事務屋こそ、いなかを目指そう!の巻

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執筆者 冨永健
所 属一般社団法人MIT

2014/08/11

 

 こんにちは。対馬のいなかベンチャー、一般社団法人MITで事務局長をしております、冨永と申します。いなかマガジンに記事を書けるなんて、光栄の極み、ありがたいことです。

 

ササクラレオ

レオさん、ありがとうございます!

 

足ツボマッサージ

対馬にて、島おこし協働隊のHさん(写真右)に痛めつけ歓迎されるササクラレオさん。

 

 対馬に引っ越してきて、1年が経ちました。それまでは東京の霞が関というところで働いていたので、大都会からド田舎への移住だったのです。なので、「なーんでこんな田舎に引っ越してきたね?」とか「何にもないところでつまらんやろう?」とか「もう東京に帰りたくなった?」などなど、移住体験者なら誰もが何百回と問われてきたであろう質問を、わたくしも日々浴びせられています。

 

対馬の海

確かに、ファミレスとか牛丼屋とか映画館はありません。

 

 移住者が100人いれば100通りの移住理由があったり、その地域に感じる魅力があって、帰りたいかどうかも人それぞれだと思います。今回は、いなかマガジンを読んでいる移住予備軍の方や、地域おこし業界ウォッチャーの方に向けて、わたくしが移住に至った経緯等についてお話したいと考えております。どうぞよろしく。

 

 

 さて、移住の経緯を一言で表現すると、「ミイラ取りがミイラになった」ということだと思うのです。冒頭に書いたように、移住前は霞が関で働いていて、最後の勤務先が「離島振興課」という部署でした。離島振興課では、新しい補助金の制度設計を担当していて、離島への定住促進や交流促進といった事業を推し進めていたんですね。簡単に説明すると、「定住促進」というのは、離島から引っ越していく人を減らしつつ、離島へ引っ越してくる人を増やすことで、「交流促進」というのは、離島への旅行等を通じて離島ファンになってもらうことです。

 新しい制度を作るためには全国での取り組み事例を調べなければなりませんので、行ける限り出張にも行き、東京で離島のイベントがあれば顔を出したりして徐々に理解を深めていったものでした。

 

 それはそうと、読者の皆さんは「アイランダー」というイベントをご存知でしょうか。毎年11月下旬に池袋で開催されていて、離島への移住や都市と離島の交流をテーマとしたイベントなのですが、2012年のアイランダーはわたくしが主担当だったのです。懐かしい。

 このアイランダーを機に、全国の離島から有象無象の面白い人たちが東京に結集して、あれこれ面白いことをやっているので、読者のみなさんも今年のアイランダーにはぜひとも参加していただきたいものです。

 

 ちかまる君

シカの頭蓋骨を見て、恐れ慄くちかまる君。アイランダー2013の対馬ブースにて

 

 さてさて、2012年のアイランダーは主担当だったということもあり、全国の楽しい人たち(主にUIターン者)とお話する機会が多く、すっかり離島ファンに染まってしまったのでした。そして、漠然とではありますが、いつか離島に移住したいと思うようになり、「いつか」と言っているといつまでたっても進まないので「3年以内に」と期限を決め、「いくつかの離島に下見に行って考えよう」と決めたのが2012年12月@奄美大島でした。(奄美もとても良いところですが、四季がはっきりしたところに住みたいと思っていたので移住対象外となりました。が、今は対馬の冬の寒さに凍えております。風が強くて寒いのです。)

 

 そして運命の2013年2月中旬のことでした。3月中旬に開催する「島ぐらし体験ツアー」の募集があったのです。場所は対馬。先進的な取り組みが目立っていて移住候補地のひとつではありますが、離島としては規模が大きい(佐渡島、奄美大島に次ぐ3番目の大きさ)ため、正直なところ「押さえ程度」の候補でしたが、担当の前田さんとアイランダーで知り合ったという縁もあり、2泊3日のツアーに参加することにしたのでした。

 

前田さん

主犯格の前田さん(写真下)と、その手先(写真上)

 

 ところで、普通の人はどこかに移住したいと思っても、すぐには移住しません。その理由は人によってさまざまだと思うのですが、大きく3つの理由があると思うのです。すなわち、「家族の事情(子供の学校、配偶者の反対など)」「田舎に受け入れてもらえるか分からない(田舎って排他的じゃないかしら)」「仕事がない(もしくは今の仕事から離れられない)」が3大理由ではないかと。妻子のいないわたくしにとって、1つ目の理由は関係ありませんでしたが、2つ目、3つ目の理由をクリアする必要がありました。

 

 2つ目の理由「排他的?」は、対馬の体験ツアーに参加した際、「ここなら移住してきても受け入れてもらえるだろう」と思い、クリアになりました。2泊とも宿泊先は民泊だった上に、2件とも前田さん(Iターン者)とは旧知の仲らしく、それはもう親子同然の会話が繰り広げられているのを目の当たりにし、対馬の皆さんの間口の広さというか、懐の深さに感銘を受けたものでした。対馬は太古の昔から大陸との交流窓口だったり、対馬周辺の豊かな漁場を目指して本土からも寄港する漁船があったらしいので、ヨソ者への対応が和やかなのかもしれない、と憶測しております。

 

 そしてこの体験ツアーでは、対馬市で活躍していた「島おこし協働隊(地域おこし協力隊)」のうちの2人が、任期終了後も島に残るために会社を設立したという話も聞くことができました。その2人はいなかマガジンにも執筆した川口松野なのですが、川口は学者で松野は画家です。「学者と画家」という組み合わせは意外と最強(学者が考えたことを一般人にも分かりやすく絵にすることができる)ですが、会社を回すことができるのだろうか?給料を計算したり社会保険とか労働保険の手続きをしたり、決算をまとめて税の申告をして、、、その他もろもろの雑用をどうするのだろうかと、少し不思議に感じたものでした。

 

対馬市CATVより

人の良いご婦人役でおなじみの学者(左)と、民生委員役でおなじみの画家(右)。つしまる通信@対馬市CATVより。

 

 そんなことを考えていた帰りの船の中で、その会社って事務職しかできない公務員の転職先として、ちょうど良いのではないかと思いついたのでした。

 東京に帰ってすぐ、前田さんに相談メールを送ったことろ「いいですねー」との好感触があり、川口+松野にも「仲間に入れてちょうだい」とメールしたところ「いいよー」との返事をもらい、3つめの「仕事がない」という問題をクリアし、トントン拍子に移住が決まりました。「3年以内に」と心に決めたら、「3ヶ月」で移住決定。やはり、期限を決めるというのは、移住の重要な第一歩です。

 

 移住を決めたのが3月下旬ということで、退職の方が難しい時期でしたが、関係各位にご理解いただき、仕事の目途も立った6月上旬に退職とあいなりました。

 

 実際に移住してきてみると、設立して間もないベンチャーの収入だけで食って行けるのか?と心配していただけて、対州馬保存会の事務局でも働かせていただいています。

 

対州馬

島内に33頭しかいません。貴重な日本在来馬の対州馬をどうぞよろしくお願いします。

 

 

 事務しかできない公務員の転職先として、「いなか」って案外良い選択肢ですよ。

 例えば、最近はいろいろな手続きがインターネットやコンビニで済ませられますが、いなかにはコンビニが無かったり(役場より遠い!)、高齢化が進んでいて、パソコンもインターネットも使っていない人がたくさんいます。その上、役場の窓口では申請書を書かなければいけないし、毎年のように制度が変わるし、手続きがすごく面倒なのです。小さい文字は読みづらいし、字を書くにも不自由なお年寄りも少なくありません。そもそも役場の窓口まで行くための車を持っていなかったり。これって行政書士の出番ですよね~。

 あと、いなかと言えば「空き家」がたくさんありますが、不動産屋さんが少なく、家の貸し借りは口コミで仲介されています。ここはやはり宅地建物取引主任者の出番じゃないでしょうか。

 他にも、過疎地域を対象とした補助金や助成金は数多くありますが、みんなの意見をまとめて事業費を積算して申請書を書いて、、、という手続きは、元公務員の出番ですよ。

 

 前職の職場の窓から

前職の職場の窓から。撮影時刻が朝5時なので、きっと徹夜待機明けですね。

 

現職の職場の窓から

現職の職場の窓から。窓というか、縁側からの眺めなのですが。

 

 

 さー都会の公務員諸君。役所を辞めていなかに引っ越して、事務職で食っていこう!

 収入は半分以下(例えば80%減)になっちゃうけど、住居費が格安(例えば1万円)になるから大丈夫。外食したくても飲食店がほとんど無いから、出費も少なくて健康的な食生活になりますし。

 

 野菜は近所の人にもらえます。庭の畑で育てればなお良し。

 魚は近所の漁師さんが分けてくれます。自分で釣ればなお良し。

 肉は知り合いの猟師さんが仕留めたやつを捌かせてくれます。自分で撃てばなお良し。

 

 対馬に引っ越してきて1年が経ちますが、毎日が本当に面白いのです。もちろん、楽しいことばかりではなく、大変なこともいろいろあるのですが、それも含めて面白いのですよ。

 

投網でアユ

田舎の公務員は、投網でアユを捕まえてくれます。

 

アユ

そのアユが、あっという間に炭火焼きに。美味し。

 

 役場まで軽トラックで海岸道路を走っていると、途中でイルカの群れを眺められたり。アフターファイブに釣りに行けば、目の前にウミガメが現れたり。

 

海カメ

漁港で泳ぐウミガメさん。

 

 なにしろ、毎日が驚きの連続です。

 満員電車で通勤したり、台風でもびくともしない頑丈なビルで働くより、自然の猛威に恐れおののきながらも、イルカやウミガメの近くで暮らす方が、心穏やかだと思いませんか。自然が好きで、毎週のように島(とか海とか山)へ遊びに行く人がいますが、毎週行くのって面倒じゃないですか。

 退職の報告をしたとき、当時の上司から「島は遊びに行くには良いところだけど、住むのは大変だぞ。」と言われたものでした。もし、この記事を読んでもらえていたら、是非お伝えしたいです。「都会は遊びに行くには良いところですが、住むのは大変ですよね。」と。

 

それではみなさん、アイランダー2014@対馬ブースでお会いしましょう!

 

 

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