山菜の世界にも男と女がある!
2016/06/07
- 執筆者 横山萌美
- 所 属西会津町地域おこし協力隊
今年は冬が短かった分、春が少し長く感じることができた西会津もだんだんと、新緑から深緑へ山々は移り変わってきました。春先から現在までの里山暮らしの様子をお伝えします。桜、山菜、田植えなど。
冬の間、彩りの無い雪国にとって春の草木が芽吹く光景は、言葉ではいい表せないなんともいえない、「うれしい」というか、自然の恵みに素直に喜びを感じるほど。
今年の桜開花は4月10日頃でした。雪が少なかった分、桜の蕾が鳥に食べられてしまう被害も少なく綺麗に開花。
桜の開花と同時期に山の山菜たちも芽を出し始めました。ふきのとう、コシアブラ、タラの芽、ゼンマイ、コゴミ、ワラビ、ミズナなどなど。私が知らない山菜もまだまだたくさん。
会津では5月の連休前後には、あらゆる集落で必ずと言っていいほどみられるこの光景。
何の作業中か分かりますか? ゼンマイをおいしく保存するためには、かかせない下処理の光景なんです!!
「ゼンマイって何?」「知らない」って方いますか?
都会の人でもよく知る山菜だと思います。ナムルやビビンバに入っている茶色の山菜ですよ~って言えばきっとわかりますよね??
ゼンマイは一般的に里山や山道の脇や斜面にもよく生えているので、採るのは簡単です。手軽に採れるので、採り始めると楽しくなってしまい、ついついやめられなくなってしまうのが山菜取り(笑) それでも、全部とりきらないで残しておくのが、山の掟というか暗黙のルール。
採るのはわりと手軽ですが、下処理に手間がかかるのが山菜。保存食として昔から山菜文化の濃い会津では、手間暇を惜しまずみなさん山の恵みを丁寧に処理して味わっています。
ゼンマイの下処理
まずは、採ってきたゼンマイを筵の上にひろげ、綿取り。
ばあちゃんたちはあっという間にこの綿取り作業を終えてしまいます。ちなみに取り除いた綿はこんな感じ。
茶色っぽいふわふわした綿です。
※種類が違うのかもしれませんが、ゼンマイの綿を紡いで使ったり、染色にも使うことも。調べてみると、秋田県由利本荘市には「ゼンマイ織り」という文化があります。残念ながら西会津町では染めや糸にして使っていたという話を耳にしたことはありませんが。
オトコゼンマイとオンナゼンマイ
綿取りのときに、なにやら避けているゼンマイがあったので、どうしてなのか聞いてみると。
「あ~。これな、オトコゼンマイだからだ」
ん???
「オトコゼンマイ?なんですか、それ。」
「ゼンマイにも男と女があってな、男ゼンマイはうまくねぇんだ」
「へぇ~!!それは初耳です!どうやって見分けるんですか?」
「ここがこうなってんのが、男ゼンマイだ」
「なるほどー!!山のように積み重なったゼンマイからは見分けつかなかったけど、こうしてみると全然違いますね。」
すみません、上手く表現できないのですが(笑)上記の写真のように左のゼンマイのように収穫の時点で、男ゼンマイは採らないようにしているそうなんですが、たまに混ざってしまうのだとか。綿取りが終わったら、大きな鍋に水を入れて火にかける。
鍋からあげたものを、筵にひろげてまずは天日干しして、水分を飛ばす。
水分が飛んだら、両手で優しくまんべんなく揉みほぐします。その行程は、なんというか・・そばやピザ生地を捏ねるような仕草にみえるんですが手のひらで筵に擦り付けるようにして力を入れ過ぎてゼンマイを傷めないように絶妙な力加減で揉みこむようです。
揉む→干すという作業を何度も繰り返して、収穫した時の姿やカタチがよくわからなくなる程にカラカラに乾燥させます。
この乾燥した状態のゼンマイを缶やジップロックのようなものに入れて保存食にして、みなさん1年を通して春の恵みを堪能します。昔から受け継がれている山の暮らしの知恵です。
田植えの季節がやってきた
4月下旬には、苗の種まきが各家庭ではじまり、5月初旬~中旬には田んぼに水が張られ、晴れた日には田植えが始まる。
「週末は、実家や親せきの田植えの手伝い」というのが、この時期の休日の過ごし方のようです。
私たち地域おこし協力隊も田植えのお誘い頂き、小杉山(こすぎやま)という集落の田植えにお手伝い?体験?行ってきました。小杉山集落は、昔から変わらず手植え・手刈り作業を行っています。
毎年、2家族が隣同士の田んぼで同じ日に田植えや稲刈りをしているそうです。田植え初心者の協力隊は、師匠に田植えのいろはを教わり、
いざ、田植えに挑戦!!
みんな集中して、黙々と植える。
そして、田植えの合間にみんなで一服するのも楽しみのひとつ。
山奥の小さな集落で笑いが絶えない賑やかな田植え作業。普段は離れて暮らしている兄弟や子どもたちも田植えを手伝いに帰ってくる。旅行とかお出かけ、誕生日でも無い日に家族が集まるイベント(田植え)があるって、「なんかいいな~」って感じる。そんな風に思っているうちに、田植え作業も無事に終了!
小杉山のみなさんありがとうございます。
今回の田植えで訪れた小杉山集落には「超スーパー軟水」と書かれた湧水が流れてます。町内外からこの湧水を汲みに来る人がいるほど美味しい湧水が。冷たいし、クセがなくまろやかなお水。すっごく美味しい。お世辞抜きで今まで飲んできたどの湧水よりも(笑)おいしいんですけど。
集落の人によると、この水でお米炊いたり、珈琲入れると最高に美味しいらしい。。すぐにでも試したい衝動にかられ、たくさん汲んで帰りたくなりました(笑) しかし持っていたのは、ペットボトル500mlとナルゲンボトル500mlだけ。とりあえず満杯にくんでかえることに・・。近いうちに絶対に汲みにこよう。
それから、この日知ったことのひとつ。田植えの日には苗を、稲刈りの日には稲を神棚へお供えする。
今でもこういった風習が家庭ごとに残っているそうです。私は、「ほどよく雨が降って、どうか無事においしいお米が実りますように」と祈願を。
いなか暮らし初心者の協力隊は、自分の田んぼを始めるには至りませんが、そんな私たちにも、経験するチャンスを与えてくれる西会津町のみなさんには感謝、感謝です。
集落の人たちと触れ合い、西会津で暮らす楽しみをまたひとつ知り、近いうちにお水を汲みにこよう。また小杉山のみなさんに会いにこよう。そう、思った休日の午後でした。