『さぁ のはらへいこう』上映会&相川明子さん講演会
2013/03/27
『じゃあ、愛媛でも上映してみたら?』
と、言われたのがちょうど1年前。
鎌倉にある青空自主保育団体「なかよし会」の活動を、
見学したときの話だ。
活動を見学した後、
「なかよし会」の創設者であり、
現在も専任保育者として活動する“相川明子さん”に、
色々と質問をしていたら、
『なかよし会の映画は見られましたか?
あれを見ればよくわかりますよ?』
と聞かれ、
「まだ愛媛では上映されたことがない」と告げると、
冒頭の言葉を投げかけられた。
それ以来、
いつかは愛媛で…、
いや、この御槇(みまき)で、
自主上映をしたいと思っていた。
それがこの度、
いろいろな偶然が重なったおかげで、
ついに上映出来ることになった。
願っていれば叶うものである。
そんなわけで、
3月17日(日)に、
なかよし会の3年間の活動を追ったドキュメンタリー映画、
『さぁ のはらへいこう』の自主上映会を行った。
しかも映画だけでなく、
相川明子さんの講演もセットという、
これ以上ない形で実現した。
当日、
御槇の上映会場となる築100年の古民家「福田百貨店」には、
定員の30名が訪れ、満員御礼となった。
地元の宇和島市内をはじめ、
西予市や内子町、
県をまたいで西土佐など、
幅広いエリアから人が集まった。
上映会場は福田百貨店の2階大広間を使った。
ずっと空き家になっていた古い建物なので、
「30人も乗って大丈夫なの?」
と、会う人からは口々に言われた。
「それぐらいは大丈夫ですよ。」
と答えたものの、
僕も一抹の不安を抱えながら当日を迎えた。
30人乗ったらミシミシと床がきしみ始めて次第に…
…ということはなくて、ホッとした。
100人乗っても大丈夫かどうかはわからないけど、
50人くらい乗っても大丈夫そうだ。
今後のイベントのための良い実験になった。
ところで、
「なかよし会」もこの映画もご存じないという方は、
予告編をぜひ見て頂きたい。
なかよし会の活動の雰囲気が良く分かり、
これを見ただけでも感じるものがあると思う。
本編を見たくなること間違いなしの、
良く出来た予告編だ。
(でも、もし見たくなっても上映会は終わっちゃったけどね…。)
→『さぁ のはらへいこう』予告編
http://noharaheikou.com/preview.html
上映会に来られた方は、
これから子育てに入る若い世代も多かったが、
現に子育てをしている真っ最中という世代も多かった。
子供連れで映画を観に行くというのは、
至難の業である…というか通常不可能である。
2時間も子供が大人しく座っていることなど、
なかなか考えにくい。
この映画は、
まさに今子育てをしているお父さんお母さんに、
見て欲しい映画だったので、
子連れでの鑑賞も“可”として、
来場者には、
「多少賑やかになっても多めに見てね」
とあらかじめ告知しておいた。
さらに、当日は託児を設けた。
といっても、
ただの託児ではなく、
「みまき自然の学校一日体験」と銘打った、
屋外託児である。
せっかく、
「子どもたちを自然の中で遊ばせる」
という映画を上映するのだから、
子どもたちには、
実際に自然の中で遊んで貰いたかった。
2才~小2までの子どもを預かったのだが、
この日初めて参加するという子が半分くらいおり、
そのうえ、
初めてこういう場で親と離れて遊ぶという2・3才児もいた。
グズッてどうにもならないのではないかという不安が、
預ける親にも、
受け入れるこちら側にもあったが、
思っていたほどグズる子もいなくて、
楽しく遊べたようで良かった。
木登りをする子、
野草を探す子、
シカの角を拾って喜ぶ子、
洞窟を秘密基地にする子、
それぞれ思い思いに遊んでいた。
映画の上映中は、
講師の相川さんが手持ち無沙汰となってしまうので、
1時間ほど山に同行していただき、
活動の様子を見学してもらうことになっていた。
子どもたちが山に入って遊び始めたぐらいに、
ちょこっと寄って、
見学だけするつもりだったのだが、
子どもたちの出発が遅れたため、
山へ歩いて行くのと同じタイミングになり、
結果的に相川さんにも、
引率のお手伝いをしてもらうことになった。
しかも一番泣いてグズッていた子を、
いつの間にやら上機嫌にして遊ばせるという、
相川さんのスゴ技を目の当たりに出来た。
僅かな時間ではあったが、
相川さんの動きや話しかけ方が、
とても参考になった。
「上映会場の雰囲気も見ておきたい」
という相川さんのご要望もあり、
午前中の上映が終わる前に会場に戻った。
午前の上映が終わると、
みまき自然の学校のお母さん達が作る、
「玄米ご飯定食」を希望者に提供した。
・玄米ご飯
・無添加の味噌汁
・大豆の煮豆
・塩麹の浅漬け
・野草のお茶
みまき自然の学校としては、
こういうご飯を子供たちに食べさせてあげて欲しいという、
想いを込めたメニューだ。
しまったことに、
バタバタしていたためその写真を撮り忘れた。
頑張ったお母さん達に怒られてしまいそうだ…(汗)
午後からは相川さんの講演会。
1時間を講演で、
30分を質疑応答にあてた。
映画を見るだけでも十分感じるものがあるのだが、
相川さんの話とセットで聞くと、
これまた充実感がある。
というか、
『さぁ のはらへいこう』という映画を、
1つの“映画”として見るだけであれば構わないが、
実際に「青空自主保育」を行うための、
“参考”や“お手本”として見るのであれば、
相川さんの話とセットの方が良いと感じた。
どうしても映画を見るだけだと、
自分の視点で見てしまう。
自分の理想で思い込んでしまう部分がある。
その点に関して、
相川さんのお話を聞いたり、
直接質問することで、
少なからず自分の考えを修正する部分が、
僕自身あった。
会場からの質問を聞いていると、
「口を出さないといっても、どこまでが大丈夫で、
どこからが危ないと判断して、声を掛けるのか?」
「リュックの中には何を入れておくべきなのか?」
というノウハウ的な質問も多かったが、
それについては、
それなりの答えを提示した上で、
『それは実際にやってみて、
子供をよく観察して考えればわかる。』
という趣旨のことを言われることも多かった。
結局は自分たちでやってみて、
よく観察し、考えて改善していくことが、
一番大事ということだ。
あと、
映画を見ていると、
“現代の一般的”な目線で見れば、
やらせないであろうことや、
危ないと言われることが多々あった。
その点に関して、
ただ口を紡いで見ているだけではなくて、
事前にフィールドや子どもの体調、
子ども一人ひとりの限界点など、
様々な要素を保育者が責任を持って把握したうえで、
見守っているとのこと。
つまり、
「自然の中で遊ぶには危険が隣り合わせで、
危ないことをしているのだから、
怪我をするかしないかは運任せ…。」
ということではないのだ。
目に見えない部分で、
保育者が最低限の安全を確保している。
そのことについて、
相川さんのお話を直接聞けて良かったと思う。
保育者の責任という面においては、
自分自身襟を正す思いだった。
あと相川さんが、
『「青空保育」だけではダメで、
「自主保育」だけでもダメで、
「青空自主保育」であることが大事だ。』
というお話をされた。
“自然の中で子どもを遊ばせる”という、
「青空保育」の部分がどうしてもクローズアップされがちになるが、
肝心なのは、
それを「自主保育」で行うということだと言われていた。
親が交代で当番に入ることで、
お互いの子どもたちのこともわかるし、
子どもたちがどこまでやっても大丈夫か、
ということもわかる。
親がお互いにわかっているからこそ、
子どもたちを見守って自由に遊ばせることが出来る。
という趣旨のことを言われていた。
(実際はもう少し深いことを言われていた。)
昨今は、
自然の中で子どもを遊ばせるという活動が、
ずいぶん盛んになっているが、
なかよし会の特筆すべき点は、
それを自主保育で行ってることなのだ。
だからこそ、
親同士のコミュニケーションも生まれ、
自分たちの目で子どもたちの力強さを知り、
全てを信じて自由に遊ばせることが出来るのだ。
講演が終わったあと、
なかよし会のことを綴った、
『土の匂いの子』という本を、
会場で販売をしたのだが、
20冊用意した本が19冊売れてしまった。
(↑この本は今後も福田百貨店で販売しています↑)
単純には計れないかもしれないけれど、
それだけ参加者の心打つ、
上映会&講演会になったのだろうと思う。
開催して良かったと、
主催者として充実感を感じた。
しかし、
そんな充実感をゆっくり味わう間もなく、
大急ぎで松山まで行かなくてはいけない。
というのも、
2回目の講演会が松山であるからだ。
最初は御槇でのみ上映する予定だったが、
青空自主保育を少しでも愛媛で知ってもらうために、
県庁所在地の松山での上映にも思い切って踏み切った。
そのため、
ちょっと慌ただしいスケジュールとはなったが、
県内で2回の上映と講演を開催することとなった。
相川さんを助手席に載せて、
松山までの2時間半のドライブ。
車内でいろいろと聞きたいことを聞けた。
ガッツリお話が出来るのは、
役得だと実感した。
既にブルーレイディスクは、
御槇での上映が終わってすぐ、
別便で松山に運んであり、
相川さんの移動中に松山では上映が行われた。
松山の会場は、
『Fujiyama cinema café(フジヤマ シネマ カフェ)』という、
地下にある隠れ家的な空間だ。
松山会場は定員を50名にしていたのだが、
思いのほか少なくて17名だった。
当初の予定より人数が少なくなったことで、
急遽“講演会”から“交流会”に切り替えて、
開催することになった。
場所も同じビルの1階にある、
『the blue marble(ブルーマーブル)』というカフェに移し、
大きなテーブルを囲んでの交流会となった。
一方的に話す講演会ではなく、
テーブルを囲んでの交流会となったことで、
参加者一人一人の自己紹介と感想、
そしてもれなく相川さんに質問を投げかけることが出来て、
より密度の濃い話が出来た。
主催者としては人数が少なくて少し残念だったけど、
それなりに濃密な時間となったので、
結果的には良かったかなと思っている。
今回の上映会を通じ、
御槇と松山で多くの方と交流をすることが出来た。
初めて映画の自主上映会を開催してみて、
予想以上に大変だったが、
目に見えない部分の収穫はたくさんあったと思う。
主題のはっきりした映画だけに、
見に来る方々もそれなりに想いを持った方や、
既に何らかの活動をされている方も多かった。
そのような良いご縁が、
今後何かに発展すれば良いなと思う。
初めての自主上映で、
このような素敵な映画を上映することが出来たことは、
とてもありがたかったと思うし、
沢山の方々にご協力を頂き、
とても感謝させて頂くことの多い上映会となった。
みまき自然の学校のHPに、
講演の際の相川さんのお話などを、
もう少し詳しく書いてあるので、
興味のある方は見て頂けたらと思う。
http://mimakimura.net/mimaki_nature_school/report/jyoueihoukoku.html
最後に、
来場者アンケートから一部を抜粋して載せておくので、
これも興味のある方は見て頂けたらと思う。
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「自然の中でたくましく成長していく子供たちの姿に感動した。」
「1才児からでは早いのではと思っていましたが、
1才児は1才児なりの群れが出来ていたので感心した。」
「子供のパワーに圧倒されました。
私でも登れないようなガケをのぼったり…」
「子供ってすごいと思いました。山も登るし、川も下る。
子どもたちだけで解決できることもある。
それを見守る親というのも修行なんだな~と思い、
子供と一緒に成長するのが楽しみになりました。」
「とにかく、すかっとしました。
子どもが子ども時間を過ごすことのできる幸せな時間を感じました。」
「『やりながら修正していく』という言葉に勇気づけられた。」
「子供の世界は子供で作って行けるような環境作りを、
大人が手助けしていかないといけないんだなぁと、勉強になりました。」
「保育園で勤めている私は、時間を気にせず、
のんびり過ごせているのを見て、うらやましく思った。
また、口出し手出しをしていない保育に、自分の保育を反省した。」
「私はよく様々なところに連れて行きますが、
同じ場所、同じ人との中で、育っていくこともあると分かり、
これからの行動も少し考えていこうと思いました。」
「相川さんの方針はとても子供本位の考え方で、
子供の強さや力を引き立たせるものではないかと改めて感じました。」
「大人と子どもの信頼関係が、この活動の基になっていることが分かりました。」
「初めて青空自主保育の存在を知ったのですが、
単に自然と触れ合える機会だけでなく、
共同保育としての仲間づくり(親も子も)や、
母親の時間づくりといった様々な良い面が見られました。」
「子供をいつか授かったら、こんな子育てをしてみたいと思った。」
「ぜひ自分たちのところでも上映会をしたいと思った。」
「子供の3年間の様子で青空自主保育の意味を伝える。
まさにこの映画で親の考えを見直していけると思います。」
「子どもたちは子どもたちのコミュニティがある。
大人が口出ししなくても子どもたちでルールもつくれるし、
助け合うことも思いやることも出来る。
結局私たち大人に出来ることは、見守ることなのかなと思った。」