柳川暮らしが楽しすぎて困ります。 ~イエス・アンドで地域おこしの巻~
2016/05/27
- 執筆者 阿部昭彦
- 所 属柳川市地域おこし協力隊
福岡県の最南部、佐賀県と熊本県に挟まれ、有明海に面した柳川市からこんにちは。柳川市地域おこし協力隊員の阿部と申します。
これまで、柳川の隠れた&隠れていない主役たちについて書いてきましたが、地域おこし協力隊の任期も最終年度に突入ということで、今年度は自分の活動とか感じたことをメインに書いていこうと思います。
さて、タイトルの「イエス・アンド」とは何でしょうか? 聞き慣れない言葉なので知らない方も多いですよね。これは即興劇をやっている知人から教わった言葉です。日本語にしてみると、「それいいね! で、こうやったらもっとよくなるんじゃないの?」。
どんなことであれ自分が何か物事を進めようとする場合、真剣な人・真面目な人ほど「それは違う。そうじゃなくてこうしないと。」って言ったり思ったりしてしまいがち。英語にすると「ノー・バット」になりますね。これは極論すれば、相手を否定して自分の主張を押し通す姿勢です。
即興劇には台本がありません。ステージの上で共演者や観客のセリフや言葉を拾いながら、演技をつないでストーリーを創っていかなくてはいけない。そんなときに「あなたの言っていることは違う。私はこうしたいんだ」なんてやっていたら、いつまで経っても物語は進みません。相手の言うことを受け入れて、そこに自分の言葉をつないでいく。これでしか物語は創っていけない。そこから生まれたのが「イエス・アンド」という発想です。
たとえば社長のところに社員が駆け込んできて「大変です!会社が火事です!!」と言ったとしましょう。普通だったら「うわぁそれは困った」という反応になりますが、イエス・アンドすると、「ちょうどよかった。火災保険でもっと便利な社屋にしよう」「いいね!この機会に別の場所に移転しよう」など、次につながる前向きな発想を得ることができます。
試みにググってみると、ちょうどよい記事を発見しましたのでリンクを貼っておきます。
発想コロコロ塾(仮)【10】会議を面白くする「イエスアンド」
で、我が身を振り返ってみると、「イエス・アンドできていない!!」と気づいて愕然。地域おこし協力隊として活動する中で、いつの間にか「こうでなくては」という気持ちが強くなり過ぎて、「今のままじゃダメ」と現状にダメ出しすることが多くなってしまっていたようです。いちばんダメなのは自分だったという悲しいオチ。ということで、自分がネガティブに見てしまっていたことにイエス・アンドしてみよう!!
①facebookでいいね!をくれるけどイベントに人が来ない。オレって実は友達がいないんじゃない?
これまでは「柳川の人って興味があるくせに少し離れたところから見ているだけで、自分から何かしようとしないよね。殿様がいたから、変化を嫌うというか腰が重たいというか。こんなことで生き残っていけるのか?」なんて思っていました。そこでイエス・アンドしてみましょう。
「それでいいよね。まだ移住して2年も経たない変な奴の言うことを簡単に信じて行動するほうがおかしいよ。興味は持ってくれているのだから、簡単に参加できる工夫をすればいいじゃないか。いま人が来ないのだから何をやってもこれ以上減ることはないし、これから増える可能性のほうが大きいぞ。これは楽しみだ!」
②「地域おこし協力隊なのだから地域のためになることをしてくれよ」って他人事みたい。自分たちのまちのことなのに、こっちに丸投げ?。
これもイエス・アンドしてみましょう。「ちょうどよかった。丸投げしてくれるなら、自分がやりたいことを思い切りできるじゃないか。まちの人だって、きっとこれまでにいろいろやってきたけど結果が出なくて、気持ちが疲れてしまっているだけ。うまくいくところを見せてあげれば、次は一緒にやろうと言ってくれるに違いないぞ!」
③KATARO base 32はやりたかったものからけっこうずれているんだよね。自分で飲食業をやろうとは思ってないし。隊員卒業後もここをベースにして活動しても収入につながらないよ。
KATARO base 32とは昨年12月末に商店街の空き店舗をリノベーションして誕生した創業拠点施設です。キッチン付きのフリースペースとして自由に使っていただける場を提供しながら、空いているときは私がドリンクのみの簡単なカフェとして運用しています。最初に提案したプランは、この建物の中に小さなショップをたくさん開くというアイデアでした。イメージとしては以下のようなものです。
費用などの面から現在のKATARO base 32が立ち上がることになりましたが、これについてもイエス・アンドしてみましょう。
「素晴らしいじゃないか。協力隊になって1年半でこんなに素敵な活動拠点を作ってもらえたなんて恵まれすぎているぞ。おかげで市民のみなさんに顔が見てもらえる場所で活動できるようになったし。何事もこれからだ。来てくれる人の声を聞いても『こんな場所はこれまでなかった』『柳川にはもったいないくらいオシャレな場所だ』って言ってもらっているじゃないか。自分で飲食できないなら、やってくれる人を見つけてくればいいじゃないか。どうやってお金を稼ぐのかは頭の使いどころ。あれこれ妄想するのってオレの大好きなことじゃないか。しっかりここを回すことができれば、きっとやりたかったミニ店舗ストリート構想にもつながっていくはず。まずはここでしっかりがんばろう!」
このイエス・アンドの発想はいろいろなところ発揮できます。風邪を引いても「ちょうどよかった。身体が休めって言っているんだね」、どうしても数学の勉強をする気が起きないときも「うん。その分、英語の勉強をしてしまおう!」などという感じで考えれば、なんとなく気持ちが前向きになりますよね。
私と同じ地域おこし協力隊のみなさんや、まちづくりに力を入れている人たちも、おそらくどこかで壁にぶつかってネガティブになることもあるでしょう。そんなとき、ぜひこのイエス・アンドを思い出してみてください。少しは気持ちが楽になりますよ!
柳川市地域おこし協力隊
KATARO base 32管理人
阿部昭彦
※文中の画像はすべてKATARO base 32と、そこで行われたイベントです。