地域おこし協力隊は燻されるのが好き?
2016/02/15
- 執筆者 石田朋久
- 所 属四万十町地域おこし協力隊
突然ですが、車にはガソリンを入れます。家の暖房はファンヒーターと石油ストーブを使っているので灯油を買います。四万十町に移住して一年目の冬にファンヒーター1台だと家を温めきれなかったのでもう1台購入しようかと思いましたが、真冬に停電とかになった場合にファンヒーターだと動かなくなって大変なので、電気が無くても大丈夫なストーブにしました。料理をするのはプロパンとかカセットボンベのガスを使います。電子レンジもあります。
どうしていきなりこんな話から始めたのかというと、都会で生まれた自分は「燃料」というとガソリン・灯油・ガス・電気というのが当たり前だと思っていたのに、この四万十町では薪や炭が燃料として当たり前のように使われていることに気が付いたからなのです。
薪を利用する場合は山に行けば柴はほぼ無限というくらいに大量にあって、これを燃料として使うことは理に適っていると思います。山から木を伐り出して薪割りをする。割った薪を積み上げて乾燥させる。国道沿いでも薪を綺麗に積み上げているお宅がたくさんあります。この積み上げる技術もなかなかのものです。
「むかしむかし、おじいさんは山へ柴刈りに」というような昔話があったように思いますけれど、あれを子供の頃は山に芝生の広場があっておじいさんは芝刈りに行くのだと思っていたのですが、そんなわけがありませんよね。
もう一つの燃料は「木炭」。
都会では休日に野外で料理をする時なんかに炭を使うことがあったし、焼肉店などに行くと無煙ロースターの中で赤く燃える炭も目にすることがありました。が、普通に家庭で日常的に炭を使うということはなかったですね。
熾す手間もかからずに、スイッチひとつで簡単に点火したり温めたりできる便利な暖房器具や調理器具があるのだから子供の頃からそのような器具を使ってきました。もちろん四万十町にも電気は通じているし、ガスも灯油も使います。しかしいつの間にか自然に薪や炭という燃料が自分の周りでも普通に使われていて、今ではもっと有効に活用していこうと思うまでになっています。
まず、一番最初にそう思ったのがピザ窯です。ピザを焼くために薪が必要で、窯を暖める予熱段階からかなりの量の薪を使用します。最初は製材所で不要になった木端を貰ってピザを焼いていましたが、杉や桧ではなかなか火加減が難しいことが判り、地元の人が「楢の木が良い」とか言うので試しに入手して使ってみたら確かに美味しいピザが焼けました。
そしてずっと関わっている炭窯の復興。炭窯についていろいろ調べたり、炭焼きをしている人に会ったりしているうちに炭を分けてもらったりして自分でも木炭を使ってみることにしました。今住んでいる住宅には囲炉裏はありませんが、都会と違って屋外で豪快に煙を出しながらサンマを焼いても苦情は出ないし、小さい七輪を食卓に置いて何かを炙りながらいただくということもできます。使ってみて初めて判ったことですが、ホームセンターなどで売っている外国産の木炭と違って十和で焼いた炭は火が着きやすくて燃焼中におかしな匂いや煙も出ません。昔から品質を認められて名を馳せた十和産の炭の実力を目の当たりにしました。
あと、集落の集まりで寒い時期に屋外で何か作業したりすることがあると、皆さんすぐに焚火をします。藪の中から倒木を引っ張ってきたり、自宅で使う薪を軽トラに積んできたりして、ちょっとしたスペースで火を焚いて暖を取るのです。少しの紙と杉の落ち葉を着火剤にして手早く火を起こし、火力が安定した後はかなり太い枝なんかも豪快に投入して燃やし、そして最後に山火事にならないようにきっちり火の始末をするまでの作業が手馴れていて無駄が無いのです。
もう一つ、最近始めたのが五右衛門風呂プロジェクト。
この五右衛門風呂は、昔役場で購入して小学校で活用していたらしいのですが、その小学校も廃校になってしまい最近は使われないままで眠っていた物を、今年4月10日から開幕する「奥四万十博」で有効活用できないかということで引っ張り出してきたものです。かなり古い物だと思いますけど、立派な鋳物で作りはしっかりしていて釜と台を合わせると重量は200kg近くになるようです。
十和の地域おこし協力隊と役場の若手職員でテスト入浴も行われました。まず、川のほとりに釜を据えたら清流四万十川から水を汲んできます。そして薪で沸かします。解放感重視の方向で進めるということなので脱衣場はありません。寒風吹きすさぶ屋外でおもむろに服を脱いで間髪入れずにお湯に飛び込むのです。
雪の中で入浴している画が欲しいということで、全国的に数十年ぶりの寒波がやってきて各観測所で「観測史上最低」という記録が続出した日にもテストは行われました。どんなに寒い日でもお湯に浸かってしまえば大丈夫で、五右衛門風呂で一旦温まった体はなかなか湯冷めすることもないようです。
この五右衛門風呂は四万十町昭和にある「ふるさと交流センター」に遊びに来たお客様に自由に使ってもらえるように計画中なのでお楽しみに。
四万十五右衛門風呂
最後に、ピザ窯や炭窯、焚火や五右衛門風呂、どれも木を燃やした熱を利用しており、その際には少なからず煙が出ます。直接作業していなくても近くに居てこの煙に当ると体中に燻された匂いが付いて、なんだか自分が燻製になったような感じがするのです。