みまき自然の学校夏合宿
2012/08/09
僕が主催するみまき自然の学校は、
宇和島市御槇(みまき)地区の自然をフィールドに、
就学前の子供たち自然の中で遊ばせている。
今は月に1回の活動だが、
行く行くは週3日くらいの活動にできればと思っている。
大きな話だけれど、
社会を良くする方法の1つとして、
自分より立派な子を育てることが出来れば、
社会が少しでも良くなるんじゃないかと思う。
子育ては、
人として出来る最も身近で効果のある社会貢献だと思う。
ちなみに、
“立派な子”という表現はあまりしっくり来ないけど、
他に表現する言葉が思いつかないので便宜上その言葉になった。
(“優れた子?”…“出来る子?”…。どれもしっくりこないし…。)
さて、
そんなこともあって、
このみまき自然の学校は、
僕が田舎に来てやりたかったことの1つだ。
そもそも田舎暮らしを始めた理由の半分くらいは、
「子供を自然の中で育ててあげたい」
という考えが占めている。
きっと都市部に住みながら、
僕と同じように、
「自然の中で子供を育てたい」
と思っている人は、
いっぱいいるはずだ。
でも日本中、田舎はいっぱいあるけれど、
縁もゆかりもない田舎の未知の自然に、
いきなり飛び込んで子供を遊ばせられるほど、
みんなそんなにワイルドではないと思う。
田舎で子供を遊ばせたいけど、
どこで遊ばせたらいいのかわからない人は結構多いことだろう。
それに、
“いなか”といっても、
『田畑が多く人家の少ない、静かでへんぴなところ』
という意味の、日本の地方に行ったどこにでもある“いなか”ではなく、
『ふるさと。じいちゃんの住んでいるところ』
という意味の、
『僕が夏休みに帰るべきところ』としての、
“いなか”を持つ子が少なくなっている。
過疎化で田舎の人口が減るということは、
都市部に住んでいる子供にとっての、
帰るべき『ぼくのいなか』が減っているということに他ならない。
今後どんどん『ぼくのいなか』を持っている子は少なくなるのだ。
逆に、田舎の方から考えてみると、
御槇には自然があって、
子供たちを受け入れられる受け皿があるのだから、
都市部の子供たちを受け入れてあげることが出来れば、
きっと喜んでもらえるに違いない。
むしろ御槇には自然があるけれど、
宇和島近辺には自然育児に関する潮流がない。
全くないわけではないけれど、
そういうことに興味のある人の絶対数が少ない。
やはりそういう意識を持っている人は都市部の方が多く、
自然育児に関する情報も、
他の多くの情報と同じく田舎まではなかなか降りて来ない。
都市部から自然育児に興味のある人を御槇に呼び込み、
お互いに交流を深めることは出来ないだろうか…?
あわよくば、御槇のことを気に入って住んでもらえたらいいな。
なんて思ってみたり…。
そんなことをいろいろ考えて一念発起して企画したのが、
『みまき自然の学校 夏合宿』だ。
前置きが長くなったけれど、
そんなわけで7月28日(土)~30日(月)の2泊3日で、
『みまき自然の学校の夏合宿』を開催した。
普段は地元宇和島の子供たちを対象に、
ほそぼそと活動しているみまき自然の学校だが、
今回の合宿はちょっと違う☆
ちゃんとチラシも作って、
自然育児の全国紙「クーヨン」に募集広告を載せて貰ったり、
高知のタウン情報紙の「ほっとこうち」にも掲載して貰ったり、
NPO法人自然育児友の会に情報発信を頼んだり、
とにかく情報を幅広く発信して、
遠方からの参加者を募った。
僕たちにとって初めての試みということもあり、
4組限定のモニターツアーということにして、
参加費も実費負担分のみに設定した。
チラシも刷ってこれだけ大々的に広報したにも関わらず、
近隣からしか参加者がなかったらどうしようかと、
内心ドキドキしていたが、
蓋を開けてみると嬉しい結果になっていた。
参加者は「東京」「鎌倉」「松山」「高知」「高松」と、
幅広く遠方から集まった。
4組限定と言いながら、
開催2週間前に問い合わせのあった家族も、
勢いで受け入れてしまったから、
全部で5組になってしまった。
こうなれば来るものは拒まずである。
それにプラスして、
いつもの地元のメンバーも2家族参加して、
合計7家族での合宿となった。
応援で来てくれたサポートスタッフを含めると、
合計30人を超える大所帯である。
参加したメンバーの属性も割と似通っていて、
青空自主保育の本場、鎌倉で子供を自主保育に通わせていた方や、
自然育児に興味のある方。
キャンプ好きなご家族。
森のようちえんに興味のあるご家族などなど、
こちらが参加してもらいたいと思っていたような方々が集まった。
初日。
初めて顔を合わせたメンバーは、
オープニングミーティングで自己紹介などをし、
まず最初に合宿中の寝床となるテントを張る作業にかかった。
今回の合宿はキャンプなので、
テント張りから食事の準備まで、
参加者自身に動いてもらうことが結構多かった。
宿泊施設がない御槇で泊まる手段として考えた苦肉の策が、
牧場の草原を利用してのキャンプだ。
普段は牧場なので当然キャンプなど出来ないが、
一緒にみまき自然の学校の運営をしているメンバーの牧場だから、
この日は特別にキャンプを許可してもらった。
きっと、どこの田舎でも出来る体験というわけではないだろう。
ないものはないけど、御槇にしかない良さがある。
テントの下には干し草を敷いた。
これも、全員分のマットを購入する費用がないから、
経費節減の苦肉の策としての〝干し草マット“だ。
これが意外に気持ち良くて、
干し草の香りに包まれて眠ることが出来た。
子供たちにとっても干し草の香りの中で眠るという体験は、
きっと人生で初めてだっただろう。
欲を言えば、もっとちゃんと干し草を平らに均しておけば良かった…。
(均しが甘くてデコボコ感が…。)
6歳に満たない子供たちも、
子供たちなりにテント張りを手伝ってくれる。
干し草だって広げられるし、
ペグだって打ち込める。
なんなら打ち込み過ぎて抜けなくなるぐらいだ。
「あれを手伝え」「これを手伝え」と大人が言わなくても、
子供は本来興味のあることは自らお手伝いをしてくれるのだ。
テントを張り終わったら汗を流しに祓川(はらいがわ)温泉へ。
集落の中に温泉があるのも御槇の良いところだ。
ただちょっと施設が小さいのが難点なので、
夕方の混む時間に30人の団体は送り込めない。
大混雑を引き起こしてしまう。
仕方なしに夕飯前の15時から温泉に入るという、
やや無理やりなスケジュールになってしまったので、
ここは今後の改善点である。
温泉の後はみんなで協力して夕食をつくる。
メニューは、
・薪で炊くかまど飯。
・地元宇和島特有の麦みそを使った味噌汁。
・御槇の豆腐屋さんのお豆腐で冷奴。
・宇和島の郷土料理『鯛そうめん』。
子供たちも一緒に作るので、
そんなに手の込んだメニューではないけれど、
地元のお豆腐や郷土料理も提供できた。
みまき自然の学校では食事にも気を使っていて、
ご飯は地元御槇の『御槇米』を3分搗きにしたものを使った。
味噌は市内で無添加の麦みそを作っている井伊商店の麦みそ。
調味料は食品添加物無添加のものに統一した。
調味料を無添加の本物にするだけで、
実は料理の味は格段と美味しくなる。
化学調味料無添加のものを常に食べていると、
そのうち化学調味料の味が分かるようになってくる。
いかに自分の味覚が鈍っていたかと思わされるわけだが、
子供たちには、
化学調味料の味を美味しいと思う味覚で育たないように、
本物の味で育ててあげたいと思う。
料理だって子供たちは夢中でやってくれる。
飽きちゃう子は途中で飽きちゃうけど、
幼児用包丁をもって脇目も振らず真剣にきゅうりを切り続ける子もいる。
火を焚く経験だって子供たちにとっては新鮮な経験だ。
危ない物を遠ざけていても成長はない。
誰だって失敗をしながら成長するんだ。
手を切ることもやけどをすることも、
大事に至らなければそれは成長の糧になる。
みまき自然の学校はそういうスタンスでやっている。
ちなみに食器は竹を切って作った。
温泉に入ったあとに竹をたくさん切らされた。
お父さん方の苦労を考えると、とても申し訳ないが、
合宿中の竹の器で味わいある食事を過ごせた。
正直に言っておくと、
竹の器はそんなに使い勝手が良くはなかったんだけれど、
それしかないんだと思って使っていると、
次第に愛着も湧いてくる。
最終日、
竹の器は自然に還そうかと思っていたら、
記念に持って帰って合宿の余韻を味わいたいという家族がいた。
お世辞にも使い勝手はよくなかったわけだが、
案外そういう〝気にかかるもの“の方が思い出に残ったりするものなのだ。
不便というのは意外と悪いものではない。
道だって不便な道ほど記憶に残るが、
便利で快適な道はスーと通り過ぎて何の思い出にも残らない。
意図的に自分から不便になることを受け入れられるほど、
現代人は寛容ではないが、
一方的に仕方なく与えられる不便というのは、
実は良い思い出になり貴重な経験となるものだ。
その晩は地元の天体観測グループに依頼して、
本格的な天体望遠鏡で星空観測をしていただいた。
土星の輪までしっかり見える天体望遠鏡は、
大人も子供も大はしゃぎだった。
というか大人の方がはしゃいでいたぐらいだ。
二日目。
朝にクワガタ捕りをした。
やはりカブトムシやクワガタは、いつの時代も子供のアイドルだ。
男の子はとても盛り上がっていた。
月並みだけど、
子供たちに田舎で体験させてあげたいことの1つだ。
この日の一大イベントは、
標高1065mの篠山の山頂に登山することだ。
しかも親と離れて子供たちとスタッフだけで登る。
登山口の駐車場から山頂へは大人の足で45分ほどなので、
それほど長い道のりではないが、
時には自分の腰ほどの高さのある段差も乗り越えなくてはいけない。
幼稚園生程度の子供たちに、
そんな冒険的なことが出来るのか?と思われるかも知れないが、
意外に子供たちというのは大人が想像するよりたくましい。
4才以上の子なら大人の手助けがなくても難なく登ってしまう。
3才未満だとさすがにちょっと厳しいが、
3/4くらいの道のりは自分ひとりで登れる。
結局、
「○○君はまだ小さいから無理だよね」と言って、
大人が勝手に子供の限界を決めているだけかもしれない。
大人は子供の1時間後に登り始め、
山頂付近で子供たちと合流した。
その後一緒に山頂でおむすび弁当を食べて下山したわけだが、
きっと親もずいぶん不安だったと思う。
でも、
子供だけでこの険しい山道を登れたという経験は、
子供にとっても、
親にとっても、
大きな自信になることだと思う。
2日目ともなると、
子供たち同士のコミュニティが出来上がって、
お互いに名前で呼び合ったり一緒に遊び始めたりしていた。
子供たちが牧場を走り回って遊ぶ姿はとても微笑ましかった。
実際はこういう状態になってからが本番というか、
本当に楽しめる時間になるのだと思うけど、
せっかく出来上がったコミュニティを、
2泊3日で解散させてしまわなければいけないというのが、
非常にもったいなく感じた。
この日の晩はマクロビ料理を作った。
いつものメンバーの中に、
マクロビ料理を習っているお母さんがいたので、
1食分の献立を担当してもらった。
羽釜ご飯と麦みその味噌汁に、
マクロビの調理法で作った、
「カボチャの煮物」と「切り干し大根」と「キュウリとワカメのナムル」。
「調理法と調味料だけでこうも違うのか!?」と驚かされるが、
砂糖を一切使っていないとは思えないほど甘みがあり、
カボチャが嫌いで普段は食べないという子も、
バクバク食べていた。
子供は正直というか、
胃袋は正直というか、
本当に美味しいと思ったものは、
1かけらも残らずなくなるものだということを目の当たりにした。
カボチャの煮物は鍋に残った汁まできれいになくなった。
この日は夜に大人だけで座談会をした。
社会のこと、
子育ての事、
そういう突っ込んだ話を参加者の大人と話せた時間は貴重だった。
主催者と参加者がコミュニケーションを図る時間があるというのも、
悪くないスタイルだと思う。
3日目。
この日は川遊び。
上流に人家のないきれいな川で遊んだ。
小さな川だけど、
子供たちにとってはワクワクドキドキすることがいっぱい。
メダカもいれば、
いろんなアイテムも落ちているし、
浅いところも深いところもあるし、
水で遊ぶと言っても、
プールと川では遊びの幅がずいぶん違うものだ。
人生で初めてカニに指を挟まれて泣いた子がいたけれど、
カニに挟まれた時の痛みを体得したことだろう。
その少し後に小さいカニを見つけたので持って行ってあげたら、
案の定嫌がった。(そりゃそうだ。)
でも、
「絶対痛くないから挟まれてごらん」と言って、
僕が目の前で指挟まれているのを見せてあげると、
恐る恐るだが指を伸ばしてきた。
そうしてドキドキしながら(腰は引けながら)挟まれてみたところ、
ムニッと挟まれても、小さいカニなら痛くなかった。
「同じカニでも小さいカニなら痛くないんだ!」
とわかってホッとしていた。
あの時、ドキドキしながら指を差し出した冒険も、
きっと思い出に残るだろう。
一つ一つの体験はそうたいしたことではないし、
それが目に見えて何かにつながるわけではないけれど、
そういう一つ一つの積み重ねが、
子供の感性を形作っていくのだと思う。
夏と言えば定番のスイカ割りをした。
子供の力で割れなかったので、
最後は巨漢の父ちゃんの一撃でたたき割った。
するとスイカは見事に爆裂!!
包丁で切るに切れない爆裂具合だったので、
もうそのまま食べようということになった。
子供たちはそのまま手を伸ばしてむしり取って食べていたが、
その姿は砂糖に群がるアリのようだった。
野生動物の食事光景を見たようで、
何か原始的なだなぁとちょっと感心してしまった。
やはり子供の方がより自然に近いのだろう。
ずいぶん長文になってしまったけれど、
この辺でお終いにしたいと思う。
今回の合宿は、
初めての試みで不安だらけだったけど、
無事に終わって今は本当にホッとしている。
やはり人を受け入れるというのは大変だと実感した。
ホッとし過ぎて2・3日動く気力が湧かなかったけれど、
そのせいで、
いなかマガジンの執筆がギリギリになってしまった(汗)
ゴメンナサイと、ここで平謝りm(_ _)m
あと、
サポートスタッフとして四万十より参加してもらった、
たっちゃん、さやちゃん、まっつん、たっくん、アッキー、よっちゃん、
きっとこのいなかマガジンの記事を読んでくれていると思うので、
ここで感謝を述べさせてもらいます。本当にありがとう☆
メンバーのお母さんも、
「スタッフで参加してくれた若い子たちは、いい子ばっかりだったね。」
と喜んでいましたよ。
スタッフとしてお手伝いをしてもらっただけでなく、
子供の遊び相手になってもらったり、
名誉の負傷やら名誉の虫刺されやら、
大変な思いをしながらも快く参加してもらって、
本当にありがとうございました。
合宿が無事に終わったのは、みなさんのおかげです。
最後に、
合宿後、家に帰った参加者の子が、
「らいねん、また、みまきにいきたい」と、
言ってくれているらしい。
夏休みになったら帰りたい『ぼくのいなか』に、
御槇もなれるかな。
と思った夏の出来事でした。