クラウドファンディングを達成させる3つの取組
2016/06/28
- 執筆者 山田泰平
- 所 属遠野市のギフト制作委員会
クラウドファンディングで制作資金の調達を行ってきた「遠野市のギフト」。
5月18日に終了し、目標の136%で無事に目標金額を達成いたしました。「いなかパイプ」をご覧になって、応援してくださった方もいらっしゃると思います。本当にありがとうございます。
移住や起業を考える方は、事業を始めるにあたってクラウドファンディングの利用を検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか。「クラウドファンディングを達成させる3つの取組」などと大それたことをタイトルに掲げてしまいましたが、実際にやってみての「これ、やっといた方がいいですよ!/これ、やめといた方がいいですよ・・・。」なんてことをこの記事にてお伝えしたいと思います。
※画像は金額精査前のものです。実際の達成金額とはズレがあります。
クラウドファンディング、サービスの違い
まず私が実際に、どんなページでクラウドファンディングを実施していたのかご紹介します。
クラウドファンディングとは、WEB上で不特定多数の方から資金調達を行うことを指しますが、世界各国で行われている手法であり、日本で有名なところといえば、「READYFOR」や「CAMPFIRE」などでしょうか。地域性を前面に出したサービスや、最近では、「ふるさと納税」を利用した仕組みも出てきました。
集める資金の額は、数万円という金額から、数百万、数千万円、数億円という大きな金額を募るケースもあります。募金のように見返りなく資金を集める手法の他に、出資金額により商品や株式を渡す手法など、「購入型」「寄付型」「金融型」という風にリターンの内容・有無により分類されます。
遠野市内にある重要文化財「千葉家」は、平成28年から保存のための整備が行われます。本施設では、クラウドファンディングは利用されませんでしたが、昔からある施設の修復や再利活用のために、クラウドファンディングで資金調達をするという手段もあります。
岩手県内では、花巻市の「マルカン百貨店」が平成28年6月7日に閉店となりました。現在再びオープンするべく必要資金の一部を調達するためのクラウドファンディングが実施されています。
私の場合は、株式会社地元カンパニーが手掛ける「地元のギフト」というパッケージを利用しての制作になるので、自社サイトのクラウドファンディングページで資金調達することができました。今回は「購入型」のクラウドファンディングになるため、1万円の出資に対して、完成した暁には4,000円相当の「遠野市のギフト」の現品がいち早く届けられます。残りの約6,000円は制作資金に充てられます。
ページとしての発信力は特段強い訳ではないようで、各地域で挑戦されたクラウドファンディングは、Facebookなどを通じた各地域担当の発信が求められていました。また、地域性はあるものの「地元のギフト」という同じサービスが紹介されているため、取組みでの比較はしにくいものであると推測します。逆に、地縁を感じて下さった方は、やはり比較的支援してくださいました。
いずれにせよ各社とも、サービスや利用手数料、PR力やその他特色が異なるので、その強み弱みを把握しながら選択すべきかと思います。
クラウドファンディングを達成させる3つの取組
さて、本題です。私が実際にクラウドファンディングに挑戦する中で、重要だと感じたことを3つに絞ってご紹介します。
①目的、対象設定
資金を不特定多数の方から募る訳ですから、集まった資金の使用用途となぜそれを実施したいのかをできるだけ端的にまとめあげます。そして、どんな方から資金を募るのかを設定すると良いでしょう。適切であれば、しっかりと共感に繋がり連鎖していきます。
私の場合は、「自分の結婚式で、地元神奈川の人に、移住先の遠野のことを知ってもらうための引き出物を作る」ことを目的とし、制作資金を募りました。距離のある岩手と神奈川。直接来ることが難しくとも、「私が移住する地域はこんな場所です」と知ってもらうために、それを私が伝えるのではなく、移住先に住んでいる方々、引いてはその方々が作る産品に伝えてもらいたいと思いました。「地域活性化の~」など、抽象的なものではなく、「私の結婚式で使う引き出物」という具体的なものだったので、伝わりやすかったのではないかと思っています。
また、主な対象は神奈川の友人と設定していました。「結婚するからご祝儀を前借りさせてくれ」といきなり連絡があった古くからの友人は、多くが驚いていたようでしたが、同時に賛同してくれたこともあり、最初から最後までブレることなく成功しました。
久々に小学校、中学校の友人に連絡をとると、お互いに年をとったことを嫌でも実感しました。岩手にいることを伝えると、これもまた驚かれます。
②伝え続ける
私が利用するクラウドファンディングのWEBページ本体には、情報発信のツールがありませんでした。そのため、Facebookを主に利用し、1日1回の更新を心がけました。ただ1日だけ、更新ができなかった時があったのですが、それ以外は「なぜやりたいか」「どんな商品にしたいか」「移住先のこと」など、関係することを少しずつ記事にしていきました。
どんな記事が効果的か、アクセスランキングをご紹介します。
第1位:5月17日投稿「■遠野市のギフトは誰が作っているの? Part2」
→私の彼女の自己紹介(更新は主に私でしたが、トップはこの記事という複雑な心境です)。
第2位:5月15日投稿「\ 祝!目標600,000円達成 /」
→目標達成の報告。
第3位:4月17日投稿「□河北新報(4/15朝刊) 掲載記事紹介」
→初めてのメディア掲載の内容紹介。
逆に、一番アクセスが少なかったのは、4月16日投稿「■日本経済新聞、岩手日報 掲載のお知らせ」でした。
これは、内容ではなく、記事投稿の性質が問題になっているかと思います。更新はその多くを画像付きの文章で投稿していました。しかし、この記事はURL付きのリンクページとして認識されています。インサイトを分析すると、アクセスが少ない記事は総じてこのリンクページでした。
更新する側にとってみれば、1日1回の更新はなかなかに大変だったりします。しかし、毎日Facebookに触れない方もいるため、伝えるためには質はもとより量も必要になるのかと思います。
Facebook以外の告知としては、本クラウドファンディングを始めるにあたって、4月上旬に20社程度のメディアや関係団体にプレスリリースを送付しました。掲載されたのは以下の5件となります。
・2016年4月15日 河北新報「あふれる遠野愛お届け 特産品カタログギフト発売へ」
・2016年4月16日 岩手日報「遠野の特産一冊に 市地域おこし協力隊の山田さん」
・2016年4月16日 日本経済新聞(東北欄)「遠野からカタログギフト 元ボランティア、商品化へ奔走」
・2016年4月26日 TREGiON PORT.「遠野市のギフトの制作を応援しませんか?」
・2016年5月9日 いなかパイプ「私、田舎で結婚しようと考えています(男編・序)」
どれだけ「掲載してほしい」と願っても、それだけの「うまみ」が伝えきれないと、取材には発展しません。どんな情報ならば記事にしやすいのかを考えた時、①に戻りますが、目的はしっかりと固める必要があります。
ただ1つ残念な結果といえば、メディア掲載で購入予約まで進んだ人が多数いるかといえば、そんなことはありません。「制品を作りたい・応援して欲しい」という地点ですから、それもなるほど納得です。
しかし、直接のPRというよりは、メディアに露出することで、活動や制品の信頼度が高まったのではないかと感じます。特に遠野市では、掲載された新聞を購読している方が多く、「山田くん新聞見たよ。がんばってね。」という声を直接聞くことができました。こんな声はボイスレコーダーに取っておきたいくらい励みになります。
ちなみに、地方紙に掲載すると、YAHOO!ニュースにも掲載される場合もあります。
③焦らない
私が利用したクラウドファンディングでは、4月4日から5月18日の45日間に目標金額60万円まで集めることが求められました。運営企業の担当からは、「開始5日で20%までいきましょう」なんて強気の言葉をいただきました。それができていたのか、実際に購入予約(=支援)の数を日毎にグラフ化したのでご覧ください。
※正式な金額は集計中です。あくまで参考となります。
皆さんは予想通りかもしれませんが、20%(=12万円)を達成したのは7日目でした。始める前は、「達成最短記録を樹立したらどうしよう。200%とか達成したらどうしよう」なんて妄想していましたが、お金をいただくことはそんなに甘いことじゃないと現実をつきつけられました。あまりにも購入予約がなく、弱気になる(4月9日)なんてことまでグラフに記載があります。
クラウドファンディングに挑戦している側からみれば、タイムリミットまでが迫ってくる感覚ですが、支援側にとってみれば、「いつ入金してもほとんど変わりない」のが事実です。焦りが伝わると、同情での支援となり、後々惨めさを感じてしまうことにもなりかねないので、「焦ってもしょうがない」とビールでも飲んで、時が来るのを待つのが良いでしょう(一方で、同情の力は強いこともあるとお伝えだけしておきます)。
土日に購入予約が多いのは、私の友人の多くが社会人ということもあり予想通りでした。また、運営の担当が話していたように、開始時と終了間際はやはり急激な上昇があります。「遠野市のギフト」はそれが特に顕著であったようで、担当は「達成しないと思ってた」と終了後にポツリと本音を漏らしていました。
ビールの原料の1つであるホップの6月の生育状況。植物と同じで、焦っても仕方ないのです。
まとめ クラウドファンディングを実際にやってみて
クラウドファンディングは、WEBやSNS、その他メディア媒体を組み合わせることで、多くの人の目に触れ、PRをしつつ、資金を募ることができます。また、期限を設定した上で、ある程度の期間を踏むため、ゆっくりと熱意が伝わるものだと思っています。これらは発信力が求められる いなか において有用な手段となり得ます。
ただ、長い期間やっていたとしても、全て見る人など稀有でしょう。その意味でも機関の設定は重要です。実際に「遠野市のギフト」に購入予約をしてくれた人からも、様々なご意見を頂戴しています。まだできていない制品ですから、説明責任を果たしていくこと、そしていただいた支援の結果を出すことが求められるのではないでしょうか。
この手法に限った話ではありませんが、「お金」というものが、貨幣としての交換価値以上に、応援するための道具だと感じました。支援いただく度に感謝が生まれましたし、資金を募っていたからこそ、他地域が取り組む事例や友人が手掛ける活動への興味が増し、「がんばれ!」という応援の証として私自身がクラウドファンディングに出資することが多くなりました。これは、自分が動かなければ生まれなかったものだと感じています。
簡単に目標金額を達成したかといえばそうではなく、一番効果的だったのはやはり直接の連絡で、地道に地道に説明してきた成果だと思います。90%以上が制作委員会の知り合いということもあり、今まで受け取ったどんなお金よりも、クラウドファンディングで集めたお金は、重いものです。いただいた気持ち、お金に背くことなく、「遠野市のギフト」の制作を始めていきます。
というわけで、クラウドファンディングを実際にやってみた者として、簡単に感想を書いてみました。やってみようと考える方は、①目的、対象設定 ②伝え続ける ③焦らない、こんなことを念頭に置きつつ実施してみてください。
この記事が資金調達を考える方の参考になれば、幸いです。