涼をとりに、漁に行く

2013/08/26

顔の写真
執筆者 横山光一
所 属高知県四万十町役場

 

みなさん、国内最高気温を更新した四万十からこんにちは!

 

しかし、今年の四万十(全国的ですが…)の暑さと少雨は異常です。

水の豊富な四万十川支流でも小谷も枯れてしまい、簡易水道等の水源地でも水が尽きかけ、毎日防災スピーカーを通じて節水のお願いをしているところです。 このまま秋も台風が来ず、秋雨前線も活動しなければ、夏・秋より少雨の冬場が恐ろしいことになりそうな予感がして、行政関係者としては心配がつきません…。むむむっ。

 

さて、仕事の話はこの辺にして、今回こそはのびのびになっているサハラマラソン最終回を書こうと思いましたが、この暑さの中で、今より暑かった時のことを思い返すのは苦痛ですし、涼しい河原では鮎漁が最盛期ですので、

 

「旬は外せないだろう。(3回目)」

 

ということで、四万十川の伝統漁法である『火振り漁』について書かせてもらいます。

 

 

みなさん火振り漁はご存知ですか?

 

正式には、火光利用建網漁と言われているようですが、

十和では『淵置(ふちおき)漁』と言われています。

 

やり方は色々あるのですが、一般的には、夕方から夜にかけて、川岸から対岸まで網を仕掛け、暗くなったころを見計らって、火を振ったり、水面を竹竿等で叩いて鮎を驚かせ、網にかかるように仕向ける漁法です。この漁は四万十川流域では一般的なモノで、この時期になると毎晩のようにどこかで行われています。

 

ただし、この漁は全ての方が行えるものではありません。

漁協の組合員であることはもちろんのこと、鮎の乱獲を防ぐために「株制」を布いておりまして、これらを持っていなければ行うことができません。

 

株と言われても、どんな仕組みかわからいので少しだけ説明しますね。

この株は、地区や川の淵ごとにあり、その数も限られています。なので、A地区の株を持っていても、B地区の河原で火振り漁を行ってはいけない決まりになっています。

自分が住んでいる地区の株数は約30ほど。

 

一昔前、この株を持っていることは川漁を行う人たちのステータスで、その時の相場は一株100万円以上の値が・・・。 ただし、100万以上払っても余りあるくらいの鮎が捕れていたので、売買する方はほとんどいなかったようです。 しかし、最近では鮎の漁獲量も激減したことや高齢で漁が行わなくなった方がボチボチ出てきていますので、株の売買が少しずつ行われるようになりましたが、それでもウン十万はしている模様…。

 

その株ですが、ナント横山さんちも保有しています。

なので、マガジン用画像にするため、父ヒロシに

 

『株の写真を撮りたいけん見せてくれ。』

 

と頼んでみました。

 

が、

 

『そんな滅多に見せるもんじゃない。』

 

と一蹴されました。さすが、昭和の男です。

ですので、こちらで勘弁してください。

 

 ホンダ カブ

(農家の味方、Honda「カブ」)

 

・・・・・・・。

 

 

さぁ、気を取り直して「火振り漁」の当日の様子をご紹介します!

 

8月某日の夕方。

 自分が所有している川舟のある船着き場に集合。

 

 船着場

これは、船に漁で必要な道具を積み込んでいるところ。

 

基本、漁に必要な道具は、

 

・網

・発電機&ライト(最近は、たいまつではなくライトで行っている人が主です。)

・鮎を入れるクーラー

 

などです。

 

ちなみに、火振り漁は、舟を操る「漕ぎ手」と、川に網を入れていく「置き手」の二人体制で行っており、ウチは父ヒロシが「漕ぎ手」で自分が「置き手」の役割りを担っています。

 

そして、必要な道具を積み込んだら、決められた集合場所に移動します。

 

 火振漁 集合場所

集合場所での様子。うちの地区では、毎回15組から20数組の大所帯で協力しながら漁を行います。

 

で、集合時間になれば、触れ役が皆を呼び集めます。

 

触れ役 ハヤオさん

真ん中の方が今年の触れ役・ハヤオさん。御年90歳。

現役の川漁師ですので恐れ入ります。

 

この時に、触れ役などから現在の川の様子が説明され、今日はどこの場所で網を入れるかなどの取り決めがなされます。

その時に話されていることを、一部紹介しますと、

 

「イの一番は、ウズノカタから置いて、そこからスベリまでは3番まで入れ。」

 

「シマバエの下は、今日は置かんぞ。」

 

「ロのくじは、メオトから。」

 

「ハのくじは、ヤブシタに入れるぞ。」

 

などですが、わかります?

 

自分も初めて参加した時は、なんのこっちゃわかりませんでした。

ウズノカタ、スベリ、シマバエなどのカタカナで表記しているのは、全て目印になる岩の名前。

古くから川で漁をしている方は、目印になる大きな岩などに名前をつけており、現在でもそのまま使われています。なので、火振りをする際は、その漁法を覚えることはもちろんのこと、岩の名前も覚えておかなければなりません。

 

続いて、くじで網を置く場所を決めます。

うちの地区では、毎回3か所ほど網を置くのですが、上流から何番目に置くのかをくじで決めます。

 

 火振漁 くじ

これがくじ。ハとかロと書いているのは番号の代わりでイ・ロ・ハを使ってます。

 

 火振漁 くじ引き

そのくじを順番に引いていきます。この結果がその日捕れる数が左右されますので、みんなワクワクしながら引いてます。

 

 火振漁 くじ引き 結果

で、これがウチが引いたくじ。

 

「イ・14」は、「1回目に置く場所では、上流から14番目で網を置く。」

「ロ・16」は、「2回目に置く場所では、上流から16番目で網を置く。」

 

となります。

 

この後、一斉に自分の引いた場所に移り、皆の準備が整い次第、網を置く作業に移ります。

網を置いたら素早くライトをつけ、水面を叩いて鮎を驚かせます。

その後、それぞれで網をあげ、鮎を網からはずして終了となります。

 

えっ?

 

網置いたり、火を振ったりしている画像はないのかって?

 

えっと・・・。

 

ありません・・・。

 

だって、けっこうバタバタしますし、漁している時に、フラッシュたいたりすると、他の舟に怒られるんですよ。

 

鮎が逃げる。

 

って。

 

なので、コチラの映像で火振り漁の様子をお楽しみください。

 

http://www.youtube.com/watch?v=BAFiikxvYz4

下流の四万十市・西土佐地区での漁の様子です。

 

 

ちなみに、捕った鮎は地区によっては全て集めて均等に分配したりするのですが、うちでは捕った分はそれぞれの取り分となります。

 

 火振漁でとったアユ

その日、うちが捕った鮎。だいたい120匹ほど。

父ヒロシが、自分と同じ頃には、一回の火振り漁で400~500匹ほど捕れていたようですが・・・。

 

どうでしょう?

火振り漁の様子がわかったでしょうか?

火振り漁は、鮎の乱獲に繋がると言われてもおりますが、れっきとした四万十川の伝統漁法。

これらを後世に繋げることも、鮎や四万十川を保全することと同じくらい大事だと自分は思っています。

自分に息子でも誕生したら、この漁法を伝えていかなければ!

 

と、マジメなコメントをして、本日は終わりにします!

 

皆さん、まだまだ残暑が厳しいので体調にはお気をつけください。では~。

 

 

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