ひな祭り

2017/05/30

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執筆者 高下莉奈
所 属日野町地域おこし協力隊

 旧暦で行事がすすむことが多いのは田舎ならではなのでしょうか、それとも地域性なのでしょうか。ここ鳥取県日野町では、「ひな祭り」が一ヶ月遅れてやってきます。
 そして数年前から一軒の古民家で、ひな人形展が開催されています。自宅の蔵に眠っていた年代物の雛人形を見つけたご主人が、「このまま蔵にしまっておくのは忍びない・・・みんなに見てもらおう。」という思いで始まりました。古民家を開放して、明治~平成の様々な雛人形が展示されています。この古民家自体、170年以上は経過しているそうです。
 土間もあり、囲炉裏もあり、庭園があり、立派な梁もあって、素敵な空間です。外が少し暑くても家の中は快適! 逆に冬は暖房器具を使ってもかなーり寒いけど、今の季節はとっても心地がいいです。

 まずお出迎えしてくれるのは、珍しい紙の雛人形です。

 

紙の雛人形

 

 羽子板のような作りですが、全身が描かれいて、木の棒を指して飾ります。おばあちゃん達はこれを見て「あったあった~懐かしいわ~」と。私は初めて見ました。土台も可愛らしく飾られています。
 そして靴を脱いで入ってみると、真正面にありましたー! 時代を感じる雛人形です。向かって左側は昭和の雛人形。

 

昭和の雛人形

 

 この頃はいまみたいにプラスチックではなくて、全て「木」で作られています。なので、どことなく雰囲気が違う。木の重みというか、変な光沢がなくて素晴らしいです。
 私の実家はマンションだったので、お内裏様とお雛様と三人官女だけの2段なのですが、こちらはなんと、7段! 随臣と仕丁まであるのは、羨ましいです。顔立ちも現代みたいな可愛らしい感じではなくてキリッと凛々しい面持ちです。

 向かって右側にあるのは明治~大正の頃の雛人形です。

 

明治~大正の頃の雛人形

 

 雛壇には統一感があんまりないような・・・実は昔の雛人形は、子供が生まれたら、親戚や友人などから贈り物としてもらう風習があったそうです。なので、お内裏様とお雛様だけが、きちんと揃っていて、あとは男の子が生まれたら「天神様」、

 

天神様

 

 女の子が生まれたら・・・なんだっけ? ちょっと、ど忘れしてしまいましたが、対の雛人形などをプレゼントされます。

 

対の雛人形

 

 人形の裏には生まれた子の名前を書いておくんだそうです。ひな祭りというと女の子のお祭りという意味合いが強いですが、昔は男の子も女の子もみな無病息災で元気に育つようにと祝われていました。

 

高砂人形

 

 また縁起のよい「高砂人形」もありました。

 

お前百までわしゃ九十九

 

「お前百までわしゃ九十九まで、ともに白髪が生えるまで」

 夫(お前)が100歳まで、妻(わしゃ)が99歳まで仲良く暮らしていきたいということわざ。
 それぞれ手に熊手と箒を持っていますが、これも「ともに長寿を全うする願い」を表しています。百と掃くをかけたり、九十九と熊手をかけてもあるそうです。他にも熊手には「福をかき集める」、箒は「邪気を払う」という、邪を払って幸福を抱くという意味もあるとお聞きしました。

 昔の人形がここまで保存状態よく残っていたのにも、先人の知恵が隠されています。
 いまは、人形専用の防虫剤とかがありますが、昔は煙草の葉を一緒にいれていました。煙草の葉の臭いは虫が嫌う成分があるみたいで、このお陰で虫食いもなく、綺麗な状態で保存されていたそうです。

 

煙草の葉

 

 あとは一緒にくるまれていた年代物の新聞。今の新聞よりも字が小さくてびっしり! ハマグリで作ったものや、手作りの人形もあって可愛いです。

 お隣では、「手仕事ギャラリーKaike」から山陰の職人さんが作られた作品が販売されていました。

 

陶器やガラス細工

 

 陶器やガラス細工、絣、人形や寄木細工など、素敵な作品がたーくさん。どれもこれも手作りで欲しくなっちゃいます。

 

寄木細工のワークショップ

 

 その中で寄木細工のワークショップをされていたので参加しました。木を小さな正方形やひし形にして好きなように組み合わせてペンダントや髪ゴムにしていきます。
 桜、杉、漆など様々な木があったのですが、どれも微妙に表情が違う。育った環境や年数で違いが表れるそうです。
 私は髪ゴムを作りました。お気に入りの組み合わせ。

 

髪ゴム

 

 奥座敷にもお邪魔しました。ここは庭が見られて落ち着く空間です。

 

落ち着く空間

 

 お昼を過ぎた14時くらいからいい風が入ってきて読書には最高の空間!お昼寝にも抜群です。こんな場所が家にも欲しいです。

 最後に囲炉裏で甘酒を頂きながら・・・

 

甘酒実

 

 この甘酒実は私が作りました。

 

甘酒しない

 

 コーヒーじゃ味気ないし、お酒はちょっと・・・「せっかくひな祭りだから甘酒しない?」と声を掛けていただき、囲炉裏を囲んで甘酒を飲んでみんなでおしゃべりです。米子の方から来てくださる方もいて、普段とは違う空間に癒されていたようです。
 他にも唐箕や掘り炬燵、糸車など昔のものがたくさんあってとても素敵な場所でした。

 田舎でも古いものは見向きもされずに捨てられたり、壊されたりします。そういうのはすごく残念だなあって思う反面、仕方がないことかと思いながら見ています。
 この古民家みたいに昔からのものを大切にとっておき、都会の人たちに来てもらって、みてもらうという場所が各地にあれば素敵なことだなと感じました。

 

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