田舎の冬の過ごし方「冬は何したらええが⁈ 」〜その②里山整備&狩猟〜
- 執筆者 吉田晶子
- 所 属
2023/05/19
春らんまんは過ぎ、季節は時折汗ばむ陽気の初夏に入りつつあります。
にもかかわらず「冬の過ごし方」て・・・ ごめんなさい! 前回に続いて冬仕事について書かせていただきますが、今回はふたつのテーマをひとつにまとめて、これで最後にしたいと思います。
里山整備。全てはつながっている!
前回の冬仕事は原木しいたけのコマ打ちでしたが、山の整備はここからつながっていきます。(前回記事はこちら )
コマ打ちした原木の置き場所は、直射日光が当たらない木陰でないといけませ ん。 そして置き場所を探す中最適な場所を見つけたのですが・・・
ジャングル状態。普段用がないのでほとんど足を踏み入れない所です。
ここの草刈りと枝木払い、雑木を切ることがきっかけで、改めて周囲を観察してみると・・・裏山は荒れ放題で杉の幹も雑木に覆われています。
昨年は家のリフォームから始まり、畑を開墾し農作物を植えるところまでは漕ぎ着けたものの、裏山のことは気になりつつ、すっかり臭いものに蓋をしたままでした。
山をきれいにしたいと思っても家のDIYと同じで、したことがないことは何から手をつけたらいいのかわからないものです。
そんな時、今のわたしにとってめちゃくちゃタイムリーな講座を見つけたのでした!
里山整備体験講座
うちから16キロほど町に近い場所にある、「高知県立森林研修センター情報交流館」が主催するチェンソーの使い方の講座とのシリーズ開催で、基本的なことを体験しながら、じっくり学ぶことが出来る講座でした。
里山整備とは残したい木と刈りたい木を整理しながら伐採していきます。
早い話、木の断捨離ですね! そこそこの太さの木はノコギリ、枝木は剪定バサミ、そして割と太めの木はチェンソーで伐採します。そんな基本中の基本なこと、意外と知らなかったりしました。
こういう機具や工具を用途に応じて使いこなすことが、田舎暮らしに必要なんですよね。改めて実感しました。
これまできれいに整備された山しか行ったことがありませんでしたが、当然と言や当然。荒れた山になんかには普通足を踏み入れたくありません。ですが、自分の家の裏山が荒れていたら話は別ですよね。
どんどん山暮らしの深みにハマっていってるような気がします(笑)
軽トラを買った時にオプションで譲り受けたマイチェンソーを持参。
メンテナンスや目立てのやり方も教わりました。
指導くださった、森林整備グループの「森の元気!お助け隊」のメンバーの皆さま、情報交流館さん、ありがとうございました!
絶賛実践中です!
ペーパーハンター
四万十に移住してきた当初、友達の影響もあり、講習を受けたら誰でも合格するという話からわな猟の資格を取りました。
ですが資格を持っているだけで何もしていない、まさにペーパードライバーならぬ実質ペーパーハンターです。
狩猟免許には銃とわなの2種類があり両方持っている人もいますが、わなだけなら許可申請や登録料などの諸費用も抑えられるため、とりあえずわたしはわなだけ持っています。
わたしが住んでいる高知県香美市は県の中心部にありながら、シカの数がすごく多くて有資格者も多く、せっかくそんな地域にいるならちゃんと捕ってみたく、猟友会の紹介でベテラン猟師さんの現場に同行させていただくことになりました。
わな猟の極意
まずはわなを仕掛ける現場に関してですが、シカが現れる所ならどこにでも掛けて良いかというとそうではなくて、山にも所有者がいます。
自分で山を持っていれば自由に掛けても良いですが、ない場合は所有者の許可が必要です。もちろん山には鳥獣保護区もあり、仕掛けてはいけない区域もあるのでそれなりの下調べが必要です。
今回はうちから1キロ程度の近場にある、ベテラン猟師Kさんのフィールドのお山に連れていってもらいました。
わな道具一式を急勾配がきつい山に運ぶには運搬車が必要になります
けもの道を探します。
「ほら!シカが通ったあとがわかるろ?」
と、師匠のKさん。
・・・いやいや、言われればそうかもと思うけど、自分で見分けるとなるとそう簡単ではありません。確かに糞もありますが、教えてもらわないとスル―の可能性が高いです。
笠松式というわながKさんの愛用具。
わなの仕組みを習い、シカに見破られないよう注意を払いけもの道に仕掛けます。
Kさんが持ってきたわなは4つ。最初は師匠が仕掛けているのを見ながら、残り3つを師匠に補助してもらい、わたしも仕掛けてみました。あとはシカが掛かってくれるのを待つのみです。
実際は掛かりそうな場所にわなを仕掛けるだけのシンプルな作業と言えばそうですけど・・・。
その「掛かりそうな場所」の見極めこそが1番重要で、昨日今日始めた人がその見極めができるとは到底思えないと頭を抱えてしまいました。
わなを仕掛けたところはご覧のとおり風光明媚な景観が楽しめるとても素敵なお山です!
驚くべき結果に!
Kさんから、
「掛かってへんか時々見に行ってみぃやぁ」
と言われてお別れした2日後のことです。
朝8時頃に電話が鳴り、
「掛かってるよ〜!」
とのKさんからの明るい声!!
えーーーっ!もうですか?! ほんとにビックリでした!!
早速現場に行ってみると・・・
おぉーーーーーー!!! 確かに掛かってます!
通常わなに掛かった獣はその場で殺し、食肉にする場合は血抜き。食肉にしない場合はそのまま放置でもいいですが、香美市にはジビエ肉の加工業をされている、高知ジビエ工房さんがいます。
なので、連絡をすると来れる場合はすぐに現場に来て、止め刺しと血抜きまでしてくださいます。
危険を察し暴れるシカさん相手に格闘中!
今回獲れたシカは小さいので金槌で急所を一撃のみでご臨終でした。大きな角を持っている雄なんかは銃殺します。
こんな感じの証拠写真を撮って耳か尾っぽを切って役所に提出すると報償金が出ます。
この道50年以上のKさんは年間100頭以上は捕られるそうなので、十分職業として成り立っています。さすが師匠です!
後日高知ジビエ工房さんに捌いてもらったシカ肉を調理して食べましたが、これまで猟師さんからもらった肉とは違い、より「いのちをいただく」という言葉がリアルに感じられ五臓六腑に染み渡りました。
※高知ジビエ工房については公式インスタグラムをご覧ください。道の駅美良布やレストランにも卸されています。
高橋久美子さんの本のこと
以上、2回に渡って山暮らしの冬仕事についてお届けしてきましたが、どの仕事も生業にしている方は大勢いて山では欠かせない仕事です。
なぜ冬にするべきなのか?単純に夏場になると暑すぎるのはもちろんですが、マムシやスズメバチがたくさん現れて危険もともないます。
なので、山に入るのははまだ葉の新芽が出ていない冬にやるのが適しており、時間的に余裕のある冬の仕事にぴったりであるとわかりました。
実際山に入りまだ3月なのにマダニに血を吸われるという事件もありました!(2週間経って感染症の症状は出なかったので大丈夫だったのでネタで終わりましたが・笑)
狩猟に関しては3月で猟期は終わりですが、引き続き害獣駆除ができるので、少しずつやっていこうと思います。
最後にこの記事を書いている時にたまたま読んで、今の自分にとてもしっくりきた本をご紹介してしめたいと思います。
『その農地わたしが買います』
作家の高橋久美子さんというよりも、元女性スリーピースバンド、チャット・モンチーのドラマーと言った方がわかりやすいかも知れません。
高橋さんは現在郷里の愛媛県四国中央市と、東京都の二拠点で暮らされており、東京では文筆業や音楽活動、愛媛では実家のご家族や地元の仲間たちと農業をされていることをこの本で初めて知りました。
彼女は生まれ育った四国中央市の田舎を大学進学をきっかけに出てから、まもなくロックバンドでデビュー、そしてバンド解散後作家になり、長年都会暮らしにズッポリだったのが、本のタイトルどおり、ふとしたきっかけで自分の田舎のとある問題に濃密に関わっていくことになります。
これまで考えもしなかった田舎のルール、しきたり、都会では当たり前なことが田舎では御法度だったりというカルチャーショックの連続や、次から次へと襲いくる試練。それらが山暮らし初心者の自分ともリンクし、リアルに共感できたのでした。
そして、舞台である場所が同じ四国で、そう遠くはない四国中央市というところも!
農地を買って農作物を作るろうということから始まり、田舎のコミュニティのこと、狩猟のこと、種苗法のことなど、田舎暮らしにまつわることが多角的に書かれており、普段の自分の関心事がSNSのような端的な形ではなくて、全部実話のストーリーになっているのがとてもおもしろかったです。
まだ都会に居る田舎暮らしのリアルを知りたい方も、地方に移住されたばかりの方も、都会暮らしと田舎暮らし、両方の視点がある人にとってはあるあるの連続でとても響く作品だと思います。
興味持たれた方はぜひご一読を!
それでは次回の記事はリアルタイムなことをお届けしますね。