「いなか」にて~30女が感じていること~
2016/06/04
- 執筆者 鈴木陽子
- 所 属一般社団法人 ピースボートセンターいしのまき
こんにちは。宮城県石巻市で、漁師さんのお宅に一週間(もしくはそれ以上の長期間)ホームステイしながら漁業のお手伝いをする「7日間からの漁村留学 イマ、ココ プロジェクト。」を運営している鈴木陽子です。
石巻では3月-4月はわかめ漁が最盛期!「イマココ」の参加者たちも、日々わかめやメカブに囲まれておりました。写真は、わかめの根元の部分「めかぶ」の「みみそぎ」作業です。
簡単な作業なので、高校生でも年配の方でももちろん女性でもできます。そして、3月といえば子ども達は楽しい楽しい春休み♪♪ 浜には家の仕事の手伝いをする子どもの姿も見られます。
大きくなったら何になりたいの?と私が聞くと、ちょっと照れくさそうに、でも嬉しそうに笑いながら「漁師!」。その言葉を横で聞いているお父さん、嬉しそうだったなぁ(o^^o)
今、漁師の担い手はどんどん少なくなっています。漁師さんたちに、自分の子どもに後を継いでもらいたいかと尋ねても、大半の方は
「今の漁業の現状じゃ継いで欲しいって言えねっちゃ。頑張って働いてもこれっけしか(これだけしか)稼げねきゃ。自分から継ぎたいって言って来れば別だけんど」
と言います。
だから今漁師さんたちは、消費者と直接やり取りできる販売方法を開拓しようとしていたり、とにかく大量に出荷するというやり方ではなく、手間隙かけて育てた海産物を、その手間隙に見合った値段で買ってもらえるよう、商品の魅力発信に力を入れていたりと様々な工夫を凝らしています。
さて、話を元に戻しまして、5月に入るとわかめ漁はぼちぼちひと段落。じゃぁ漁師さんたちは暇なのかといえば、そんなことはありません。わかめの次は昆布漁が控えている漁師さんもいるし、5月半ばから7月末くらいまでにかけては、牡蠣の「種付け」のシーズンです!
牡蠣の赤ちゃんがたくさんくっついたホタテの貝殻を、写真のようにロープにはさんでいくこの作業。少人数だとこれがなかなか時間がかかるんですが、人数がちょっと増えるだけでグンと効率がアップするんですよね。
一本のロープに複数人で息を合わせて種を挟んでいくにはリズムが大事。程良い緊張感と一体感が心地良い作業です。リズムを崩さないようにずっと集中しているので、休憩などで手を休めた途端にふーっと心が緩み「ふわ~~疲れた~~」となりますが、それがまた心地良い疲れだったりもして。
石巻に来て、漁師さんと関わるようになって知ったんですが、自然の中にいるのって気持ちいいけど疲れるんですよね。雨も風もないすごく穏やかな日でも、一日外にいるとそれだけで夕方には体がけだるくなって来るんです。それは屋根と壁に守られている室内では味わえない疲れで、疲れているのに心地良くて。
なんだかそういう暮らしこそが、「自然」ていうことなのかなって思ったりして、そんなことを考えていたらとある人の歌からは「自然に生きてるってわかるなんて何て不自然なんだろう」なんて歌詞が流れて来たりもして、「漁師さんたちは自分が「自然に生きてる」って感じてるのかな?」なんて疑問が浮かんできます。
私みたいに「自然じゃない」暮らしをしてきた人間は「自然」を敏感に察知するけど(といっても群馬県出身なので全然都会育ちではないですが)、生まれた時から「自然に」生きてきた人たちは自分達が「自然に生きてる」なんて感じてないのかな?今度聞いてみようと思います。
はい、何の話をしているのかわからなくなってきたので方向修正、方向修正(汗)もう少しだけ浜の暮らしを覗いてみます。
「イマココ」に参加していると、漁師さんから魚を丸のままもらうことがあるんですね。魚をさばいたことがある人の方が断然少ないので、漁師さんに頼んでさばいてもらう人もいますが、チャレンジャーな人たちは果敢に挑戦します。
頭を落として、内臓を取り出して……「えっここ?こうかな?汗」「うわっぬるぬるする!!汗」ワイワイギャーギャー。そしてそのうち「……なんかこの魚かわいいなぁ」なんて魚に愛情持ち始めちゃったりなんかするから面白くて。
私も石巻に住み始めて、魚さばきに挑戦するようになりましたが、悪戦苦闘しながら自分たちでさばいた魚の味は、新鮮で美味しいだけじゃなくて、「命が宿っている」味がします。スーパーで売っている切り身の魚しか食べたことがない人は決して味わったことがない味。
エジプトのピラミッドを、大きな流氷の塊を、フィヨルドの圧倒的な壮大さを、テレビ越しで見て知っているのと自分の足でそこに立って感じるのとでは全然違うように。例えが大袈裟だと言われるかも知れないけれど、全然大袈裟じゃなくて。
ピラミッドや流氷やフィヨルドと同じレベルで、大きなことだと私は思うんです。知ると今までよりも世界がくっきりとした輪郭を持つような、そんな体験です。
でも、意識して思い出したり触れるようにしていないと、その感覚ってすぐ鈍くなったり忘れてしまうんですが。命をいただくということも、ピラミッドも流氷もフィヨルドも。
田舎に暮らす醍醐味は、忘れそうになっても思い出すきっかけがたくさん転がっていることかも知れないですね。みなさんもぜひそんな体験をしに田舎へ、できれば石巻の漁村へ足を運んでみてください^ ^
7日間からの漁村留学「イマ、ココ プロジェクト。」では、お盆と年末年始以外、常時参加者を募集しています。興味のある方はこちらをご覧ください。
※必ず魚をさばく体験ができるわけではないのでご了承くださいね。体験できることは時期や受入漁師さんによって様々です。