青いくせに甘いみかんの初収穫。島と山の秋の楽しみ方〜島と山との2拠点生活
- 執筆者 上野仁美
- 所 属Nurse and Craft 合同会社
2020/10/16
朝晩涼しくなる頃=みかん始め
季節が進み二十四節気でいえば、寒露。
「朝晩が涼しくなりましたね」
とあちこちで聞こえてきますが、私の暮らす瀬戸内海に浮かぶ大崎下島では
「みかんの出来はどうかいね?」
もよく聞こえてきます。
山から見渡す呉市豊町大長。谷の左はみかん畑、右は放棄地。
大崎下島は、「大長(おおちょう)みかん」の産地です。今はちょうど極早生(ごくわせ)みかんの出荷が始まり、少し慌ただしくなり始めました。
みかんの島にやって来て、あたり前のように聞かれるみかんにまつわるワード、やっと私も少しずつ分かるようになってきました。
では極早生と早生の違いはなんでしょう? それは、収穫時期の違いで、収穫が早いものから、極早生(ごくわせ)・早生(わせ)・中生(なかて)・晩生(おくて)と分けられています。極早生の中に、「日南1号」「宮本早生」・・・となかなか馴染みのない名前の品種が色々あるようです。
収穫した極早生みかん
おしりじゃなくて、顔っていうんじゃ
9月下旬、島に来て初めてのみかんの収穫!!地元のみかん農家さんのところで極早生みかんの収穫体験をさせていただきました。
収穫させていただいた頃は、まだあたり一面、畑は青いみかんでいっぱい。その中から薄っすらと黄色く色づいたみかんを探していきました。
寒暖差が出てくると、みかんは黄色く色づいてくるんだそうです。最初に色づき始める部分は、枝と繋がっているところの反対側。
「おしりからオレンジ色になるんですね」
と農家さんに話すと、
「おい、これはおしりじゃなくて、顔っていうじゃ」
と笑いながら言われました。色づく部分が収穫の判断にはとても大事なので、みかんの「顔」と呼んでいるそうです。
実は、もう1個先ほどの私の発した言葉で叱られました。
「オレンジ色じゃなくて、みかん色と呼びなさい」
と。それだけみかんのことが好きなんだなぁと実感できます。その後もついつい
「オレンジ色」
と言ってしまうのですが、その度に
「おい!オレンジ色じゃねぇ」
と笑いながら指摘を受けつつ一緒に収穫をさせていただきました。
この農家さん独自の言い方なのかもしれませんが、皆さんも今日からみかん色と呼んでくださいね。
農家さんから、みかん収穫のポイントをレクチャー中
青いくせに甘いみかん
極早生みかんはほぼ青い状態で出荷されます。農家さんからは「青いくせに甘いみかん」と教えていただきました。
実際に食べると、まさにそれ。見た目とのギャップに驚きでした。皮をむいた時の香りも爽やかで酸味も程よくあります。
自分の暮らすまちを山の上から眺めながら、心地よい風を感じていただいたみかんは最高でした。
立つ位置もポーズも全て農家さんに指定されて出来上がった一枚。さすがです。
黄金の島から紅葉する島へ
みかん島は、敷地が少なく急斜面に石を積んでできた段々畑が広がります。ここで収穫したみかんをさすがに歩いて運ぶのは大変なので、運搬専用のモノレール「モノラック」が使われています。このおかげで、山の上から下までスムーズにたくさんのみかんを運ぶことができます。
じゃあ、人間はどうするか・・・想像にお任せします。
みかん最盛期になると、あたり一面がみかん色に変わるためこの島は「黄金の島」と呼ばれていたようです。現在は
「山が紅葉するんよー」
と聞きます。紅葉と聞くと秋らしくていいなと思うのですが、この島では特別な意味があります。黄金の島の時代は、山がみかんだらけだったので、紅葉する木など存在していなかったのです。
しかし、どんどんみかん農家は高齢化で減り、放棄された畑が増え、雑木で覆われていく山。この雑木が秋になると紅葉するんだそうです。紅葉の背景には寂しい現状が潜んでいます。
これからみかん最盛期を迎えると、実際にどんな風に周囲の山が色づくのか、自分の目で確かめたいと思います。
斜面に沿って続く石段。綺麗に積み重ねてあり、芸術です。
黄色と緑ともふもふはお好きです?とっておきの秋。
青みかんの木の中に黄色く色づきだしたみかんのコントラストに癒されていますが、同じような色味が山の方でも。
稲刈り前の色づいた田んぼやセイタカアワダチソウとススキの生える道です。この緑と黄色になんだか惹かれるんです。更にもふもふした草が風で揺れる姿はずっと眺めておきたい光景の一つ。
2拠点生活の楽しみは、島と山との自然の違いや四季の変化が楽しめること。島から山へ行くと、鮮やかな自然が広がっていて、ハッとします。
セイタカアワダチソウとススキで生い茂る田んぼののり面。
私の好きなものを紹介しましたが、みなさんは、とっておきの場所や風景がありますか?
人にわざわざ言うまででもないけど、好きなもの。都会暮らしの私の友人は最近、虫の声が流れるBGMをわざわざダウンロードして聞きながら寝ているようですよ。
先日その友人と一緒にリアルな虫の声を聞きながら田舎で寝た時は、とっても喜んでいましたが、翌朝は
「録音しとけばよかったー」
と嘆いていました。これから深まるいなかの秋を楽しみに出かけてみませんか。
山の家から眺める黄緑のグラデーション。コメの品種が違うと色づきも異なります。