吸引力ハンパないって!!!
- 執筆者 渡辺敏郎
- 所 属
2017/11/06
徳島県の南側、阿南市の加茂谷地区に協力隊として移住してから早一年半。つまり、協力隊の任期として半分を終えた今、心に残っている言葉が二つある。
“若い時の苦労は買ってでもしろ”
“できない理由を並べるな”
この二つは、私の受入れ団体である「加茂谷元気なまちづくり会」の山下さんと柳沢さんに言われた一言である。なぜだか心にずーっと残っている。
武蔵野大学の受入れを終えて
今年で4回目になる、武蔵野大学の農業ボランティアは、ちょうど稲刈りが済んだ時期にすべての日程を終えることができた。約80名の学生を1ヶ月にわたって加茂谷で預かることになるのだから、とても気を遣うし、パワーがいる。この受入れはどこの地域でもできることでは到底ないと思う。
毎年、学生には加茂谷に何か“モノ”と“コト”を残してもらうようなプランを加茂谷から提案するのだが、去年は2トンもあるピザ窯を作った。このピザ窯が今年だけでも、どれだけ地域に貢献したかは計り知れないものがある。
さて、今年は何を作るのかと思っていたら、今年は、「かまど」と「ホタルの里」に決まった。
加茂谷の10ヵ町村の中に、水井町という場所がある。去年もこの村にピザ窯を作った。今年のかまどとホタルの里もこの水井町に作ることになった。柳沢さんはこの村の総代だ。
かまどは、自主防災のために作られる。いつくるかわからない災害に備え、家屋が水に浸かっても、外でごはんがいつでも作れるようにという計画だ。
ホタルの里は村の景観づくりも含めてだが、後世に残るものを作るためでもある。水井町は移住者の受入れにも積極的で、3年間で3家族を受入れている。3年前1人だけだった子供は今では11人になった。その子供たちにホタルを見せてあげたいし、ホタルがいる村というのは響きだけでも素敵なものだ。
そして、なんと言ってもこの農業ボランティアで学生たちは、全員ではないが民泊をする。この民泊体験は、学生たちに感動を与え、また受入れる側にとっても感動を与える。短い期間ではあるが学生たちは、人と人とのつながりの大切さや地域の人の温かさを感じるのだ。
武蔵野大学の農業ボランティア受入れは4年目が終わったが、簡単なことではない。受入れ農家の高齢化や限られた作業の中で、意識を常に学生に注がなければならない。受入れ困難と感じている人もいる。しかし、できない理由を並べたらできないのである。できるようにやっていかんかというのが加茂谷のスタンス。それが、私たちのやり方なのである。
秋といえば・・・
秋といえば、スポーツや食欲、読書の秋など言うが、加茂谷では秋祭りやスポーツ大会、芸能祭など、地域の行事が目白押しである。
地域おこし協力隊として、地域の行事に参加することは当たり前だし、その土地に住んでいる者としては当然参加するものだが、私の場合は拒否権がない・・・(笑)
体協のソフトボール大会には、7番サードという微妙な打順で出場させられるが、私は、今までずっとサッカー小僧なのである。小学校から高校まで部活動はサッカー部に所属しており、言わば手は使ってはいけないスポーツの代表格である。野球やソフトボールの経験は皆無でむしろ嫌いである。
だが、地域の人から来る連絡は、「〇〇日20時 グラウンド集合」である。断る理由もなければ、行く理由もないのだが、こういうものに参加する大切さは、ヒシヒシと感じている。
今までの人生なら、面倒くさいとか、用事があります。とか言っていたかもしれないが、それでは、ダメだなと。若い時の苦労は買ってでもしろと言われたこと。せっかく誘われたことは、苦手なことでもチャレンジすることが、田舎都会関係なく信頼関係に繋がっているのだなと感じている。
そして、今年は秋祭りの余興で三味線を弾かせてもらった。若いうちに芸の一つでもあったら重宝されるぞ。という言葉に抗うことなく始めた三味線は、月に2、3回お稽古に行く程度ではあるが、今回何とか地域の人の前で発表をすることができた。
最初は、面倒くさいと思っていたことでも、始めてみると面白かったり、他では得られない経験をすることができたりする。これらすべてが、山下さんに言われた、“若い時の苦労は買ってでもしろ”に繋がっていると私自身は感じている。
ブラックホールみたいな人たち
私が、一番お世話になっている、加茂谷元気なまちづくり会のメンバーである山下さんと柳沢さん。私が、加茂谷という地を任地として選んだ決め手は実は、この2人だ。
この人たちのそばにいたら面白いだろうなと思わせてくれたし、そのオーラがあった。そして、すでに加茂谷はおもしろい。私は、この地域を選んだことに関しては胸を張れる想いだ。
左:山下さん 右:柳沢さん
出会った人たちを虜にし、この人たちに引き込まれていく。まるで、ブラックホールのように吸引力のある人たちだ。加茂谷は彼らが活動を始めてから、13家族移住者(約50人)を受入れている。
加茂谷元気なまちづくり会は、移住定住や農業、へんろ道の活動など、加茂谷の未来と今を考えて活動を行っている。大阪や東京の移住フェアでブースを構えれば、明らかに行政とは違う、おっちゃんたちがブースを構えていることに違和感を覚えるが、多くの移住希望者が話しを聞きに来てくれる。彼らの活動に耳を傾け、誰しもが彼らのファンになっていくのだ。
私は、そんな彼らの活動を一番そばで見ているし、共に活動をしていることがとても嬉しくて誇りである。
地域おこしは、人づくりからとはよく言うが、こういう人たちがいる地域の未来は明るいと感じる。そして、彼らから何を学び、何を伝えていくか、そして何を行っていくかが、今後の私たち若い世代に与えられた大きな機会であり課題なのだと思っている。