なぜ田舎が生き残る必要があるの?~人口的観点、生物的観点~

2014/10/31

 こんにちは!!巡の環の石坂です。今回は、海士町の話というよりも、地域で生きている人間の一人として、「なぜ田舎が生き残る必要があるのか?」について、考えていることを書いてみたいと思います。

 

【今回の記事はこんな内容です】

 

●今後日本はどうなるの?

●【人口的観点】なぜ田舎が生き残る必要があるの?

●【生物的観点】なぜ田舎が生き残る必要があるの?

 

 

今後日本はどうなるの?

 

 日本では、少子高齢化が進んでいます。2014年5月1日現在で、日本の総人口が約1億2700万人、15歳~64歳の人口(生産年齢人口)が約7800万人、65歳以上の人口が約3300万人となっています。(総務省統計局 人口推計 各月1日現在人口 平成26年10月報 (平成26年5月確定値,平成26年10月概算値)

 これが2050年にはどうなるかというと、総人口が約9700万人、生産年齢人口が5000万人、65歳以上の人口が約3800万人となっています。(日本の将来推計人口(平成24年1月推計):(出生中位(死亡中位)推計)

 つまり、2014年と比較し、生産年齢人口が約2800万人減り、65歳以上の人口が約500万人増える、ということになります。

 

以上を図にまとめると下のようになります。

日本の年齢3区分別人口

 

 単純に人口比として、2014年では、65歳以上1人を生産年齢人口が2.4人で支えていますが、2050年では1.3人で支えなければなりません。

 では、生産年齢人口1人あたりの負担はどのくらいになるのでしょうか。たとえば、社会保障費は、財務省発表の推計によると

 

 2013年 110.6兆円 (実際値)

 2015年 119.9兆円

 2020年 131.7兆円

 2025年 145.8兆円

 

になっていきます。この数値を元に、線形近似曲線を引いてみると、2050年の社会保障費は216.4兆円になります。

 

日本の社会保障費推計

 

単純に生産年齢人口で割ると、

2013年で生産年齢人口1人あたり約140万円を社会保障費に支払っており、

2050年で生産年齢人口1人あたり約220万円を社会保障費に支払うことになります。

 

イメージしやすいように、次の図をご覧ください。

 

図 年齢階層別の平均給与と、生産年齢人口1人あたり社会保障費の金額

民間給与実態統計調査

(「民間給与実態統計調査 平成24年分」 国税庁 線は筆者作成)

 

 勿論実際は累進課税が行われるでしょうし、生産年齢人口の若年層には学生も多いため、この金額の線通りに課税はされないと思うのですが、いずれにせよかなりの高負荷が予想されます。このような現状、及び将来を迎える日本において、少子高齢化により生じる問題の解消策が求められています。

 

【人口的観点】なぜ田舎が生き残る必要があるの?

 

 抜本的な解消策自体は日本全体での課題ではあるのですが、少なくとも「生産年齢人口をなりゆきの未来よりも増やす」という方針は非常に重要である、と考えられます。

  では、現状を見てみます。以下の図に、都道府県別の合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子供の平均数)を示します。

 

図 都道府県別合計特殊出生率(平成23年) 厚生労働省

都道府県別合計特殊出生率

 

大雑把な傾向として、合計特殊出生率は都市部より地方の方が高いことが読み取れます。

 

 「経済産業研究所「集積の経済による成長戦略と出生率回復は相反するのか」」によると、人口密度の高いエリアほど、合計特殊出生率が低くなる、という傾向があり、人口の集積がその地域の出生率をさらに引き下げる可能性があります。

 勿論原因は単純に人口密度だけであるとは考えられませんが、こちらでは、都市部ほど子供の教育などにかかる費用が高く、その結果として、子供の数が少なくなる傾向があることを、文部科学省や総務省のデータを元に推察しています。

  次に、総務省発表の、平成25年10月1日現在における、人口の増減率を見てみます。

 

図 都道府県別人口増減率

人口増減率

 

こちらをより詳しく見ていくと、

 

・人口増加した8都県(主に都市圏)は,全て社会増加が生じている

・人口減少した39府県は全て自然減少が生じ、その中の千葉県,大阪府以外の他の37府県は社会減少が生じている

 

という状態です。つまり、傾向として、都市圏を中心に人が集中し、地方からは人が流出していることが読み取れます。この傾向は一次的なものではなく、たとえば次の図のように、総務省発表の平成12~17年のデータを見てみても、同じような傾向が見えます。

 

図:都道府県別人口増減率(平成 12 年~17 年)

 都道府県別人口増減率

 

 この傾向は、今後もなりゆきのままでは続いていくことと考えられます。ここまでの話をざっくりまとめますと、以下のようになります。

 

・人口密度が高くなると、合計特殊出生率を引き下げる可能性がある

・傾向として、都市圏を中心に人が集中し、地方からは人が流出している

・その傾向は一時的なものではなく、今後も続くことが考えられる

 →今後も都市圏に人が集まる。より密度が高まり、合計特殊出生率が低くなり、結果としてさらに子供が生まれにくくなっていくことが予想される

 

この流れを止めるためには、人口密度の観点では、大きく以下の2つの方針があると考えられます。

 

1.人口密度がある地域で高まっても、合計特殊出生率が高くする

2.人口密度がある地域で高まりすぎないよう、人を分散させる

 

 この、2番目の「人を分散させる」ことが、田舎が生き残る必要があることの理由だと考えます。(ですので、田舎に人を呼ぶときは、都市圏などの人口密度が高い地域から、若者、既婚者を呼び、結婚や子育てがしやすい施策を打つことが人口政策上重要です)

 

 

【生物的観点】なぜ田舎が生き残る必要があるの?

 

 ここまでの話とは視点を変えて、生物的観点で見てみたいと思います。

 ヒトは所詮、生物の一種です。生物が目指すものは、「種の保存」です。この「種の保存」を考えたときに、都市圏に人が集中することは危険であることが言えます。

 例えば、人口が集中している都市圏において、大災害や戦争による攻撃など、壊滅的な被害を生じる事象が起こったとします。その地域の人口密度が高ければ高いほど、種として多大な被害を被ることになります。

 

大災害

L.C. Nøttaasen

 

 災害は1つのわかりやすい例ではありますが、より上位な話として、一時期話題になったYahoo知恵袋の投稿「弱者を抹殺する。 不謹慎な質問ですが、疑問に思ったのでお答え頂ければと思います。」をご覧いただければと思います。重要だと思う箇所をピックアップします。

 

“「社会」というものが無い生の自然状態に置かれるなら、人間は全員「弱者」だということです。その「弱者」たちが集まって、出来るだけ多くの「弱者」を生かすようにしたのが人間の生存戦略なんです”

 “遺伝子によって発現されるどういう”形質”が、どういう環境で生存に有利に働くかは計算不可能です。例えば、現代社会の人類にとって「障害」としかみなされない形質も、将来は「有効な形質」になってるかもしれません。だから、可能であるならばできる限り多くのパターンの「障害(=つまるところ形質的イレギュラーですが)」を抱えておく方が、生存戦略上の「保険」となるんです”

 

 「保険」。これこそが、地域が生き残る意味です。遺伝的形質だけの話ではありません。たとえば、「能力」というキーワードで見てみます。食料を自ら作ったり、捕ったりする力は、一般的に都会よりも田舎の方が優れている人が多いです。貨幣経済が破たんした時に、生き延びる為に必要になるのは、自給自足のできる田舎の知恵と技と力でしょう。

 その知恵や能力も、住んでいる地域によってさまざまなものがあります。豪雪地帯で暮らす知恵は、温帯や亜熱帯の人は持っていません。逆も然りです。今後どのような気候変動があるかわかりません。どんな作物、食料が得られなくなるかわかりません。何が起こるかわからない未来で、起きうる変化に対応するために、画一的ではなく、地域ごとの産業や生業や文化を残していくことが重要なのです。

 

 そもそも、住む地域が異なる、ということは、生物にとって大きな「保険」です(例えば、ある地域で致命的な病気が流行ったとしても、別の地域には届かないかもしれません)。だから、「社会」として、様々な地域に人が住み、人の営みがある状態は重要なのです。

 Frits Ahlefeldt-Laurvig

Frits Ahlefeldt-Laurvig

 

【まとめ】

 

●今後日本はどうなるの?

→少子高齢化により生じる経済的に大きな問題があります。

 この問題の解消策が求められています。「子供の数を増やす」という策は重要だと考えます。

 

●【人口的観点】なぜ田舎が生き残る必要があるの?

→都市圏を中心とした人口密度の上昇による、合計特殊出生率の更なる低下を避ける為。

 

●【生物的観点】なぜ田舎が生き残る必要があるの?

→「種の保存」「変化への適応」を考えたときに、一極集中による被害を軽減するための「保険」。

 

P.S.

●他にも「文化的観点」や、「国防的観点」、「環境的観点」など、様々な観点があると思います。色々考えてみたいです。

 

●今回書いたことには、まだまだ検証しないといけないデータや主張があります。ひとまず「僕の今考えている意見」として書いてみました。色々な人と議論していければと思っております。

 

 

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