地域おこしを離島で学ぼう:島おこし実践塾のすすめ
2014/05/27
みなさん、はじめまして。国境離島対馬から、一般社団法人MITの川口幹子と申します。総務省の地域おこし協力隊(対馬では「島おこし協働隊」)として仙台から対馬に移住し、はや三年。あっという間でしたね~。任期終了に付き3月で島おこし協働隊は退職しましたが、これからもやっぱり対馬に住み続けたいし、島おこしの仕事は継続していきたいし、、、ということで、仲間と一緒に社団法人を立ち上げました。
法人名のMITには、地域の宝を「みつける(M)」「活かす(I)」「つなぐ(T)」という思いを込めています。そういえば先月、うちの代表の細井が、こちらに記事を寄せさせていただきました。
https://inaka-pipe.net/20140424/
そして、わたくしごとですが、4月に結婚もして、姓も変わりました。職場も変わり、姓も変わり、一番困ったのが電話です。
「ええと、いままで島おこし協働隊だった一般社団法人MITの元木村の川口ですけど~」
さて、そろそろ本題に入りたいと思います。MITの事務所がある対馬市上県町志多留地区は、人口60名とちょっと、高齢化率は6割を超える限界集落です。2年半前に、ひと目惚れして移り住んできました。
志多留地区は、縄文時代から人が住んでいた歴史ある集落です。稲作伝来の地とも伝えられ、弥生初期にはすでに水田が営まれていました。しかし脈々と続いてきたその営みが、今、途絶えようとしています。人口減少のスピードは著しく、農家の跡取りはいません。かつての水田は、今やほとんどが放棄され、荒野と化しています。空き家も目立ち、廃墟が限界集落を物語っています。
開墾の様子:草を刈る
志多留に来た時に、私を虜にしたのは、その荒廃した農地の美しさでした。今は農村といっても、きれいに区画整備され、給排水のパイプが埋め込まれている圃場がほとんどですが、ここの農地は違います。石垣で水路を組み、自然の勾配で田越しに水を引いていく。コンクリート舗装されていない水路には、今や絶滅危惧種となったウナギやメダカがうじゃうじゃいます。なんと言ったらいいか、、、人間のしたたかさ、というか、自然に畏怖しながらも恵みを与えてくれる存在としてうまく利用してきた歴史の重み、みたいなものをすごく感じたんですよね。今でこそ放棄された荒地ですが、ここが水田に戻ったらどんなに奇麗だろうなーと。こういう場所で、人と自然がどう向き合ってきたのか、どう付き合っていくべきなのか、そういうことを考え、伝えていける場所にしたい。
開墾の様子:イグサを抜き取る
そこで企画したのが、合宿形式で地域おこしや里山の保全を学ぶ「島おこし実践塾」です。平成24年度から続けていて、今年で三年目になります。定員30名のところ、学生を中心として、地域での仕事に興味がある社会人も多数集まってくれました。
5泊6日の合宿で、午前中の講義と午後の実践活動、そして参加者同士によるグループワークで構成されています。取り上げるテーマは、農地がはぐくむ里山の生物多様性の劣化と地域の衰退との関係性や、増えすぎたシカ・イノシシによる生態系の劣化とその対策といった生態学分野から、過疎高齢化の問題、移住促進の取り組みといった社会学系のテーマ、グリーンツーリズム、風土と調和するエコハウス、古民家再生などなど盛りだくさんです。
開墾の説明
古民家再生:土間づくり
古民家再生:土壁ぬり
古民家再生:床の張替え
最終日には、グループごとにテーマを決めて、志多留地区の活性化につながるビジネスプランの企画書発表会を行いました。なかなか面白いアイディアが出たりして、地域のかたも大満足。今年度は、志多留のプロモーションビデオを作ったり、ご婦人たちが立ち上げた加工グループで製造するお土産の商品開発をしたり、そのあと使えるようなカタチに残るものを、グループワークで作ることにチャレンジしたいなと思っています。
今年の島おこし実践塾は9月1日から6日までの6日間です。6月中旬ぐらいから募集を開始すると思いますので、興味がある方はぜひご参加くださいませ。
活性化プラン発表会
発表会:住民の人も聞きに来た
対馬のような離島とか、四万十みたいな中山間地域は、今の価値観では条件不利地とレッテルを張られています。たいして産業もなく、娯楽もない。所得や教育水準も低く、まぁいわゆる「超いなか」。そういう田舎での暮らしにあこがれるのは、一部の変わり者たち。
でも、近い将来、その関係は逆転するだろうと私は思うんです。離島や中山間地域こそが、豊かな産業にあふれ、高い水準の教育が受けられ、魅力的な暮らしが可能な場所と、皆があこがれるようになっているだろうと。
今の日本の経済は、完全に外部依存です。輸入と輸出の上に成り立っている経済です。だから大規模な港がある都市にのみ人口が集中してしまった。農業でさえも、化石燃料をふんだんに使う機械と、化学肥料と農薬に依存した産業に変わって、大規模化に成功した一部の農業者だけが生き残り、コストの大部分が外からの買い物で、大規模化すればするほど外に金が吸い取られていく仕組みになってしまっています。地方から産業を奪い、雇用を奪い、人を奪ったのは、経済と、その仕組みをつくってきた政治なんだと思います。
お見送りの様子
もし世の中の物流がすべて止まったら、東京では人は生きていけない。今の大都市は、外からの資源と、それらの入手を可能にしている流通とに依存して成り立っているからです。でも、外から黙っていてもモノが入ってくる時代は、そんなに長く続かないんじゃないかと思うんです。そういう時に、豊かに暮らせるのは東京ではない。今でこそ不利地とレッテルを張られている田舎こそが、本当に豊かな場所になるんじゃないかと思うんです。豊かな自然資源に囲まれ、脈々と受け継がれてきた人々の英知によって、そこから恵みを享受できる暮らし。自分が何に活かされているのかが見える安心感。そういう田舎での暮らしの豊かさを、もっと多くの人に知ってほしいし、何より今田舎に住んでいる住民の人たちに知ってほしい。もっと自分たちの暮らしに誇りを持ってほしい。
お見送りの様子
そんな思いで島おこし実践塾を開催しているわけですが、まぁ道のりはまだまだです。地域おこしは時間がかかるものと腹をくくって、気長に気丈に取り組むしかないですね。そこで皆さんの力が必要なわけですよ。ということで、皆さんのご参加、お待ちしています!最後の尻切れトンボっぷりが半端ないですが、募集開始の情報は、対馬市域学連携ポータルサイトにアップデートされる予定です。
【島おこし実践塾 開催案内】
開催期間: 9月1日(月)~6日(土)
対象:大学生以上で地域おこしに関心がある方ならだれでも
場所:長崎県対馬市上県町志多留地区
応募方法:6月中旬に対馬市域学連携ポータルサイトから募集開始します。
http://fieldcampus.city.tsushima.nagasaki.jp/