NPO法人院内活性化協議会
代表理事 安部 博
民間ボランティアが空き家をつなぐ
取組紹介
民間ボランティアの空き家コーディネート
会長である安部さんは、院内出身ですが、故郷を離れ、30年間は人口過密の横浜に暮らし、50年ぶりの2005年に過疎化した院内にUターンしてきました。戦後は約12,000人の人口がいた院内は、現在では約4000人の地域となっており、空き家も多くありました。
そこで、「故郷を何とかしたい!」と思い、「空き家に灯りがともればまちが変わるのではないか」と、多くあった空き家の持ち主を探し、交渉しつつ、借り手を探すという取り組みを2007年から協議会を立ち上げ始め、2008年に法人化されました。
宇佐市には空き家が約5000戸(2013年12月現在)あるといわれており、その内約1200戸は、協議会で把握されており、これまでの空き家コーディネートは、106戸・世帯を超え、227人の転入者があります。世代もバラバラで、20代3世帯(4人)、30代18世帯(47人)、40代16世帯(36人)、50代27世帯(53人)、60代35世帯(69人)、70代7世帯(18人)となっています。
「農事組合法人 院内」もつくり休耕地を活用
NPOとは別組織として、農事組合法人を立ち上げ、休耕地を活用して、援農ボランティアを募集し、耕作地の整備や、石橋の保全、イベントの開催を行ったり、「休日農業しませんか?」という触れ込みで、農園主も募集しています。また、地域の豆腐屋さんから出るおからを使った商品開発や、農産物の加工品開発なども行い、NPOと農事組合法人の両輪で、活動を成り立たせていく仕組みをつくっています。
ココがスゴイ!
行政から頼られる民間空き家コーディネーター
全国で多く行われている空き家対策の取り組みは、行政主導で行われている場合が多いですが、院内の場合は、民間ボランティアからスタートしています。
そのやり方も地道で、地域の中にある空き家を、近所の方からの情報を元に、持ち主を探し、直接電話をかけ交渉するそうです。10軒に1軒の確率で、貸し出せるようになるそうです。そして、借り手募集のやり方は、活動を始めた当初は、チラシをつくり、宇佐からより近い大都市の小倉へ行き、駅前で5000枚くらいのチラシを巻いたり、団地に配ったり、新聞の副読紙に広告を掲載するなどして、募集をしたそうです。1回のチラシ巻きから、3件~5件くらいの反応があり、そこから下見に来てもらう人が現れたということです。
この地道な取り組みから、移住者が増え始めており、その移住した人が、地域の活動に参加し始め、170戸の地区に15戸が移住者世帯という割合になってくると、地域に結構な影響を及ぼすようになり、地域の人たちからも、NPOへの信頼が高まり、空き家があれば情報を提供してくれるという関係が築かれていったそうです。
このような取り組みから、移住希望者からの問合せが行政へあった場合でも、情報を持っているNPOに取り次がれる状況が生まれており、さらに、宇佐市全体へ活動を広げてほしいという行政からの意向で、委託事業を受託するようになるという展開が起こっています。
困りごと
後継者がいない空き家が出始めている
地域の高齢者が亡くなり、親戚が葬式に誰も帰って来ず、大きな家が誰もいない、持ち主もいない空き家になってしまうことがでてきています。この事例は、区長、隣の世話役、NPOが話し合い、3者・共同で管理しようということになりましたが、今後はこのような空き家が増えてくる可能性があります。また、他地域で、空き家が管理されないことによって、崩れた納屋の下敷きになって人が亡くなる事故も起きていることから、このような空き家の管理体制を地域の中でどのように仕組みをつくっていくか考えていく必要があります。
活動からお金を生み出すことを考えていく
空き家のコーディネートから、収益を得るということがなかなかできない状況があります。家主の好意で、家賃をNPOに寄付して頂くこともありますが、それだけでは運営していくことが難しい。今後は、農事組合法人との連携しての商品開発や、古民家をNPOで借り、拠点をつくり、体験施設をつくっていくというような収益事業を行う仕組みをつくっていこうとしています。