京の奥座敷・かやぶき民家の里の伝統食インタープリター
[美山ふるさと株式会社]京都府南丹市(旧・美山町)
美山町自然文化村 館長
美山ふるさと株式会社 常務取締役
高御堂 厚さん
京都駅からJR嵯峨野線の電車に乗って約40分、園部駅からさらにバスを乗り継いで約1時間。そのバスは1日4本だったりして。(今年度から直行便が出るそうです)
バスは少ないですが、車であれば京都駅から1時間40分の距離です
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こんなところが京都にもあるなんて!と驚きながら、同じ田舎者として親近感を湧かせ到着したのが、福井県や滋賀県との県境であり、昔、日本海から海産物が運ばれたという『鯖街道』があった地域の南丹市(なんたんし)、旧・美山町(みやまちょう)。(美山地域の人口:3,985人、1817世帯 2017年2月現在)
地域の中心を流れる由良川
京の奥座敷と呼ばれ、山深く、日本海に流れる川と太平洋に流れる川があるような分水界がある地域です。昔は、林業で栄えた地域ということで、集落にある家々も立派で大きな家ばかりが目につきます。
そんな中で、茅葺き屋根の民家が現れます。茅葺き部分が見える家もあれば、大きなトタン屋根の家もあります。茅葺の張替えなどメンテナンスにはかなりの費用がかかるということで、トタンで覆い茅葺が長持ちするように工夫されているとのこと。
車で走る道すがら所々に茅葺屋根の家が見えました
これだけの茅葺の民家が残っているのは、岐阜の白川郷、福島の大内宿に次ぐ規模だそうで、国の重要伝統的建造物群として選ばれ、昔ながらの茅葺屋根の風景が残っている美しい地域です。
かやぶきの里がある北集落
38棟におよぶ茅葺き住居が現存し、美山を代表する観光スポット
このような美しい日本の原風景を求めて、全国各地・世界各国から観光客が訪れる『いなか』で、いなかビジネスを展開している会社が『美山ふるさと株式会社』であり、その拠点となる施設が『美山町自然文化村』です。
今回の求人は、美山町自然文化村の中にある宿泊施設『河鹿荘』(かじかそう)のレストランを中心に、美山地域に受け継がれる『伝統食』や地域の食材を活かした料理を、『インタープリター』のように仲介役になって、全国・世界の人々に伝えていく人を募集しています。
美山町自然文化村 河鹿荘
環境教育やるフィールドがないかなーと思って美山に
ご出身は愛知県。学生から東京へ出て就職し、生物系の専門学校の先生だったそうです。全国に分校をつくるべくこれまで10回以上も引越したことがあるとか。
平成元年くらいに『環境教育』がアメリカから日本に入ってきたころ、「面白そうだ」ということで、夫婦で務めていた専門学校を辞めて、環境教育を学びに2年ほどアメリカへ。
日本に帰ってきた後、
「環境教育やるフィールドがないかなーと思って、美山に地縁があったので来ました。」
?ということです。
その地縁というのが、美山に芦生(あしう)という近畿では最も広い面積で豊かな自然林が残っている地域があり、そこに京都大学の芦生研究林があって、専門学校教員時代に学生たちを連れて実習に来ていたことと、奥様も学生時代の研究を美山でしていたということで、夫婦共通の場所が美山だったそうです。
そんな美山は、自然度が高く、関西の中では“ほどほどの場所”にあるので、自然体験や環境教育をやっていきたい人にとっては最高の立地と言えると思います。
ネイチャーガイドハイキング
マスツーリズムからエコツーリズムへ
けれど、ホテルマンみたいな仕事ばかりをやっているので面白くなくて、1回辞めたんですよ。そして、自分で自然体験の企画とか運営とか5年くらいして、『帰ってこないか』と声かけてもらって、シメシメと言わんばかりに、やりたいことができるんだったらーということで5年前に会社に帰ってきました。
施設としても自然教育などできるようになったし、エコツーリズムなども協議会がつくられ、美山地域としてもできるようになって、美山町の自然・文化に興味があって、地域と向き合えるようなツアーができればいいなーというこで、ここ5,6年の間で、地域みんながそういう方向になってきています。
さらに、その先があると思っていて、地域が活性化しないと、地域が暮らしていけないと、人が来ないし、やはり、そこに住んでいる人たちが魅力なので、そういったことを中心に据えて、食と森で流入人口増やそうというような取り組みも始まっています。」
と、高御堂さんが移住してきた後も紆余曲折があり、やっとやりたいことができるような環境が整ってきた現在があるとのことでした。
収穫祭
美山に来た甲斐があったと喜んでもらえる『伝統食』を出したい
「ここ3,4年で、外国人旅行客のみならず、インバウンドの修学旅行生が増えています。台湾やタイなどから小・中・高校生が年間500人以上来てくれています。
彼らは、『てんぷらはいらない』と日本料理に飽きてきています。逆に、地域の素朴な料理が楽しく、うれしかったりします。
これは、外から来る日本人のお客様にも、喜んでもらえるのではないかと思っていて。日本料理を出さないわけではないけれど、個人旅行の方も、団体旅行の方も、日本人も、外国人も、喜んでもらえるように、レストランや施設を使って提供できる『食』の選択肢を増やしていきたいと思っています。
鹿のロースト
美山町の特産「京地どり」のすき焼きは絶品
現在でも、美山の素材を活かして山菜やシカ、イノシシを使った和食を提供していますが、美山の家庭で受け継がれている地域の伝統的な料理『伝統食』を、おいしくきれいに提供できれば、みんな喜んでくれて、美山に来た甲斐があったなーと言ってもらえるのではないかと思っています。
出し方とか、料理の後ろにある背景なんかとリンクさせて、食べるそのままの味も楽しめるし、調理方法も楽しめるし、何か物語があればそれも楽しいし。
美山の伝統食について平成21年に調査し、作成した冊子
例えば、正月にお粥(かゆ)をつくるんですよ。この粥には、お餅と小豆が入っていて「やまんば粥」といいます。
地域に山姥(やまんば)伝説があって、その山姥は、正月に子どもたちのためにお餅を川に流してくれるという話で。家庭では正月に「お母さん、川でお餅を拾ってくる」と言って川に行き、餅を拾って、小豆を入れたお粥に餅を入れて子どもたちに食べさせてくれるという風習があります。
こういう風に、ひとつの料理にいろんなお話がくっついていたりするので、そんな話も楽しんでもらったり。?
あとは、『おくどさん』と言われる釜戸で、目の前でごはんを炊いて食べたり。ちょうど施設内に、茅葺屋根の家もあるし、おくどさんもあるので、料理をしながらの体験ができます。
こういったお客さんと向き合うような調理方法だとか、そういう場面をつくって食べてもらいながら、昔ながらを聞いてもらいながら、いろんな伝統食が美山町にはあるので、これをどういう切り口で出せるかを考えていきたいと思っています。
河鹿荘前にある茅葺屋根の体験施設
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とはいえ、現在出しているような出汁からきちっとした和食と、つくる人によって家庭によって味が変わってしまう伝統食を、メニューとしてどう出していけるのかということや、仕入れやコスト面のこと、メニューが変わると店作りや提供の仕方も変えていく必要がある。さらに、忙しい通常業務をやりながらの、新しいことを始めることの大変さがあります。
現在、レストランのスタッフが集まって、まずは業務改善に向けて、月1回の話し合いを始めたばかりなので、これからの取り組みです。
この大変さを一緒に考えて、スタッフみんなで取り組んでいけるように動いていける人を『伝統食インタープリター』と呼んで、新しい職種としてつくっていきたいと考えています。」
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田舎暮らし体験
10代~70代の全世代がいる家族のような職場
その中で「美山町自然文化村 河鹿荘」に関わる職員は約30名。職員の年齢を聞くと、10代~70代までの全世代の方がいらっしゃるとのことで、職員の関係も親子の関係、孫とおじいちゃん・おばあちゃんの関係のようなやりとりがあってアットホームな楽しい職場だということでした。
この職場で働く職員の方にもお話を伺いました。
レストランスタッフのみなさん
美山に生まれ育ち、大阪で働き、河鹿荘の施設ができた平成元年にUターンで帰ってきて、28歳からここで働き続けている石田博司さんは、現在は副料理長としてレストランを支えています。
「田舎に住んでて田舎料理を食べてなかったという世代なんで、帰ってきて美山でとれる鹿とか田舎料理を教えてもらいながらやってきました。ここを立ち上げたときから、どういう風になったらええかと考えて、今までずっと追われて仕事してきた感じがあります。
帰ってきた年に結婚して、子どもができて、一生懸命子育てして、今ではその子どもに子どもがでてきて、亀岡に暮らしてよく遊びに来てくれます。
そんな子どもたちが、帰ってこれるような職場があれば。旅行で来る人は、『いいとこやー』と言ってくれるけど、住むには抵抗があるようで。過疎化が進む地域だけれど、田舎に暮らして生きがいを感じて、美山のことが好きになってくれるような人に来てもらえたらうれしいです。
そして、そういう住みたいという人に手助けしてあげたいと思います。」
と、お父さん世代の石田さんは語ってくれました。
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圧倒的にこっちの方が必要とされていると思うんで
なぜ内定を蹴ってまで美山を選んだのかという質問に
「圧倒的にこっちの方が必要とされていると思うんで。正直、街の中の普通の企業だったら僕ぐらいの人はいっぱいいると思うんです。それやったら人財が少ないところに行った方が何かもっと人のためになると思いますし。僕的にも自然の豊かなところが好きなのでそういうとこも魅力ですし。将来的に言えば、もっとこの場所を売り出せていけたらなと思います。」
と答えてくれました。
仕事内容については、
「フロントの職員なのでメールの予約とったり、レストランの手が足りんかったらサービスに行って、ピザ屋の手が足りんかったらそっちに行って、ツアーがあったらツアーの添乗に行ったりとか、地域の祭りもあるのでそういう所にも行かせてもらって。と、やる内容が多いので、頭を切り替えは難しいけれど、やりがいはありますね。
何か自分で、これがしたい!という想いを持っていればやらせてくれる会社なので、エコツアーとか企画して、やらせてもらっています。
やりたいとなれば、企画をあげて、上司に考えたことを提案して、相談しながらやらせてもらう感じ。一方的にダメということはありません。そういう考えを持っている会社だと思います。」
ということで、この会社にピッタリくるのは「これをしたい!と考えを持って、積極的に仕事ができる人」だそうです。
レストランに関わる仕事は、単調なところもあるので、その中で、変化をつけて仕事をどう面白くしていくか。お客さんが多かったらてんやわんやになるので結構つらいところもあるとか。そんな仕事を面白くしていこう!とアイディアを出して動いていける人が求められています。
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つながりを「よし」としてもらえる人に来てもらいたい
どんな人に来てもらいたいですか?という質問に対して大野さんの視点で答えて頂きました。
「地元と、かなりつながりがある企業としては、そのつながりを『よし』としてもらえる人に来てもらいたい。地元の行事に参加するとか、地元と関係を構築できるとか。一人で生活できる、という人が来てもそれでは生活できない。長続きしない。
職場でも、田舎に生活基盤があるということが大前提になるので、住んだ地域で、地元の方と交流ができることが大切です。
そうすることによって、新たな自分の発見とか、仕事につながる部分も出てくるので、それができる人でないと厳しいかなと思います。」
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と、ちょっと厳し目に映るかもしれませんが、こうおっしゃられるほどに地域とのつながりを大切に捉え、そこを活かして仕事をされている会社だからこその言葉だと思いました。
UターンもIターンも、若者も年配も、それぞれが地域に暮らし、地域とつながりながら、美山のことを想い、「美山のために」と考え積極的に動く姿勢がある『いなか』が美山なのだと思います。
こんな『いなか』で“伝統食インタープリター”という仕事を一緒につくっていきい!という方、エントリーをお待ちしています。
募集要項
求人名 | 京の奥座敷・かやぶき民家の里の伝統食インタープリター |
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業務内容 |
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雇用形態 | 美山ふるさと株式会社 嘱託社員。正社員登用制度あり。 |
勤務先 | 美山町自然文化村 河鹿荘 京都府南丹市美山町中下向56 |
契約期間 | 契約の日から年度末。継続雇用、正社員(無期)への登用あり。 |
勤務時間 | 7:00~22:00のうちの8時間労働(1ヶ月単位の変形労働制) |
福利厚生 |
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給与 | 基本給150,000円~180,000円(月給制) |
採用人数 | 2名 |
応募条件 |
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応募書類 |
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選考方法 | ステップ1:エントリーフォームよりエントリー ▼ ステップ2:電話にて募集条件等確認後、応募書類送付 ▼ ステップ3:書類審査 ▼ ステップ4:面接審査(面接会場:美山町自然文化村) ▼ ステップ5:採用・契約、勤務開始(試用期間3ヶ月) |
募集期間 |
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