ワーキングホリデー」、「田舎で働き隊」といった交流事業や厚生労働省事業の基金訓練など人材研修事業の受入が行われ、2010年から約2年間、内閣府事業で「地域密着型インターンシップ研修」という1ヶ月地域ビジネスを学びたいという若者を受け入れるインターンシップ事業を実施しました。このときの参加者は、のべ236名でその内、20名が上勝町へ移住し、今も定住しています。
 当初のねらいとしては、いろどり農家さんの後継者をつくることが一番の目的として掲げられていますが、町に色々な人がたくさん入ってきてもらい、その中で化学反応が起こることも期待されていました。

いろどりインターンシップ

 インターンシップ事業の実績が評価され、上勝町の単独予算で委託事業として2012年から継続的に実施するようになりました。「いろどり農家の後継者育成」という目的は変わりませんが、それだけになるとハードルが高まることもあり、上勝町を好きになってもらう「ファンづくり」を一番に意識するように取り組み始めています。
 そして、学生の受け入れに重点を置くようにし、参加者の6割以上が学生となっています。新卒後3年以内の離職率が高い現状をふまえると、学生時代のインターン経験で上勝町のことがすごく好きになっていれば、上勝町に帰ってくる選択肢も生まれるかもしれない。卒業後すぐに移住ということは期待せず、これからの移住者予備軍を増やすことに重点を置いています。
 これまで受け入れをしたことのあるところは50~60軒。主要な受け入れ先としては10数軒です。一時期は受け入れ先の開拓もしていましたが、期間が短く慣れないということもあり、今は決まった受け入れ先が中心です。
 インターンの期間は1週間~1ヶ月です。期間内に、つまもの農家、すだち農家、晩茶農家、農家民宿、ゼロ・ウェイスト・アカデミー、地域のイベント協力や地域おこし協力隊に同行するなど、多岐に渡る活動に参加してもらいます。例外として、いろどり番茶生産組合で2ヶ月間、製造から販売までを体験してもらったインターンもありました。1週間のインターンの場合、パッケージで参加してもらいますが、長期インターンの場合は、最初の一週間をパッケージで、その後は本人の希望を聞きながら調整します。
 2012年度の参加者はのべ84名。2013年度の参加者はのべ101名(2月現在)となっており、これまで町に訪れた若者の総数は400名を超える数に上っています。

https://inaka-pipe.net/intern/kamimatsu_internship/

株式会社いろどり

 

ココがスゴイ!

行政と民間が連携するインターンシップ

 「いろどり農家さんの後継者育成」を掲げながらも、まず町のファンを増やしながら、長期的な視点に立って町全体で、行政と民間が連携して人材育成に取り組んでいくという戦略があり、その上でインターンシップ事業が組み立てられ展開していることが注目すべきところです。
 行政と連携することで、参加者は参加するための費用負担が少なく参加でき、コーディネート業務もしっかり行うことができます。参加期間も比較的自由に選ぶことができ、気軽に参加しやすいプログラムとなっています。結果として、年間100名を超える数の参加者が町に訪れることにつながっています。

「葉っぱビジネス」の注目度がインターンシップの情報発信力につながっている

 本来事業である「葉っぱビジネス」で注目されていることもあり、マスメディアへの露出も多いため、発信力が大きくサイト訪問件数は一日3000件、多いときには4000~6000件のときもあります。インターンシップの募集はホームページへ掲載したり、ブログの更新を毎日行うことや、チラシを配布しているくらいですが、参加受け入れ人数は400名を超えるようになりました。
 ブログは、こまめに毎日更新して、インターンがいるときには、活動内容をできるだけ詳しく紹介してもらうように意識しています。人が来てくれる流れさえできてくれば次のステップに進めるので、発信力があることは大きな力になります。

株式会社いろどり

 

困りごと

インターンシップの取り組みを地域の中でもっと広めたい

 受け入れ先が限られているので、町の人たちの全員が理解をしているわけではないという課題があります。解決のためには、インターンを送りこむ側が地域により深く関わっていく必要があります。
 例えば、青年会の夏祭りにインターン生を送り込んだことがありました。祭りが終わった後、様子を見に行くと、居心地悪そうにぽつんと座っていて、あまり仕事をふってもらえなかったようなインターンの姿がありました。コーディネーター自身が、夏祭りの運営に関われておらず、祭りを理解し、地域の人たちに説明することもできていなかった結果でした。
 今後は、自分から先陣を切って、地域とのつながりをもっと深めていかないといけないと強く思っています。町のいたるところにインターンがいて、町の人全員が応援してくれる体制を目指していきたいと思っています。

基金の終了とインターン事業の連携強化

 過去に参加した大学生がリピーターで来てくれたり、修了生の紹介で来てくれたりすることも多いです。これからは、全国にいる修了生とのつながりをどう活かしていくかが課題です。
 今はフェイスブックのグループページで交流したり、“いろどり”にちなんで、手書きの四季の便りを送ったりしています。そして2013年の秋には、修了生が集うイベントを初めて実施しました。そのつながりで、全国で上勝町インターンOBOGのコミュニティを作ったり、学生時代にインターンを経て社会人になったような人と事業で連携できたら一つの成果だと思います。

株式会社いろどり

本ページは、平成25年度 地域をフィールドとした産業人材受入のための環境整備のあり方に関する調査事業(実施:四国経済産業局)において調査した時点のデータを活用して作成したものです。