納豆つとこ

2016/04/13

 

 みなさんこんにちは。福島県西会津町地域おこし協力隊の横山です。みなさん手作り納豆を食べたことがありますか?実は先日、町内のイベントに参加した際に「手作り納豆」に出会いました。

 

手作り納豆 西会津

 

 西会津町内でも最近は納豆を手作りされている方は、ほとんどいないようです。私が食べた「手づくり納豆」は、市販の納豆に比べて粘り気は控えめで、臭みや苦味が少なく感じました。大豆の味をしっかり感じることのできる美味しい手作り納豆でした。

 その美味しい手作り納豆を作る名人のヒロコさん(通称:ヒロコ姉(あね))の元へ、納豆づくりを習いに協力隊の仲川隊員とともに行ってきました!

 

「納豆づくりを体験してみたいので、ぜひ近いうちに見せていただけませんか?」

 

と納豆づくり名人のヒロコ姉に電話を掛けてみたところ。。

 

「誰から聞いたんだ~?ほんとのこと言うと明日作ろうと思ってちょうど豆煮てたところなんだ~」

 

との事!ナイスタイミング!

 

「明日、納豆づくりさ、すっから来てみな~」

 

と言っていただき、早速伺わせていただきました。

 

煮た豆 西会津

 

前日からゆっくりとストーブの熱でコトコト時間をかけて煮た豆。ゆっくりと煮ているので、豆にしわが入っておらずとても綺麗。大豆に比べて、小粒で可愛らしいお豆です。

 

つとこ 西会津

 

 まずは豆を包むための「つとこ」と呼ばれるものを藁で作ります。西会津のあたりでは「つとこ」と呼ぶそうですが、同じ会津でも呼び名は異なり、南会津では「つづこ」「つづっこ」などと呼び方は異なります。他の地域での呼び方も気になるところ・・でも調べていたら脱線しちゃいそうなので続きを。

 

 

まずは藁を、ほぐして揃えていきます。

 

藁をほぐす 西会津

 

ヒロコ姉が使っている道具をみせてもらいました。出ました!お手製の道具!!木に釘をさしてブラシのような作りです。

 

お手製の道具 西会津

 

ブラシ 西会津

 

「手でやるとうまくねぇ(よくない)からな。これを使うんだ」

 

とのこと。揃えた藁をある程度の束にしたら、ならす為に金づちで叩きます。

 

藁を束に 西会津

 

今度は、結び目から藁を反対側に返していきます。

 

金づちで叩く 西会津

 

結び目から藁を反対側に返す 西会津

 

そのあとは、膝で包み込むように「つとこ」の形をつくっていきます。表現も難しいですが、実際つくるのもなかなか難しい。

 

膝で包み込む 西会津

 

つとこの形をつくる 西会津

 

 

↓なんとか出来上がって満面の笑みの仲川隊員(笑)

 

仲川隊員 西会津

 

つとこできあがり 西会津

 

「つとこ」が出来上がったら、今度は豆を入れた後に「つとこ」を縛る紐を作っていきます。藁を3本ずつかた結びして1本の紐にしていきます。

 

「つとこ」を縛る紐づくり 西会津

 

藁を結ぶ 西会津

 

 これで「つとこ」の準備は完了です。今度は、いよいよ煮た豆を「つとこ」に入れていきます。煮た豆(1升)に西会津で造られている「野沢納豆」という納豆を1パック混ぜます。

 

野沢納豆を混ぜる 西会津

 

 昔は、特に売っている納豆を入れることもなく、藁の菌だけで納豆づくりをしていたそうです。豆を入れる作業は、2人1組でやるとやり易いんだとか。ヒロコ姉は普段はお父さんに「つとこ」を広げて持っていてもらい、ヒロコ姉がお玉で豆をつとこに入れてから縛るという流れで作業を。「自分ひとりでやってくださいよ~」とお父さんは言いつつもお二人で仲睦まじく協力して納豆づくりをしている姿は、素敵です。

 

2人1組でやる 西会津

 

「納豆つとこ」はこんな感じになるので、米袋に入れていきます。

 

米袋に入れる 西会津

 

 それから、毛布でくるんで紐で発酵にむらができないようにきちんと縛る。豆炭を入れた「納豆づくり専用のこたつ」に入れて、毛布の上からさらにジャンパーとか半纏とか被せていました。

 

「今度はラック(上着のこと)を着せて、次は半纏を着せて~」

 

とヒロコ姉はまるで洋服を着せているように次々に掛けていきます。

 

洋服を着せているよう 西会津

 

 きっとこの洋服をかける行為こそが、意外にも失敗しない納豆づくりの重要なポイントなのかもしれない、と思いました。

 ここまでの作業でその日は終了しました。

 翌日に豆炭を入れ替えることと、床返しという天地をひっくり返すことをするそうです。そして3日間ほどこたつで寝かせ、冷ましたら出来上がりとのこと。

 

こたつで寝かせ 西会津

 

 3日ほど経って、再びヒロコ姉のもとを訪れてみました。

 

「上手くできていると思うよ」

 

というヒロコ姉の言葉に期待をしながら、見せていただきました。

 

完成 西会津

 

 しっかりと発酵もすすみ納豆が出来上がっていました。今まで藁納豆を食べたことのなかった私は恥ずかしながらどうやって食べたらいいのか知りませんでした。ヒロコ姉に藁納豆のほどき方も教えてもらい、まずは藁のひもをほどく。

 

藁のひもをほどく 西会津

 

つとこを両手で押すと広がるので、ひっくり返して叩くと納豆がきれいにでてきます。

 

つとこを両手で押す 西会津

 

ひっくり返して叩く 西会津

 

つとこからポロっと納豆がでてきます。

 

納豆 西会津

 

「こういう事か~!!」納得しました。つとこの形も造りも上手い事できているな~!

本当に先人たちの知恵って素晴らしい。無駄がない。

 

 

ヒロコ姉に納豆用の大豆を少し分けていただきました。

 

納豆用の大豆 西会津

 

 「青豆と違って猿や小動物もこの豆は手を付けない」らしく、鳥獣被害にも遭いにくいようなので、自分の畑でも育ててみようと思っています。そして収穫した豆を持って、今度は豆の下処理からヒロコ姉に教えてもらおう!と考えています。ゆくゆくは、イベントや体験プログラムの中でも「納豆つとこ」を多くの人に体験してもらえるように受け継いでいけるように、やり方やコツを掴むためにも引き続きヒロコ姉の下で修行していこうと思っています。

 

 ヒロコ姉に聞いて、「納豆の年取り(なっとうのとしとり)」という風習があることを知りました。年末の12月27日頃までに「納豆づくり」をして、神棚にお供えして年明けにいただくそうなんです。結婚してから60年ほど続けているとのこと。

 調べてみると一般的には、1月6日が「納豆の年取り」という日にあたり、この日に納豆を食べると「万病の根が抜けていく」と伝えられているそうですね。初めて知りました。

 

 あまり知られていないですが、実は福島県は、納豆の消費量が多い都道府県ランキングで毎年、上位にランクインしているんです!そんな納豆文化の根強い福島県だからこそ、「納豆の年取り」等の文化もしっかり残っているのかもしれない、と勝手ながら想像してしまいました。

 ヒロコ姉は夏には納豆を食べないそうです。秋に収穫したものを冬の間にいただく。季節に添った暮らしや食文化が無理のない暮らしなのかもしれない、今回の納豆づくりを通してそう感じました。

 

 

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