愛媛の生き方・働き方紹介:槇野洋子さん
こんにちは!たけしたです。
四万十に引っ越してきて4カ月目、妊娠9カ月目。
出産前後のお休みに向けて少しずつ仕事量を減らして
きたのですが、このゆったりした生活にも慣れてきました。
いなかって時間の流れが遅いと言われていますが、
全然そんなこともなく。
やろうと思えばどこでも仕事ができるネット環境もある中で、
私の横では昼夜問わず(本当に文字通り)夫(レオさん)は
人に向かったりPCに向かったり忙しそうです(笑)
松山から引っ越してきたばかりの時は、
「こんなゆっくり暮らしてて私の人生大丈夫か!?」と
心配になりました。
都会から移住する方もそういう心配はあるかもですね。
でもやろうと思えば、なんでもできるもんですね。
都会でも田舎でも結局自分次第です!
さて!今回は愛媛の生き方・働き方紹介シリーズ、
今日はいつも仕事で通う愛媛県宇和島市の
商店街にある米粉のパン屋さんBOULANGERIE RIZ店主の
槇野陽子さんのご紹介をしたいと思います♪
RIZはシャッターが連なる商店街の中で、
木をたくさん使った外観・内装のお店。
その中には木と同じような色合いに焼かれたパンが
朝早くからたくさん並んでいます。
RIZではパンは国内米粉産の米粉を、
焼き菓子は宇和島市三間町のブランド米である
「三間米」を使用して作っています。
宇和島市三間町はお米の産地で、
減農薬で有機質肥料を使って栽培する特別栽培米です。
(http://mimamai.com/this/index.html)
小麦とは全く違う食感が生まれる米粉は
扱いが難しく、密度が高いので熟成させたり、
膨らませる技術がとても高度!
製粉会社に依頼し空気中に舞うくらい
細かくすりつぶした米粉を練り、
18時間以上寝かせて低温熟成させた生地を使って
パンを作ります。
この手間をかけるパン屋さんはなかなかない!
でも米粉の良さと、食感を最大限生かすために
槇野さんはこの作り方にこだわっています。
「お米を食べてきたから私はずっと元気!
本当に良いものを食べてほしい!食べ物が人を作る。」
私はずっと宇和島で生まれ育ち、
お嫁に行った先も宇和島市内の真珠養殖を営む家です。
県外に住んだことはなく、
豪華ではないけど自然と食に恵まれた田舎で育ちました。
出身の地名のまさに「稲中」と「いなか」!笑
私がパン屋をしたい!と思うようになったのは
子どもの頃からの暮らし方が大きく影響しています。
家では自分たちが食べる分の米や野菜は自宅の畑で
作っていましたし、祖母や母が家の目の前で採れた野菜を
余すところなく煮炊きして食べさせてくれていました。
しかも、「何はなくとも米はある!」といつも言っていて、
とにかくお米だけはお腹いっぱい食べていましたね。
そういう環境で育ったことで「食」に関しては、
こだわりというより、自然と口に入れるものは
できるだけ素材のままのものを選び、
自分で何でも作る習慣が身に付いていました。
もともとそんな風に料理を作ったり、
みんなに本当に体にとって良いものを食べてほしい!という
気持ちは強かったので、なんとなくお店を経営してみたいなと
は思っていました。
そんな時に行政の支援も後押しとなり、
色んな方のサポートもいただきながら
ここでパン屋を開くことを決めました。
本格的にお店を開く準備を始めるにあたり、
やっぱり大事なのは自分の思い。
そこで自分が食べ物に寄せる思いを色んな人に話したんですね。
「食育が大事」という形式的なことじゃなくて、
自分が実感している、家族とごはんを食べる幸せな時間や
栄養をしっかり取るからこそ、気持ちも体も
晴れやかな気持ちで過ごせるのだということ。
まずはそういう思いを改めて整理しました。
また、行政からの支援もあって、
空き店舗を利用できるとのことで商店街に店が決定。
とはいえ使われていなかった店舗ですし、
改装や機器の購入などは自費で。
経理のことは何もわからない状態でしたが、
調べたり人に聞いたりしながらなんとか形にしました。
2011年7月にオープンをして、1年半が経ちましたが、
めまぐるしくあっという間に過ぎた時間でした。
そもそも商店街ではありますが、
すっかりシャッター街となったこの商店街では人通りも少ない。
毎日朝早くからひたすらパンを焼きますが、
夕方までに数人のお客様が来てくださればよいほうです。
さらに試行錯誤を今も繰り返していますが、
米粉は地元宇和島の三間米を使っているので
小麦粉よりも割高です。
100%米粉でパンを作ることもできますが、
そうなると日々100円~200円で菓子パンを買っているマチの人に
400円以上のパンを販売することになります。
それでは、ますます売れない…。
日々、自分が提供したいものと
商品として売れるものかどうかの葛藤を繰り返しています。
オープン前はまさか1個100円、200円のものが
ここまで売れないとは思いもしませんでした。
でも私は大事な大事なお米で作ったこのパンたちを、
「売れなかった」で済ませて、捨てることができません!!
効率や時間を考えれば手間なことかもしれませんが、
大事に作ったパンたちが、最後の1個まで誰かの口に入るように
お店を閉めた後に、企業の事務所やお友達のところに
売りに歩いています。
ビジネスなんて大げさなことじゃなく、
自分が作った200円のパンをどうすれば買いたいと
思ってもらえるのか、毎日そればっかり考えています。
商売の難しさは日々痛感していますし、
悩むことも毎日です。
ですが、こうして人に自分の気持ちを話すことは大事です。
なんだかんだと、自分だけで考えていたら悶々としている時でも、
こうして当初の思いや食べ物が与えてくれることを語ると
「あぁ、自分ってやっぱり確信を持ってるんだ!」
と実感できます。
そして今自分が大事に捉えている考え方や、
そこから考え出したパンの作り方、食べ物が人に与える影響、
そういう思いをつないでいくことが本当に大事だと思っています。
私自身も自分の考えだけじゃなくて、
三間町にある、とってもおいしいおまんじゅう屋さんの店主さんの
思いやおまんじゅうの作り方を勉強すべく、今通い詰めているんです。
そこは昔ながらの製法で作るお菓子屋さんなんですが、
菓子製造はほぼ機械化されてきていますし、
そのお店は後継者がいないので、店主さんが亡くなったら、
作り方がぱたりと途絶えてしまう状態なんです。
もったいないでしょう!!
誰にでも作れるもんじゃない、とってもおいしい製法が
誰にも知られずに途絶えてしまうなんて。
自分にとってもそれは言えると思うんですね。
私はどうすれば米粉の良さを保ちながら、
食べやすく、おいしく、アレンジできて、商品となるか
を考えながらやってきました。
でも私が倒れれば、今引き継げる人は誰もいないんです。
広い話になってしまいますが、
そういう世の中にある「よいもの」を無くしたくないですね。
そして暗いニュースも多い時代ですが、
若い人には私が挑戦して学べたことをぜひ伝えたい。
働き方であれば、頭だけで悩む就職活動じゃなくって、
100円のものを売ることさえ難しい、でも何とかしたい!と
もがくことから学ぶことを、
暮らしであれば、買って済ませるんじゃなくて、
工夫して、人も自然も快適に暮らすための、
ひと手間を惜しまない暮らし方を、
「もう時代が…」と言ってしまわずに
ぜひ体感して知っていってほしいですね。
それが私の仕事も人生も通しての願いです。
【BOULANGERIE RIZ】
愛媛県宇和島市恵美須町1-4-22
0895-22-8800
営業時間:8時~15時/定休日:日曜
※この記事はメルマガ「先輩に聞く、仕事の極意」に
掲載した記事の一部を修正・追記して、転載しています。
http://archive.mag2.com/0001506110/20121210115000000.html