ツシマヤマネコと共生する地域社会づくりにむけて
今年1月に、環境省主催のツシマヤマネコ保護増殖検討会にオブザーバーとして参加しました。
MITでは、「ツシマヤマネコと共生する地域社会づくり」に向けて、昨年度、環境省からの業務を受託しました。その業務の進捗や検討内容について報告させていただきました。
野生のヤマネコ
絶滅が危惧されるツシマヤマネコは、対馬の人々にとってどのような存在なのでしょうか。
地元農家さんへのヒアリング
昔は、ヤマネコを捕獲して肉として食べたり、毛皮にしたり。つい最近まで、飼っている鶏の飼育小屋を破って食べられるので、罠をしけて捕獲したり。ヤマネコは保護の対象ではなく、煙たいものだったのです。
ところが最近では、ヤマネコが大事だと考える人が増えてきています。なぜでしょうか? ヤマネコが対馬の人の利益を生む存在として認識され始めたからです。
例えば、地元の農家を中心にヤマネコ保全と米作りの両立を目指した取り組みに成果が出始めており、ヤマネコがいることで米が儲かるというストーリーが確立されてきているのです。
ヤマネコと共生する米作りの現場:自主的な基準で認定しているヤマネコ米の田んぼ
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ツシマヤマネコの保護と保全。
保護は手をつけずに守ること。保全は、持続可能な形で利用すること。希少な生物だから保護して、人が手をつけてはいけないというのは、里地里山で昔から生き物と共存・共生してきた対馬の暮らしには合いません。
人里に降りてくるヤマネコ
地域側の立場で考えると、保全をいかに進めていくかが重要だと思います。すなわち、ヤマネコの個体数などに影響のない範囲で、対馬ブランドとしてヤマネコを活用した産業を発展させること。対馬の人の豊かさを高めていくこと。
ヤマネコがいることで生産している農林産物が高く売れれば、ヤマネコを守ることが当たり前になります。ヤマネコがいることで対馬に人が来るようになれば、ヤマネコを誇りに思います。
ヤマネコの脅威となっている、交通事故や犬・猫問題、くくり罠による錯誤捕獲などは、意識の問題であって、ヤマネコのことを考える人が増えるほど、なくなっていくと思います。
日本は、昔から生き物とともに暮らす文化です。自然共生こそ持続可能な社会。対馬をモデルにそういった社会づくりに関わって行きたいと思います。
昨年度、MITでは環境省からの調査を受託して、様々な農林産物とヤマネコとの関わりを調べました。
調査の様子
そこで見えてきたのは、しいたけ原木を切り出した場所の荒廃です。原木調達の現場では、鹿の食害によって切り株から萌芽更新が進まずに、樹木が枯死しています。
芽が生えても、鹿に食べられてしまう。何度も目を出そうと頑張りますが、食べられてしまう。やがて樹木は枯死します。
現場一帯に下草もなく、土地が乾燥し、土砂が流れ、荒廃しています。下草がないので、ヤマネコの餌であるネズミがいそうにない。
土砂崩れも発生してます。人にとっても脅威となる。
防鹿ネットを張った場所は、萌芽更新も進み、下草もはえ、多様な植物が生育している。
防鹿ネットを張るのは、手間・コストが大きく、張っている人が少ないのが現状
原木の切り出した場所に防鹿ネットを張り、継続的に植生回復に貢献しているしいたけ農家さんを応援するために、その取り組みを紹介し、発信して、販売しているしいたけを高付加価値化できないか、というのがアイデアです。
対馬のしいたけは最強 “森のアワビ”と言われています。
他にもヤマネコと関係するような農林産物が色々と見つかってきました。
ヤマネコの暮らす森を適切に管理して、様々な生き物が暮らす豊かな環境を作っていくための仕掛けを提案して行きたいと思いますし、そういったヤマネコと共生を目指す活動を応援する商品をMITも物販で取り扱って行きたいと思います。