美味しい魚を食べ続けられるために僕ができること

2015/06/22

 

 初めまして。一般社団法人MITの新入社員、銭本慧(ゼニモトケイ)と申します。僕は幼い頃から釣りが趣味で、海が大好きでした。そのため、大学は水産学部に入学。さらに大学大学院に進学し、水産学、海洋学を学びました。そして、その専門分野で大学の研究員として去年度まで3年間研究を行ってきました。

 大学院時代所属していた研究室はウナギやマグロなど、食べて美味しい、日本人にとって馴染みのある魚を研究対象としていて、僕が研究対象に選んだのはウナギでした。僕がウナギを研究対象にした理由は、単純に「食べて美味しいから」ということもありますが、普段は川で生活をしているのに、産卵のために海に降り、遥か彼方まで回遊するという生態がとても不思議に思えたからです。

 

 研究では、ウナギの資源量や漁獲量がどのような要因で変動しているのかを現地調査やデータ解析を行い調べました。その中でわかったことは、ウナギ資源は自然環境(水温や海流など)の変化によって変動しているという事と、それだけでは説明できない大きな減少傾向が存在するという事実です。僕が研究を行っていた期間にも、過去の解析結果からは「ウナギがたくさん採れるかも」と期待できるような自然環境の年が何度かありましたが、一度もたくさん採れる事はありませんでした。それどころか、研究を行っていた期間も減り続け、ついには絶滅危惧種(絶滅危惧IB類)に指定されるまで資源量が減少しました。

 実はウナギのように日本での資源量や漁獲量が減少し、ほとんど採れなくなっている水産資源はたくさんあります。それらが減ってしまったのは、持続可能なレベルを超えた漁獲、つまり乱獲が主な原因だと考えています。このような状況なので、魚を獲る漁師さんの生活もまた、たくさん魚が獲れた時代に比べて低水準になってしまっています。

 「自分たちで乱獲して魚を減らしたなら、自業自得なんじゃないの??」と思われるかもしれませんが、今の日本の漁業ルールでは早い者勝ちで魚を獲れることになっているので、「自分が獲らなくても他の漁業者が獲ってしまうから、他の漁業者に取られる前に自分が獲ろう」という心理が働いて、過剰な漁獲に陥ってしまう傾向にあります。

 

 このような日本の漁業問題を知るうちに、漁業の現場に行って、現状をこの目で確かめたいという思いがどんどん大きくなっていきました。そこで、研究員として長崎大学に所属していた時、研究活動の傍ら、九州各地の海へ出向いて漁業者の生活を体験してきました。そしていくつかの場所をめぐる中で、「対馬」という、とてつもなく魅力的な海とその海で仕事をされる一本釣り漁師さんたちに出会いました。

  一本釣りでは、魚を一匹一匹釣るため、大量には漁獲できません。そのため、漁場全体の資源に与える影響が小さく、自然に適応した漁法となっています。僕も実際に釣りに連れていってもらったのですが、ルアーという餌に見立てた仕掛けで面白いようにマダイやブリ、カサゴが釣れました。

 

対馬 マダイ ルアー

マダイを狙うルアー

 

対馬 ブリ ルアー

ブリを狙うルアー

 

対馬 釣り マダイ

こんな大きなマダイやブリが釣れることも!

 

対馬 釣り ブリ

 

釣った魚を一本釣りの漁師さんにご馳走していただきましたが、本当に美味しい。本当に美味しいのです。

 

対馬 刺身

 

対馬 刺身

 

対馬 刺身

 

 ご飯をいただきながら漁師さんと話をしてみると、大型巻き網というそこにいる魚を一網打尽にしてしまう漁法を行う漁船が操業を始めてから、やはり、獲れる魚の量が減り、サイズが小さくなっているようです。

 

こんなに美味しい魚が獲れる豊かな海が、資源管理を上手くできていないために失われつつある現状をどうにかしたい。僕に何ができるだろうか??

 

 豊かな海を守る、より豊かだった海に戻していくためには、適切な資源管理のルールを作ることが大切です。大学院や研究員時代お世話になった先生方や先輩、後輩が、この適切な資源管理のルール作りやそのための活動を一生懸命行っています。一方で、普段魚を買って食べている消費者の方々にこのような漁業の現状や資源管理の大切さを知ってもらう活動もまた大切だと感じました。

 魚を釣る(生産)、釣った魚を食べる(消費)。釣りはとても身近なレジャーですが、体験者が生産と消費を短期間で体験出来る数少ない営みです。この釣りという体験を通して人間と海の付き合い方を考えるような活動をできないか。僕が対馬の漁師さんに体験させてもらったことと同じプロセスで、対馬を訪れる多くの観光客の皆様に資源管理の大切さを伝えることができるのではないか。このような体験を通じて資源管理の大切さを知った方は、その前と後でスーパーや鮮魚店の見え方が変わるのではないか。

 

「自分が手に取ったこの魚は持続可能な漁法で獲られものだろうか?」このような関心を消費者の皆様に持ってもらうことも、資源管理のルールを作ることと同様に、豊かな海を取り戻すために大切なことだと思い立ちました。

 そういった着想で、僕は漁師さんの船に実際に乗ってもらい、釣りをして食べてもらう、ブルーツーリズムを行おうと考えました。遊漁(船に乗っての釣り)というと、釣り初心者や釣りをしたことがない人には敷居が高いと感じるかもしれませんが、安心して釣りをしていただけるように、準備を行っております。また、釣り道具のレンタルも出来ますし、釣りには僕が同行し、釣りの仕方をお教えいたします。

 

対馬 釣り アオリイカ

春になると堤防から大きなアオリイカも釣れます!

 

 

 是非対馬に遊びに来てください!現在MITではブルーツーリズムのWebページを鋭意作成中です。今月中(6月)にはアップいたします。もし、Webページが出来る前に、予約や質問がありましたら、0920-85-1755(MITオフィス電話)、もしくは、keizeni2008@mit.or.jp(銭本Mail)までご連絡いただければ幸いです。よろしくお願いします!

 

一般社団法人MIT(ミット)
フィッシングアドバイザー
銭本 慧

 

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