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いなか仕掛人

株式会社 巡の環
代表取締役 阿部 裕志

阿部 裕志

生産現場をフィールドとした企業研修

取組紹介

「地域交流」×「企業研修」、感性にアプローチする「海士五感塾」

 巡の環が主催する研修プログラムに『海士五感塾』があり、大手企業の労働組合などを中心に企業の人材研修プログラムとして活用されています。
 このプログラムは、五感を通じた体験や、農業・漁業の生産現場で志を持って活動している方と参加者が想いを語り合うことで、感じる力、気づく力を高め、学び上手になることを目指すプログラムです。例えば、「都会」からやってきたビジネスパーソンが、「田舎」の定置網漁船のリーダーから「親方」の生き様のリアリティに触れることで、肩書きや立場を超えて人間と人間がぶつかる、学び合いが起こります。地域にとっても、日常が都会から来た参加者の学びになることが面白いと評価されており、海士町と都会に新しい交流の形を作っているようです。

株式会社 巡の環

地域課題解決の実践者を育てる「めぐりカレッジ」

 『めぐりカレッジ』は、巡の環がこれまでに培ったノウハウ、考え方をもとに“地域課題を解決するために地域内外の関係者と協力関係を築き、一緒に未来へ向かう橋渡しをおこなう人材”=「地域コーディネーター」を養成するプログラムです。入門編では、2泊3日の合宿形式で地域での活動の土台となる、いわば汎用的な姿勢や考え方を学び、中級編では、地域での活動を実践する参加者が、自らの活動を実践しながら、半年間にわたってカウンセリングやアドバイスを受けたり、陥りがちな失敗パターンをケースメソッドから学ぶことができます。

株式会社 巡の環

 

ココがスゴイ!

人的地域資源を活用したプログラムと企業人材へのアプローチ

 企業研修を海士町で行うにあたっての強みは、理論の学びではなく、実際に地域の中で経験を積んできた実践者と対話するからこそのリアリティがあることです。参加者は、実践者を前にして、自分の凝り固まった感情を揺さぶられ、もう一度自分を見つめ直し、自分の行動を変えたり、他者への敬意を高めるような学びになっています。
 この研修プログラムの価値を、企業という組織へ持ち込み、企業と連携した人材育成プログラムとしてサービスを提供し、その価値に見合った対価を頂きながら、ビジネスとしても成り立たせ、継続的にサービス提供できるような仕組みができています。そして、労働組合などからの依頼が多く、毎年約10件程度の企業や労働組合、大学の研修の受入を行い、自主企画で10件程度の個人参加の研修プログラムを行っています。平成25年度の実績としては、こういった研修プログラムにのべ300人ほどの方が参加されています。

学びの次元を上げるしくみ

 『海士五感塾』などの研修プログラムを、ただの体験で終わらせないように、学びのレベルを上げるべく、知見を体系化しています。一例として、スタッフの役割分担では必ず「リーダー」・「サポーター」・「スパイス」の役を明確にするそうです。「リーダー」とは関わる人すべてが満足することに責任を持つ役割、「サポーター」とはロジステックなどスムーズに進行することに責任を持つ役割、そして「スパイス」とは、学びを深めることに責任を持つ役割です。特に、「スパイス」の役割を取り入れて、参加者側の目線からの言動や、問いを発する「スパイス」役を設定することが重要なのだそうです。

海士ファンを定住に導くアプローチ

 巡の環では、海士町のファンを階層に分けて、戦略的にアプローチし、顧客であり、また仲間となっていく「海士ファン」を増やし、大切にしています。まず、海士町を知らない人には島外で海士町を知ってもらいます(全国で海士町の魅力を伝え食材を囲む1日限定のAMAカフェを開催。平成25年度には講演なども含めて約4000人に海士町をPRしている)。海士町を知ってもらった人には、次に海士町にツアー等の参加者として来てもらいます。さらに海士町に1度来たことがある人には、定期的に海士町に来る更なるファンになって貰うべく、サービスを作る側になってもらうのです。その先、定住に繋がるかどうかは、巡の環のスタッフがそうであったように、島内に一緒に未来を作ろうと思える仲間がいるかどうか、であるということです。

株式会社 巡の環

 

困りごと

間近に控える海士町のキーマンの引退による戦力ダウン

 海士町では、現町長をはじめとする行政、民間、一次産業を担うキーマンの多くが高齢による健康不安や、現役引退・定年を控えており、5年後には町として大幅な戦力ダウンが予想されています。後継者が現在のフロントランナーに成り代わり、攻めの姿勢を続けられるかどうか、新しい動きを生み出し続ける仕組みづくりをどうするかが課題となっています。

いなかだからこそ人材派遣で雇用が生まれる可能性(海士町観光協会『マルチワーカー』の試み)

 海士町観光協会が試みている『マルチワーカー』というしくみは、海士町の実態に即したユニークな雇用創出事例です。これは、特定人材派遣のしくみを活用し、観光協会が派遣元として人材を雇用して、人手が必要な事業者(派遣先)に派遣するものです。背景には、いなかの仕事の多くは季節労働で、単独では通年雇用が難しいものの、仕事を組み合わせれば、年間を通して雇用枠が確保できる事情があります。この取り組みは、繁忙期の人手を確保したい地域事業者と年間を通して仕事を求める移住者の双方のニーズに応える可能性があります。
 現在、このしくみで1名が雇用されており、春は岩牡蠣の出荷、夏は宿泊業、秋は海産物の冷凍処理、冬はナマコの出荷と、まさにマルチな業務に従事しています。派遣法を取り巻く議論は、都会目線で考える労働実態のみが前提となっていますが、いなかの実態に即した雇用創出策として、いなか目線からも特定人材派遣のスキームを評価できるのではないでしょうか。

株式会社 巡の環

本ページは、平成25年度 地域をフィールドとした産業人材受入のための環境整備のあり方に関する調査事業(実施:四国経済産業局)において調査した時点のデータを活用して作成したものです。