霞が関の役人が超いなかのベンチャーに転職して、メリット・デメリットを考えたはなし
半年ぶりに、こんにちは。対馬のいなかベンチャーMITの冨永です。対馬は雪こそほとんど降りませんが、大陸からの風が強くて寒いです。
フロントガラスがビシッと凍ります
とりわけ、我が社のオフィスは古民家を改修したもので、夏は涼しいのですが冬の寒さは異常。古民家らしく火鉢を使うこともありますが、石油ファンヒーターを使わずにおれない今日この頃です。
とある日の朝は室温1度でした
今月で対馬に移住して1年8ヶ月経ちますが、いまだに「なーんで公務員辞めたね。もったいねーなー」と言われることがあります。確かに、自分が公務員を辞めるときは何とも思っていませんでしたが、大企業を辞めていなかに引っ越した人の話を聞くと、すごい(もったいない)なーと思うことがあります。そんなわけで今回は、誰もが認める超安定的な国家公務員の職を辞して、嵐の大海に浮かぶ木の葉の如く不安定ないなかベンチャーに転職した経験から思うことをお話しいたします。
さて、霞が関の国家公務員は安定している!のかな?ざっと書き出すと、以下のような感じです。
【安定していること】
給料・身分
【不安定なこと】
業務内容・スケジュール・心身の健康
なお、一口に「公務員」と言っても役場の窓口のお姉さん、公営バスの運転手さん、自衛隊のお兄さんやら総理大臣まで職種は様々です。今回はあくまで霞が関の木端役人をベースにしておりますのでご注意ください。
【給料】
超安定的です。一般に言われるような高給取りではありません。むしろ「国家」を企業として考えたら、その規模(従業員は60万人以上!)からすると格安と言ってもいいでしょう。(国家公務員の給与は、企業規模50人以上の会社の給与の平均と均衡するように決定されます。)そして、景気が悪くなって民間企業の給与が一斉に下がると、国家公務員の給料も下がります。実際に、平成14年以降は6回ほど給料が下がりましたけども、このような話題は忘れられがちなのが公務員の辛いところですね。ただし、懲戒処分でも受けないかぎり給料が下がることはほとんどありませんし、ボーナスも(多くはないけれど)確実に出ますから、経済面での人生設計は容易と言えましょう。
入庁7年目の9月の給与明細
【身分】
よく「公務員はクビにならない」と言われますが、それはちょっと言い過ぎかもしれません。民間企業と同じように、悪いことをしたり、勤務態度が悪かったりするとクビになることがあります。しかし、国鉄や郵便局や社会保険庁のように、民営化の波にでも巻き込まれない限り人員整理もほとんどありませんので、安定的と言って構わないでしょう。クレジットカードの発行やローンを組む時の信用はピカイチなので、社会的な評価は高いですし、共済制度がしっかりしていて福利厚生面も充実しています。
OFFICIALと書いてある緑色のパスポートで出張してました
【業務内容】
不安定です。霞が関では2~3年で人事異動がありますので、業務に慣れたころにまた新しい仕事に取り組むことになったりします。若いうちは良いのですが、歳を重ねるうちにつらくなってきますよね。人事異動はほとんど要望を取り入れてもらえませんし。(人事には人事の苦労があるのでしょうけれども)後述しますが、不慣れな業務を担当することになって心身のバランスを崩す、、、というケースも見られますので、大事なポイントですね。
復興庁が設立されたときの辞令
【スケジュール】
これは業務や時期によるのですが、一般に言われる「9時~5時」のような業務はあまりありません。むしろ、終電を気にして働く人の方が多いような気さえします。このため、睡眠時間も短くなりがちですし、昼ご飯を食べ損ねたり、残業中に軽く夕食を食べたのに、家に帰ってまた夜食を食べるので太る一方だ、みたいなことも多いようです。サービス業のように週末働いて平日休みということはありませんが、土日返上で働くことは珍しくありません。また、そのような状況だと、代休を取ることはほとんど不可能ですから、安定しているとは言い難いでしょう。
床で寝る同僚
【心身の健康】
超不安定です。上記のような激務が続けば、体調を崩すのも不思議ではないでしょう。慣れない業務を担当することになったり、国会や予算等の様々なプレッシャーから、精神面でのバランスを崩す方も少なくありません。1人倒れると周りの人の負担が増えますので、連鎖的に、、、ということもあります。(マイナスの連鎖は民間企業でも同じだと思いますけれども) 自殺する人が多い某省某局は離婚率も高い、なんて都市伝説があったり。恐ろしいことです。
改札の外でも「ちかん多発中!!」
こうやって考えると、霞が関の公務員は安定しているのでしょうか?もちろん、いなかベンチャーだって業務内容もスケジュールも不安定。今のところ給与と身分は安定していますが、給与は「低位安定」、身分だって「どこの馬の骨」というレベルであって、国家公務員とは比べるべくもありません。
しかし、人生で一番大事な安定って「心身の健康」ではありませんか。マズローの理論を持ち出すまでもなく、健康や安全があってこそ、様々な社会人としての尊厳を追求できるのであって、逆ではありえないのです。少しでも通勤時間の短いところにマンションを借りるのは、睡眠時間を延ばして明日の仕事に備えるためではなく、余暇の時間を延ばすためであってほしいものです。もちろん、お金が無かったら生活が厳しくなりますけれども、経済面では生活保護というセーフティネットがあります。しかし、国民健康保険に入っても健康は保障されませんし、生命保険も生命を保障するものではありません。
診療所のステキな貼り紙
価値観は人それぞれですが、「心身の健康あってこそ」と考えると、「霞が関の公務員を辞めること=安定的な生活を捨てること」ではない、と思うのです。実際、東京で「役人を辞めていなかに引っ越します」と挨拶したとき、十中八九は「いいな~」と言われたものでした。半年前のいなかマガジンでも書きましたが、「いいな~」とは思っても、家族のことや、仕事のことを考えて諦める人が多いのですよね。それでもやはり、定年後に地元へUターンしたり、Iターンで移住する方は少なからずいます。
しかし、ちょっと考えてみましょう。定年まで待たなくても良いのです。子供が就職したら移住しちゃうとか。いっそ子供が生まれる前に移住しちゃうとか。せっかくだから独身のうちに移住しちゃうとか。
独身のうちに移住した人たち
ということで、移住者の話を聞くたび「いいな~」と思っている方にもおすすめの、民泊体験モニターツアーを、3月中旬に企画しております。担当は、先月のいなかマガジンを執筆させていただいた「まめ」こと、新人佐原です。詳細はMITオフィシャルフェイスブックページにてご案内しますので、まめの「対馬を暮らす旅」に皆様ご期待ください!