先日、林業インターン5日間が無事終了しました!今回は5名の方に参加して頂きました。
ニュースでもご存知の通り、1月末は全国的に100年に一度という大寒波に見舞われ、土佐町もまたひどい積雪と凍結に見舞われました。林業インターンは大寒波の直前での開催だったのでなんとか開催できましたが、やはり寒いことには変わりなく、気温は氷点下、道路は凍結、現場には積雪…と、なかなかの厳冬状況。高知=南日本=暖かいというイメージは一体どこへ。
堂々の氷点下。手前の田んぼがカチンコチンに。スケートできないかなぁ
はい、では早速チェーンソー
林業インターンの最初の難関は、なんといってもチェーンソー。もちろん、ほぼ全員が初めての体験です。
まずは解体してみる
まだこのときは余裕。この後が問題です。
こんなに動力が大きいものを手にすることって普段の生活では滅多にないし、使い方を一歩誤れば大惨事につながる代物です。ほとんどの林業家さんは一度は怪我をするか、もしくは仲間が怪我するのを見てこられています。その怪我の体験談を、淡々と何でもないことのように話すさまが逆にリアルで、現場の厳しさや働く人の覚悟の大きさを物語っています。
研修生は、まず丸太カット体験からスタートするのですが、事故の話を聞いたあとということもあり最初は皆逃げ腰。でも、指導者の指示に従いさえすれば、怖がりながらも皆丸太をカットすることができます。最初から堂々と使える人もいれば、チェーンソーの勢いについていけない人もいます。人それぞれですが、最初から上手く使えたら向いている!という物でもない。これが仕事になったら、この重量を担いで斜面を登って一日何十本も伐採して、何年も緊張感を保ち続けなければいけない。そして、慣れてきた頃に事故が多くなる。だから最初の段階で怖いと思うのは、緊張感があるという証拠なので良いことなんです。
傍から見ていて思うのですが、チェーンソーの扱い方にはその人の人となりが現れます。どっしり落ち着いている人、同時にいろんなところを見ている人、素早い人、ゆっくり丁寧に扱う人…。車の運転も一緒ですね。そういうところもチェーンソーの面白さ、深さかなと思います。
最初は人間性がむき出しになるような扱い方をし、→一般的な型を覚え、→またその人なりの、でも熟練した使い方に戻っていくのでしょうか。
過酷な山に試される
林業をするにあたってまずイメージしやすいのは、チェーンソー作業や運搬などの力仕事かも知れません。が、現場で作業をするにあたってまずは山に登らなければいけません。高知県の場合は特に、勾配のある山が多いので、現場に行くときは毎回“登山”です。関係者によると、脚力は従事したら鍛えられるので生来の向き不向きとはあまり関係ないということですが、一方で、
「これはどんな仕事に関しても言えることだけれど、目の前の山を見てああ山に登るの面倒くさいと思うのか、それともよっしゃ山に登ってやろうと思うのか、その違いは大きい」
「自分は一つの現場に入るとき、必ず頂上まで登ることにしている。それが時間のロスを生むとしても、頂上まで登って山を一望すれば山の状態がわかる。山主さんとの会話も弾む」
とのこと。
林業はしんどい仕事です。体力的にも厳しいし、危険なことも多い。でも、そのしんどさをどう捉えるのか?成長のチャンスと捉えるのか、面倒なことと捉えるのか。林業は仕事への姿勢を大きく試される場面が多々あるのではと思います。林業関係者の方々と仕事の話をしていると、仕事内容の話よりも仕事哲学の話に繋がることが多いのです。これは林業に特徴的なことで(他の業界ではそこまで見られない)、何故だろう??とずっと謎だったのですが、日々山に試されている人たちの覚悟や決意がそこに表れていたんですね。
山肌(雪)が透けて見えるのがちょうどいい間伐具合だそうです
これから間伐していくエリア
今回行った現場もなかなかの勾配で、途中からは道がなく自分で一歩一歩足場を見つけて斜面を登っていきます。しかも、雪が積もっている!現場に到着するまでに息が切れてしまうのですが、プロの方の身のこなしの軽いこと!ご年齢60歳を超えている方も…。
「こんなにやりがいのある仕事はない」
私はまだ、林業の魅力のすべてを言葉でうまく表現することができないので、インターンシップの説明会などではまずは一度現場を見てもらえるとわかる、と説明しています。
一本の木を切り倒すときの流れるような手つきの美しいこと。決して力任せではない、自然を見つめ、自然に添った、謙虚な業。それを見ていたら、林業というのは尊い仕事、神に近い仕事なのだということに気付かされます。一つの儀式を見ているかのようです。
現場に緊張感が走り、静けさが深まる瞬間
林業家さんたちは「木の断面を見ると、その人の仕事ぶりがよくわかる」と言います。私は素人なのでもちろん、まだ判別はできませんが、それでも「本当に綺麗!!」とうならずにはいられないような美しい断面を今回見せて頂きました。誰が見ても伝わるような素晴らしさが達人の仕事には潜んでいます。まさに細部に神宿る。
あっという間に伐採→玉切り→運搬まで完了
そして山で働く人の優しさ、穏やかさ。私は当初、山の仕事は厳しい仕事なのだからもっと罵声が飛び交うような現場や迫力のある方々を想像していました。もちろん、命の危険と常に背中合わせの現場なので罵声が飛び交い厳しく怒り怒られることも絶対あるでしょう。でも実際は皆さん優しく、ユーモアを交えて丁寧に教えて下さり、例えうまくいかなくてもフォローして下さり、一連の動きが柔らかい。山ではいろんなことが起こる。その全てを受け入れている感じがします。
自然は厳しい。人間の力でコントロールできるようなものではない。そのなかで仕事をさせてもらっている。そして人間に大きな恵みを与えてくれる。山にお返しする。それは川や海に繋がり、地球全体、次の世代に繋がっていく。
木を一本間伐すると山がすっきりするのが見た目にもわかる。風と陽光の通り道ができる。山が喜んでいる。そして、自分の植えた木が何十年もかけて成長する。自分はその成長した木を生きている間に見ることはできないかも知れないけれど、確実に次の世代に渡すことができる。
「こんなにやりがいのある仕事はない」
と林業家さんたちは言います。
たった5日間ではありますがその真髄を見せて頂きました。貴重な体験でした。
「切り株と枝葉は山のもの。本来は山に返さなくてはいけない」とのお話
山の神様のようです