「革人」池田崇物語・その8 ~客に媚びない~

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執筆者 池田崇
所 属革人

2019/01/28

人は宝

 

 自分ひとりでやれる事には、限界がある。手作りに拘ってるから、絶対に人の手はいる。

 人が作って接客して、モチロン使うのも人である。いくら文明が発達しようと、インターネットやAIが不可欠な時代になろうと、履き物が無くなることはないと思う。

 少なくとも、自分が生きてる間は。だから手作りに拘り、素材に拘り、接客に拘る。指先一つで大概の物は買えてしまう便利な世の中やけど、PCやスマホの画面では質感までは分からない。けど、そこってめちゃ重要やと思う。バーチャルはリアルには敵わへんから。

 

人は宝

 

値引きはしないし、客に媚びない

 

 革人では、基本的に値引きは一切しない。

 自分たちが一生懸命に作って、例えば1万円と決めた物なら1万円以下では売らない。なぜかと言うと、あるお客さんが1万円の革ぞうりを1万円で買ってくれて、帰りがけに「ありがとう」と言ってくれたとする。

 また別のお客さんが、「この革ぞうり、値引きしてよ」と言われても、「はい、いいですよ」とは絶対に言わない。

 正規の値段で買ってくれて、「ありがとう」まで言ってくれた方に申し訳ないから。これは身内や友達や知り合いであっても同じ。身内でも値引きはしない。友達でも自分から、「買ってくれ」って言った事は一度もない。

 付き合いとかで無理に買ってもらうのは嫌やから、欲しいと思って買ってくれたら、「ありがとうございました」やねん。

 

革ぞうり

 

 以前、「値段をまけてよ!」ってあまりにもしつこいお客さんがいて、困った事があった。

 値引きしてでも売上を上げたい自分と、一円でもまけたら負けや!っていう自分との葛藤。でもやっぱりまけたらアカンと腹に決めた自分は、お客さんにこう説明した。

 

「お客様、我々は手作りにて一生懸命に作っています。お値段はそれに見合ったものになっています。お客様がどうしても値引きをしろとおっしゃられるなら、そのぶん手抜きをしてお作り致しますが、それでよろしいですか?」

 

と。そのお客さんは苦笑いを浮かべながら、

 

「手抜きなんかされたら困る。ちゃんと作ってくれ」

 

自分はすかさず

 

「では正規の値段で一生懸命に作らせていただきますが、それでよろしいですか?」

 

仕方なく頷いたお客さんだったが、完成してお渡しし帰りがけに

 

「このぞうりいいな、ありがとう!」

 

と言ってくれた。

 買ってほしいからといって値引きに応じたり媚びたりは、絶対にしない。知り合いだろうがそうでなかろうが、商売においては全部一緒やと思うから。

 これはあくまで自分の商売哲学やから、そうでないという方もいらっしゃると思うけど。

 

『いらっしゃいませ』は禁止

 

 革人では接客用語の基本中の基本、「いらっしゃいませ」は禁止です。

 お客さんが来店した場合は、「こんにちは・こんばんは」です。理由は、「いらっしゃいませ」って言われたお客さんが、「いらっしゃいました」とか言いますか?

 何も言えないんです。それどころか、普段の日常生活であまりにも言われすぎて当たり前になってて、もうなんとも思わないんよね。スーパー・コンビニ・レストラン・銀行・洋服店・ガソリンスタンド…。もう、言葉の効力がほとんどないと言っても過言ではないと思っています。

 だから革人では、「いらっしゃいませ」ではなく、挨拶である「こんにちは」です。お店に入って店員さんから「こんにちは」と言われれば、「こんにちは」って返したくなりませんか?もちろん全員のお客さんから返事が返ってくるわけではありませんが、2人に1人は確実に返ってきますね。

 

 最初が挨拶から始まっていますから、接客がしやすくなり、お客さんもリラックスしていただけるんじゃないかと思います。

 そこからコミュニケーションが取りやすくなって、商品説明だけの接客ではなくて、「どちらから来られたんですか?」、「美ら海水族館へはもう行かれましたか?この後はどちらへ行かれるご予定ですか?」、「お食事はお済みになられましたか?もしまだでしたら、美味しいお店をご紹介しますよ!」と、ドンドン会話が広がりコミュニケーションが弾んでいきます。

 お客さんが欲しいのは地元の情報です。革人ではただ商品を売るだけじゃなくて、美味しいお店やキレイなビーチなどのオススメスポットを教えてあげるのも、サービスの一環だと思っています。

 

接客

 

自分たちで出来ることは全てやる

 

 革人では、商品企画・仕入れ・製作・宣伝や営業活動・接客・精算まで一環して行っている。簡単に言えば、自分たちで作って自分たちで売るのです。

 自分たちで作っていますから、お客さんから商品のことを質問されても即座に回答できますし、何かトラブルがあってもすぐに対応できます。

 素材や材料・道具や機械など、分からないことがあればインターネットで調べたり、そこの会社やメーカーに電話をして聞きます。得た知識はスタッフ全員ですぐさま共有します。

 

 革人の仕事は、主に革ぞうりのベース作りをする工房と、接客・革ぞうりの組み上げ製作・会計をする店内とに分かれていますが、スタッフは全員すべての仕事ができるような体制を目指しています。全員がオールマイティーに出来れば、メンバーが変わっても安定した接客や商品作りが出来るからです。

 店の棚や机や看板も自分で作りました。もともとは工作事は好きなんで、作れそうなものは全部自分で作ります。材料代だけで済んで、安上がりやから。プロに任せた方が確実でちゃんと作るでしょうけど、DIYは楽しいんで。

 作りたい物のイメージをし、簡単で適当な図面を書いて作りますから、イメージ通り完成した時の達成感がたまらんのですよね〜。ちょっとぐらい歪んでても、これぞ手作り!って荒削りな感じがまたいいんですよね。

 

「達成感」へ つづく

 

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