若さの不思議
2013/02/13
- 執筆者 本澤侑季
- 所 属馬路村農協
少しずつ暖かく、日も長くなってきて、すぐそばに春の気配が感じられるこの頃です。
真冬のころは、通りでもあまり人を見かけなかったけれど、まだ寒いとはいえ、
こうも春の気配が漂ってくると、特におじいちゃんやおばあちゃんが動き出します。
どこに向かっているかはわかりませんが、
手押し車をついて歩いているおばあちゃんを最近よく見かけるようになりました。
畑にも、おじいちゃんたちが出てきて、せっせせっせと耕しています。
この姿は、春の風物詩ともいえるような気がします。
今回は、私が馬路村で暮らし始めてからずっと抱いている疑問について書きたいと思います。
その疑問というのは、『ここの人らぁは、なんでこんなに若いがやろう?』
ということです。
一般には高齢者といわれる65歳以上の人たち。
でも、村ではその人たちからは『お年寄り』なんて雰囲気が一切感じられません。
むしろ、60代はまだまだ若手といった感じで、
70代以上の人たちの存在感には目をみはるものがあります。
高齢化率が37%程であるにも関わらず、
『高齢の村』という実感が湧かないのはそのためかもしれません。(と、私の中では思っています)
では、65歳以上の方々の『若さ』を目の当たりにしたエピソードを紹介していきたいと思います。
【エピソード1】
おんちゃんが1日中川から出てこない。
6月、鮎漁が解禁になると、村のおんちゃんたちは待ってました!と言わんばかりに
皆こぞって川へ入ります。もちろん、年齢は60歳以上の人がほとんど。
早い人で朝5、6時から川へ入り、1日中なかなか川から出てきません。
【エピソード2】
運動会の主導権はおばちゃんが握る。
村民総出の馬路村民運動会。
20代30代の若い者は、数ある競技に次々出されますが、
その主導権を握るのは50、60代のおばちゃん。
プログラムを片手に、出場選手を指名していきます。
『あんたは足が速そうなき、次リレーへ出てよ。』
『いかん、去年遅かったきこれへは出されん。』
といった感じです。
時には、風船割りの風船が膨らまず手こずる若者を見て、いてもたってもいられず、
『あて(私)が膨らましちゃおか!』とコースへ入っていくおばちゃんも。(笑)
(かなり必死ですが、和気あいあいと楽しい運動会です。)
【エピソード3】
イノシシと闘う、しかも1人で。
11月、イノシシ猟が解禁になると、
おんちゃんたちは山へ入ります。
犬に追わせる追い山猟ではグループになってイノシシを仕留めますが、
罠猟では、罠にかかって大暴れのイノシシと1人で闘って仕留めてくることもしばしば。
もちろん、60歳を超えている人たちです。
おんちゃんたちのたくましさには、尊敬を覚えます。
【エピソード4】
あれ?おばあちゃん、背中曲がってなかったっけ。
先月行われた村内芸能発表会。
ピアノ、コーラス、ギター、日本舞踊、民謡、大正琴、劇、詩吟…と、
様々なジャンルで、日頃の練習の成果を発表し合います。
日本舞踊のステージにきれいな着物姿の女性(おそらく70歳ごろ)が現れると、
『いや~!きれい!!』
『いつもと別人みたい!』と観客席から歓声が上がりました。
次は詩吟のステージ。
いつも背中が曲がっていて『あては足を悪くしたき、歩くのもようやっと。』と
言っていた80代のおばあちゃんが、自分の曲の前奏が流れると、
自らステージの階段を上がり、曲中もシャキリッと背筋を伸ばして吟じているではありませんか!
好きなことを好きなだけ一生懸命やる。
自分の姿を人に見てもらう、というところにも若さの秘訣があるのかもしれません。
【エピソード5】
マイクを手放さない。
1月に行われた老人クラブの新年会では、恒例のカラオケタイムが始まりました。
若手の進行係が『○○さん、次あの曲入れるき歌うてね。』と言っても、
『あては足が痛いし、よう前へ行かん。歌わんでかまん。』
と、口とは裏腹、曲がかかると席を立ってステージの方へ自ら歩み出ました。
おんちゃんも、カラオケの機械にしがみつき、歌う、歌う。
21時のお開きまで誰一人として帰ろうとはしませんでした。
村の人たちは何故こんなにも若いのでしょうか。
若手世代は到底敵いそうにありません(笑)
この若さの秘訣は一体何なのか、未だに分かりませんが、
でも、ただ1つ感じるのは、
誰もが皆『人と集まる(よく飲む)、よく笑う、なんでも本気』の3拍子がそろっているように思います。
まだまだ謎は解明できていませんが、これからも調査を続けていきたいと思います。