馬がいる暮らしとは?馬耕を体験しました!
2017/06/22
- 執筆者 友松裕希
- 所 属安芸太田町地域おこし協力隊
例年に比べて、冬の訪れが遅かった井仁の棚田は、まだ寒い日が四月まで続いていました。ようやく春が来るぞ!という感じであったのです。
井仁の棚田の米作りは、四月からはじまることと、冬の間は雪が降り、寒さが厳しくなるので、三月ごろは、特に行事や集まりはありません。
春がはじまる前に、井仁の棚田で、何かできないかなと思っていたところに、伝来以降1500年前続いた農技術である馬耕を体験するワークショップを開催しているという話を紹介していただき、3月末に馬耕ワークショップを開催することにしました。馬耕とは、馬に犂を引いてもらって、田畑を耕すことです。
今回、来てくださった「NPO法人 都留環境フォーラム」さんは、「在来馬の伝統耕作復活プロジェクト」に取り組んでおられます。
現在は、農耕機械により、馬を使った農法はなくなってしまいましたが、田畑を耕し荷物を運搬する働き手であり、糞尿を肥料として用いることで、成り立っていた循環型の農業、馬耕文化を復活させようというものです。全国を回りながら馬耕体験を各地で行ったり、馬耕大会を行っています。
井仁の棚田も、農業機械が使われる前は、米づくりのために牛や馬を各家庭で飼っていたそうです。
この馬耕体験によって、昔はあたりまえだった、井仁の棚田で馬が田んぼを耕している景色を見ることができる。農業体験は毎年、開催していますが、動物が関連したイベントは今までなかったので、新たな魅力として、楽しめるものになるのではないか。米作りをしたことがない人に、田植えと稲刈り以外の作業を伝える機会になるのではないかと思いました。
遠いところから、やって来た馬の耕太郎は、到着した時は初めての場所で落ち着かない様子でしたが、穏やかで優しい目をしたお馬さんでした。僕も普段から、動物に慣れているわけではないので、最初は在来種なので小さいとはいえ、馬の迫力に驚きました。
日本の在来種の馬は、雑草やわらなどでも生きられ、笹の葉も食べてくれるので、山に放てば、山を綺麗にしてくれるそうです。
井仁の棚田は山に囲まれていますが、山の手入れをする余力が現在はありません。機械は時間や手間を省いてくれますが、多機能ではないので、優先順位の低い野良仕事は、どんどんなくなってしまったのでしょう。
体験会当日は、広島市内の親子連れを中心に、井仁地域含めて、約30名の方が参加してくれました。皆さん、馬と接する機会がないので、馬とふれあうことが、どのようなことなのか興味があるようでした。
体験会のメインは馬耕を体験することですが、昔はあたりまえであった馬との暮らしを学ぶことも大切であるため、馬のことを知って、ふれあうことからはじめました。
耕太郎は、たくさんの人に囲まれても、じっとしていて、なでられると目がとろーんとして、リラックスしていました。
好きな草を予想して耕太郎にあげてみたり、耕太郎に乗って棚田を散歩しながら、触れ合うことで、人と馬との距離が近づいているような気がしました。
午後は、実際に馬耕に挑戦。土を耕す前に、道具の犂(すき)を大人二人で引いてみましたが、びくとしません。汗 馬はこれを軽々と引いて、土を耕すのですから、馬の力ってすごいなぁと思います。
実際の馬耕では、馬のスピードが意外と速かったり、思うようにまっすぐいかないので、皆さん苦戦しているようでしたが、土の上を馬とともに駆けながら、土を耕す作業は初めての体験で楽しんでいました。
馬は、田んぼや畑、山に放しておけば、綺麗に雑草を食べてくれます。馬の糞は畑の肥料になり、物を運んだり、土を耕してくれたり、昔の人にとっては、大切な生き物であり、無駄のない生活の一部だったのではないかと思います。
そして、馬とは言葉でコミュニケーションをとることはできませんが、スキンシップや馬のしぐさから馬の気持ちを読み取ろうする行為は、人の心が豊かになり、人と人との繋がりにおいても活きてくるのではないかと思います。
機械は非常に便利で、効率が良いですが、地球の燃料を食いつぶし、壊れれば、ごみとして捨てられます。便利さを追求するのか、無駄のない循環型の社会を追求するのか、現代の人にとって、難しい選択ではありますが、馬とふれあいを通して、今の生活について改した。