古民家を受け継ぐ(3)

2014/05/01

ずいぶんと間が空いてしまいました。

徳島の上板町で製糖業を営んできた伝統的な古民家の改修記録をご紹介しています。

 

これまでの記事は、次を参照下さい。

古民家を受け継ぐ(1)

古民家を受け継ぐ(2

 

さて、今日は設計のお話。

設計の打ち合わせは、2012年6月に始まり、11月までの6か月というやや早い期間で行われました。打合せ回数は17回ですので、月に3回程度、10日に一度は打合せをさせて頂いたことになります。

 

リフォームの場合には、まず実測調査を行います。

 

実測調査

 

家中の間取りを取るだけでなく、高さを測ったり、電気や水道の現状を把握します。屋根裏にのぼって、天井があってみえない、梁の架け方をみたり、筋違が入っているかどうかも確認をしていきます。

 

屋根裏

 

もちろん、床下にも潜って、湿気具合や地貫の入り方などもチェックしていきます。

 

床下

 

調査は一日だけでは終わらず、測り忘れ等もあったりして(汗)、何日もかかって調査をします。

現状の平面だけでなく、梁がどのようにかかっているか等の図面も作成します。

 

図面1

 

図面ができたら、耐震診断の構造計算をして、現状の耐力を正確に把握します。ただし、古民家のため、土台の上に柱がのってはいませんので、通常の耐震診断のソフトでは正確な値が出てきませんので、より高度な構造計算をします。その上で、古民家は、当時加工した大工さんの木の使い方をみる必要があります。曲がり梁の使い方は構造的に問題を発生させていないかとか、長い材を適材適所でつかえているか等、コンピュータでは絶対に解析できない、設計者としての眼で古民家の構造を読み解いていきます。

 

古民家の構造

 

こうした下準備を終えてから、設計に入っていきます。施主さんの希望をかなえつつ、古民家が古民家として構造的にも意匠的にも今以上に美しいものとなるように、プランを考えていきます。

 

設計の中では、模型を作製して、施主さんがよりイメージを持ちやすいように工夫をします。

 

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また、参考となる実際の建物にもお連れし、施主さんに空間体験をしてもらいます。設計者の側は、これまでに素晴らしい空間を体験してきていますので、その空間を施主さんに実際に歩いてもらい、空間を構成する部位の納まりや工夫を説明していきまうs。

 

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古民家では段差をどのようにとらえるかが、キーとなります。少々の段差は健康によい(バリアアリー)という考え方もあるし、バリアフリーという考え方もあります。

 

今回はバリアアリーとい考え方を採用しました。

 

畳の部屋を一番高くし、台所を少し低く、もう一つ一番低い土間空間をそのままとしたため、3つの床レベルがある家となります。

 

空間3

 

 

空間4

 

そうすると、ほこりは高い所から低い所に落ちていきますので、寝室となる畳の部屋がいつまでもきれいで、台所にもほこりが溜まりにくくなります。和室と台所との高さを同じにすると、和室の方にほこりが動くおそれがあります。

 

こうしたプロセスを経て、図面が完成します。

 

図面2

 

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図面5

 

この計画では、現状図面A2サイズ20枚、改修図面A2サイズ30枚、施工用詳細図A3サイズ10枚、他計算書A4サイズ50枚程度の設計図書となりました。

 

この位描いていると、工務店も勇気をもって安く見積をしてくれます。どうしても、リフォームは工事中に変更があったりと、なかなか安く見積をすることが怖い面があります。設計者の側が丹念に調査をし、詳細な図面を描いておくことで、工事金額を安くおさえ、かつ工務店にとっても安心して工事に集中できるというメリットが生まれてきます。

 

 

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