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株式会社みんなの家
代表取締役管理人 井口 元

井口 元

シェアハウスから地域課題解決を進める地域づくり

取組紹介

Iターン専用シェアハウス「みんなの家」

 2013年1月にオープンし、2014年2月現在は住人4人と管理人である井口さんの5人で共同生活を送っているシェアハウスです。井口さんを含め住人はみんなIターン。部屋はそれぞれに個室があり、最大6人まで入居可能で、8畳×4部屋の大広間もあります。別棟にはカラオケルームとして使われていた建物を改装したコワーキングスペースや、倉庫、庭がついた広い家で、住人が暮らすだけでなく、イベントや交流会、ワークショップなど全国各地から人が集う場所となっています。オープン以来、1年間で延べ1000人以上の人が出入りするような地域に開かれたシェアハウスです。
 このシェアハウスは、Iターンで丹波に来たいという若者を受け入れる「住居」ですが、住人がそれぞれの仕事をしながらも「地域に溶け込み、地域が抱える課題を解決していく」ということに賛同する人だけが入居できます。入居のための面接等もあり、シェアハウス「みんなの家」の考え方に合う人が集い、共同生活を送る家となります。
 また、シェアハウスに住める期間は、丹波で独立(起業等)し、新たに自身が住まう家が見つかるまでの間(約1年)と決まっており、新しい住人希望者が現れると、最も長く住んでいる住人は出て行くことになっています。つまり、Iターンで来た若者が、丹波に家を見つけて定住するまでの間、みんなの家に定住するのではなく地域との関係性をつくるまでの期間暮らす家として、このシェアハウスが役割を担っています。
 みんなの家のオーナーである前川進介さん(㈱みんなの村代表取締役村長)は2009年に家業を継ぐため丹波にUターンし、会社を経営していましたが、13年ぶりに帰った故郷は過疎化が進み、地域課題が多く散見されるようになっていました。そこで前川さんは、地域のみんなが喜ぶような、地域の課題解決につながるような事業も展開していこうと考えました。
 また地域課題を解決するにあたっては、自分1人の偏った考えではなく、「よそ者・若者・バカ者」という自分とは異なる価値を見出せる人と一緒に進めていくべきだと考え、イベントで出会った井口さんに「丹波にIターンとして挑戦しに来ないか」と声をかけました。
 そして、井口さんのように丹波の地域課題を一緒に解決してくれる人材をより多く受け入れるためは、専用の場所が必要だと考え、空き家になっていた一軒家を購入し、そこを地域課題を多く解決していくIターン専用シェアハウス「みんなの家」として運用が始まりました。

株式会社みんなの家

毎月開催する経営塾「中岡塾」

 みんなの家では、丹波市近郊の若手経営者が経営力を上げるため、毎月経営塾を開催しています。この塾には、会社経営に必用な様々な専門的知識を勉強するための、誰でも参加できる「勉強会」と、経営学修了資格MBAを取得している講師が、塾生の行う事業にアドバイスをしたり、塾生同士がアドバイスし合い、実践に活かしていくための塾生限定参加の「実践会」があります。これらの会には、みんなの家の住人は、無料でオブザーバーとして参加でき、自立していくための経営ノウハウを身に着けていけるとともに、挑戦できる仲間をつくり、地域課題解決型ビジネスの起業に向けた士気を高める機会となっています。
 また、塾生には、中小企業庁の専門家派遣事業に登録されている専門家や、公認会計士、弁護士などの士業、製造業、農業など多様な業種の経営者が参加しており、ビジネスマッチングの場にもなっています。

ココがスゴイ!

3ヶ月に1回、新しい若者が住み始める

 シェアハウスを始めるからといって、すぐに住人が見つかりそうにありませんが、この「みんなの家」では、公募することもなく、人のつながりで、住人が見つかっています。偶然にも、この1年間で3ヶ月に1回のペースで、新しい住人が現れているということのようです。2014年春には、さらにあと4名の移住希望者がいるそうです。面白いことをやっている人たちのところには、面白い人が集まる。類は友を呼ぶ、という慣用句ではないですが、それをまさに体現している事例と言えるのではないでしょうか。
 シェアハウスと周辺地域の人々がつながっている証として、勝手に口コミで広がり、移住したい人と、住む家を提供できる地域の受け入れ側が出会い、マッチングされているのだと思います。

1年間で6ヶ所のシェアハウスが生まれる

 「みんなの家」の動きに触発されてか、シェアハウスをやろうという人が増え、現在、丹波市内に6ヶ所のシェアハウスが広がっているそうです。それぞれのシェアハウスには特徴があり、デザインなどクリエイティブなことをやっている住人が集まるシェアハウス、農業に関心のある住人が集まるシェアハウス、など個性が現れています。こうして、シェアハウスを核として、地域の中に能力・ノウハウを持った人間が集い、既存の地域住民とのつながりも持ちながら、地域に溶け込んでいき、既存のコミュニティを刺激しながら、新しいコミュニティを再構築していくことが実現できているように思います。また、シェアハウスをきっかけとして、新しい暮らし方を提案しつつ、新しいコミュニティづくりや、地域づくりのあり方が提案されているような気がします。

株式会社みんなの家

 

困りごと

シェアハウスとして情報発信しにくい

 消防法や建築関連条例、借地借家法などに違反していると一部メディアで騒がれたこともあり、悪いことをしているような見られ方をするため、情報発信しにくい状況があります。しかし、地域の中にシェアハウスが広がってきていることもあり、それぞれ他のシェアハウスのオーナーや住人と連携をとりながら、情報発信をし、丹波に若者が集う流れをつくっていきたい。

入居希望者多数のため家が手狭になってきた

 みんなの家には最大6人まで住むことができますが、入居希望の方や、丹波への移住希望者が絶えず、全てを受け入れることができない状況になっています。丹波市が抱える空き家問題の解決策という面でも、近い将来に2軒目の「みんなの家」として活用できる空き家を捜していきます。

株式会社みんなの家

本ページは、平成25年度 地域をフィールドとした産業人材受入のための環境整備のあり方に関する調査事業(実施:四国経済産業局)において調査した時点のデータを活用して作成したものです。